失われた記憶を探す闇の魔法使い(The dark wizard searching for lost memories) 第2章 女魔法使い 第16話 シルヴァー・ムーン・シャドウ
第12階層で、助けた冒険者は、Bランク冒険者パーティー「シルヴァー・ムーン・シャドウ」のリーダのユリア・シルヴァーだった。
怪我も治り、食事をさせて、落ち着かせてから、話を聞くことが出来た。
「私達のシルヴァー・ムーン・シャドウは、冒険者ギルドからの依頼で、マップの作成をしていました。この階層に入ってから、トラップの魔法陣によって、パーティーのメンバーは、それぞれ別の階層に転送されてしまいました。今、他のメンバーがどうなっているのか、わかりません」
「シルヴァー・ムーン・シャドウは、何人のパーティーですか?」
ルナが、ユリアに訊いた。早くのこりのメンバーを助ける必要があるからだ。
「私を入れて、6人です」
「そうすると、5人の行方を捜す必要がありますね」
「はい、そうです。お願いできるでしょうか?」
「もちろんです。ねぇ、ラズ、アリアも、行けるね」
「「はい」」
私は、急いで、スキル探索で残りのメンバーを探した。ここより、深い階層の方が危険なので、そちらを重点的に調べることにした。すると、ここより、3階層下の第15階層で、2人の冒険者が魔物の群れに囲まれているのが、分かった。そこより下の階層では、特に、魔物に囲まれているような冒険者は、いなかった。
「ルナ、第15階層に2人いるようよ」
「分かったわ。直ぐに、行きましょう」
「ユリアは、どうする?」
「私も、行きます」
「それなら、アリアと一緒に来てくれる」
「ルナ、私は、ユリアと一緒に後を追いかけます」
「それじゃ、皆、用心して進んでね」
「はい」
私は、ルナより、先に、第15階層に向かうことにした。風魔法で、自分自身を吹き飛ばしながら、先を急いだ。直ぐに、第15階層まで、到達することが出来た。
まず、2人の冒険者を闇魔法のシールドで、覆って防御力を高めておいた。それから、周りを取り囲んでいる魔物を範囲魔法で、狩って行った。
「火壁」
「火壁」
いつの間にか、ルナも、第15階層に到着していた。そして、ルナも、範囲魔法で、魔物の群れを狩り始めた。
私は、残りの魔物をルナに任せて、2人の治療に当たった。
「大丈夫ですか?」
「私は、大丈夫ですが、セシルが大けがを負っています」
地面に倒れている人間が、セシルだろう。腕をもぎ取られている。白魔術師のようだ。杖を持っている。
「まず、これを飲んで!」
私は、アイテムボックスに入っている赤のポーションをセシルの口に注ぎ込んだ。そして、もう一本を取り出し、腕に降りかけた。
「血よ止まれ。治癒魔法
傷よ治れ。治癒魔法」
私は、治癒魔法を掛けた。すると、傷口が塞がり、出血を止めることが出来た。しかし、失った腕を元に戻すことは出来なかった。やはり、私の光魔法は、闇魔法より、弱いようだ。これまで、余り光魔法を使っていなかったためだろう。
「ルナ、急いで来て! セシルの腕を治して!」
魔物を追い払っていたルナが、私達の所に駆け寄って来た。
「傷よ治れ。治癒魔法」
ルナは、すぐさま光魔法で、治療を始めた。ルナが、マナを注ぎ込んでセシルの腕を治そうとしている。まばゆいばかりの光に包まれて、セシルの腕が、元に戻って行った。
「ふぅ、何とか、間に合ったみたいね」
「ルナ、凄い! やはり、光魔法は、ルナには敵わないわ」
私は、心から、ルナの光魔法を称えた。
「ラズなら、直ぐに、私と同じように光魔法を使えるようになるわ」
「うん。僕、頑張る」
ルナが、私の頭をポンポンと軽く叩いた。いつの間にか、本当に、ルナの子供のような扱いに慣れてしまったようだ。全く、違和感を感じなくなっている。私は、ルナに対しては、素直になれるようだ。
「あと、3人だね」
ルナに言われて、私は、再度、スキル探索で、ダンジョン内を調査した。今度は、今いる階層より、浅い階層を調べることにした。すると、第5層から第7層にかけて、1人ずつが倒れているのが分かった。だが、特に魔物に襲われているような状態ではなかった。
「ルナ、第5階層から第7層に1人ずついるよ」
「どんな状態?」
「特に、危険な状態ではないと思う」
「それなら、皆で、揃っていきましょうか」
「はい」
私達は、残りのメンバーを探しに、階層を戻って行った。途中で、アリア達とも合流した。そして、第5回層で、全員が揃った。
「シルヴァー・ムーン・シャドウの全員無事に揃ったわね」
「「はい」」
ユリアは、やっと、安堵したようだ。リーダーとして、皆を守ることが出来なかったことが、負い目になっていたようだ。だが、トラップは、巧妙で、闇魔法が使えない者には、見つけることは、困難だっただろう。
「改めて、紹介します。これが、シルヴァー・ムーン・シャドウのメンバーです」
ユリアが、6人を集めて、紹介した。それに呼応して、ルナが、私達を紹介した。
「私達3人が、ムーンライト・ウィザードです。よろしくね」
それから、それぞれのメンバーの紹介をして一緒に、食事をすることになった。私は、土魔法で、テーブルを出して、アイテムボックスに入っている食事を並べて行った。
「凄い!」
「本当に! ラズは、まだ、小さいのに、どれだけの魔法が使えるの? それに、そのアイテムボックスは、何? 何故、ラズが、そんな高価な物を持っているの?」
ユリアが、びっくりしたように、ラズを見つめていた。シルヴァー・ムーン・シャドウの他のメンバーも、驚いていた。
「あの、すみませんが、ラズを子供扱いしないでね。私達のパーティの1員なんだから」
「あぁ、すみません」
ユリアは、私に向かって、頭を下げた。そして、他のメンバーも、ユリアと同じように、申し訳なさそうに、頭を下げた。
私は、怒り出しそうだったけど、何とか、我慢することが出来た。やはり、ルナは、私の事をよく分かっている。
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