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小説 本好きゆめの冒険譚 第二十六頁
6月になり、天気も雨が降ったり止んだり…。
「おはよう」皆で朝ごはん。
今日は「中華粥」。
見た目は日本のお粥と、ほぼ同じだけど
口に入れると、サラサラとした食感とごま油の香りが、食欲を刺激する。
トッピングとして、茹でて裂いた鶏肉やパンを揚げたような物?野菜が沢山あって、好きな物を好きなだけ、お粥に混ぜて食べていく…野菜が多いから、お腹がいっぱいになる。
いつもの通学路をいつもの様に、友達と歩く。
いつもと変わらないおしゃべりをしながら、いつもと変わらない時間に学校に着く。
いつもと変わらないクラスメイト、授業…。
私はこんな「何も変わらない」光景が好きだ。
今日は梅雨の時期にしては、カラッとした天気。
窓から入る風が心地よい…。
変わった事と言えば、「その男子」の事が更に好きになっていたと言う事。
前までは何でもなかったのに、今では顔を見れない、たまたま目が合っただけで、心臓が飛び出そう、考えるだけで切なくなる…。
あの子は、私の事をどう思ってるんだろ?嫌われてなきゃいいんだけど…もしかして、私の事を好きだったりしてと考えては顔から火がでそうな位に熱くなる。
前にママに相談したことがある。
ママは「そう。」と、私を抱きしめ笑みを向けるだけで何も言ってくれなかった。
学校の帰り道、友達と別れた私は、ゲリラ豪雨に会ってしまい、急いで大きな木の下で雨宿りをする。
なかなかやまない空を見上げながら、本を持って来るんだったと、やや後悔をしていた。
同じ木に走って来る子がいる。
私と同じかぁ〜、残念だったね。
一緒に雨宿りをしようねと声をかけようとした瞬間、
「「あっ!?」」
その男子だった…。
「よ、よう!」
「・・・・」
・・・・声が出せない。見る事も出来ない。
お願い!雨よ早くやんで!と空に祈るばかり…。
心臓の音で何も聞こえないし、頭までボーッとしてきた。
「お、俺、先に帰るよ!」
「・・・」
その男子は、雨の中を走って行った。
「・・・好きよ」
誰にも聞こえない様な小さな声…。
今の私には、精一杯の大声…。
雨はなかなかやまなかった。