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小説 本好きゆめの冒険譚 第三十五頁
夜…ゆめの部屋。
古びた「御伽噺」の本が、光りだした。
その光は部屋全体を明るく照らし、
やがて、ひとつの発光体となる…。
「よし!上手く行ったわ!」
発光体の正体はゆめであった。
時間を確認してみる…うん、ゼウスさんは本当に時間を止めたみたい。
色々、考えたい事はあるけど…
「今日の所は、もう寝ましょ!」
ベッドに沈むゆめだった…。
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夏も終わり、秋が来て、
「運動会」のシーズンです!
私は「紅組」。
「運動会は好きなんだけど、運動が苦手なのよね…」
ゆめは、元々、身体が弱かった…だから、能力差が出るのだが…
「そうは言っても、頑張らない理由には、ならないしね!」
クラス全員で決めた結果、身体の弱いゆめには、出来るだけ負担の少ないプログラムになり、花形のリレーは、速走自慢が手を上げた…。
大玉転がし…ゆめが参加するプログラム。
「ゆめ、がんばれー!」
「ゆめー!」
「ゆめちゃーん!」
パパとママとおじさんが大声で応援してくれる。
おじさんと言っても、パパの会社の後輩、大学の後輩で、血の繋がりはもちろんないが、私を巡っての事件に付き合ってくれて以来、「おじさん」と、呼んでいる。
パパとおじさんは、2台のビデオカメラを回してる。理由は、どっちかのカメラが壊れても対応可能!と言う理由だった。
スタートのピストルの音が秋空の運動場に響く!
4人でひとつの大玉を押す…
真っ直ぐは良いのだけど、カーブが…曲がれない…
あえなく、コースアウト!進路変更をしながら、コースに戻る…
結果、負けましたけど…。
私は、これ位の運動でも息を切らすので、次のプログラムまでは、休憩の時間…日陰で休む…。
ママが、飲み物を持って来てくれた!
私はゴクゴクと飲み干すと、ありがとうって言った。
次のプログラム、父兄対抗リレー
実はこのプログラムが1番笑える…もとい、1番盛り上がる。日頃走ってないお父さん達は、カーブでもれなくコケる。さらに走ってないお父さん達は、直線でもコケる。その度に観客席から大拍手と歓声が上がる。パパも、もれなくコケました。
次のプログラム、組体操!
と言っても、1番体力の使わない部分を担当する。
次のプログラムはみんな大好き!フォークダンス!
あの子来ないかな〜もうすぐか〜次だー!っていう「あれ」。
いいところギリギリで音楽が終わる。
え"ーって感じの子達が沢山いて面白い…
「あの男子」が、転校してなければ、私もあの集団に入っていたかも知れない…
そう考えると、少しだけさみしくなる。
いよいよ、花形のプログラム!
クラス対抗リレー!
私達は、まだ中学年なので、「男女混合」。
高学年になると、男子のみのリレーは、燃える物があり、応援にも熱が入る。
あれよ、あれよとプログラムも終わり、
閉会式…「紅組の勝利」!
皆で抱き合って、喜びを分かち合う。
皆、砂まみれの汚れた体操着のまま、家路へと着く。もちろん私も体操着のまま家に帰る。
「ゆめ、良かったな!」
「ゆめ、本当にスゴイわ~!」
「ゆめちゃん、ビデオ、バッチシ撮ったからね!」
「今夜、飯、食ってけよ。」
「ありがとうございます!」
「ゆめ、何が食べたい?」
「えっとね〜、ピザとか、唐揚げとか?」
ママが腕まくりして〜、
「よし!今日は、身体に悪い物スペシャルよ!」
意外に、パパとおじさんが、喜んでいた…。
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「何も無い空間。」で…
「私も運動会、行きたぁ〜い!」
ヘーラーが全身を使って駄々をこねている。
「儂らでは、無理じゃろう、こうやって天から見守るだけじゃ………。」
「ウゥ、ヒッグ、ウゥ…何かいい方法考えないと、1番可愛い、ゆめちゃんを至近距離で見れないわ!」
錯乱ぎみのヘーラーが何やら武器を取り出した。
ん?ヘーラーの奴、武器なんぞ持っておったか?
「あ"っ!それ、儂の武器じゃ!?」
槍を振り下ろそうとするヘーラーを必死で止めながら、本気で干渉出来る環境を作ってやらんと、地球もろとも、粉微塵にしかねんな…。と、考えるゼウスさんでした。