失われた記憶を探す闇の魔法使い(The dark wizard searching for lost memories) 第1章 冒険者ルナ 第7話 指名依頼
ラズも、冒険者として登録出来た。そして、ポーションの納品により、一気に冒険者としての経験値が増えた。
また、ルナも、初級ダンジョンに潜り、魔物を倒すことで、ランクも、レベルも上げることが出来た。すでに、レベルは、50に達した。そして、ついに、私達のパーティーも、Cランクになり、冒険者ギルドの指名依頼を受ける必要が出て来た。
Cランクの冒険者パーティーは、定期的に冒険者ギルドから、依頼されてクエストをこなす必要がある。自分たちに向いた物を選ぶことは出来るが、一定の期間内に1つは、こなさないといけない。
私達も、何か、引き受けないといけなくなったので、ルナに気に入ったものを選んで貰った。戦闘好きなルナは、盗賊団の討伐を選んだ。
「ルナ、本当にそれでいいのか?」
「はい、いいですよ。どうしてですか?」
「ルナのパーティーは、ラズとの2人だけだ。だから、人数的に問題があるように、思える。それに、ラズは、ポーション作りはSクラス並みだけど、戦闘となると訳が違う。心配だ」
「僕も、戦えます!」
私は、ギルド長に、ルナのお荷物でないことを示したかった。
「そんなに、小さな体で、戦えるのか?」
それでも、ギルド長は、不安そうな顔で私達を見つめている。
「それなら、ちょっと、試してみてください」
私は、少しなら、魔法が使える所を見せてもいいと思った。それ以上に、何だか、バカにされているようで、イライラしていた。
「そこまで、言うなら、試してみよう。私に付いてきなさい」
ギルド長は、冒険者ギルドの地下室にある競技場に私を連れて行った。ルナも、心配そうに、私の後を付いてきた。
「さあ、ここだ。いま、特訓中の剣士がいる。Cランクの冒険者だ」
ギルド長は、練習中の剣士に声を掛けた。すると、直ぐにその剣士は、私達の所に遣って来た。
「私は、アリアと言います。よろしく」
「僕は、ラズ」
ギルド長は、アリアに簡単に説明をしたようだ。
「アリア、くれぐれも怪我をさせないでほしい。いいかな」
「はい、ギルド長。よく、分かっています」
私は、アリアの言葉を聞いて、急に、怒りがこみあげて来た。
「準備は、いいかな」
「はい」
「それでは、始め!」
私達は、暫くの間、睨め合いお互いの間隔を維持していた。
「火球」
私は、わざと詠唱して、魔法を放った。それと共に、光魔法で、私自身にシールドを施して、防御力を高めておいた。
アリアは、Cランクの剣士らしく、素早く動き、私の火球を避けた。そして、ダッシュして、私に、剣を打ち込んで来た。私も、避けることは出来たけど、わざと、腕を打ちぬかせた。でも、光魔法のシールドのお陰で、全くダメージは喰らわなかった。それどころか、打ち込んで来たアリアが、跳ね飛ばされてしまった。
「あれ、おかしいな」
アリアは、特別な防具を付けていない私を見て、不思議がっている。私が作っているシールドに気が付いていないようだ。ルナは、気が付いているようだ。ダンジョンに潜った時に、いつも、私が、ルナに対して、行っていることに気が付いていたようだ。それに、ルナは、マナを見る特別な目を持っているから。
「もう一度! ドリャー」
アリアが、再度、打ち込んで来た。私は、その剣を避けずに、打ち込ませた。結果は、先ほど同じだ。私には、何のダメージもない。打ち込んだアリアが吹き飛んだだけだ。
「そこまでだ」
ギルド長の声で、アリアは、動きを止めた。
「ラズは、大したものだな。光魔法で、防御まで、できるのか。それなら、怪我をすることもないな」
「分かって貰えた?」
「あぁ、分かったよ。中級ダンジョンでも、盗賊団の討伐でも、好きに行きなさい」
「ギルド長、ありがとう」
「ただし、他の冒険者の前では、魔法を使わないように。いいか」
「はい」
「それから、アリアも、今日の事は、内緒にしてくれ。いいかな」
「はい、分りました。幼児に手も足も出せなかった、なんて、自分の口からは言いませんよ」
「うー、幼児って言うな!」
「あぁ、ごめん。ラズには、敵わないな」
「そうだ。僕は、強いんだ」
ルナは、私を見て、安心したようだ。あの剣士の剣をまともに受けて、怪我をしないなんて。少し、驚いたいるような顔つきだ。
「それじゃ、ラズ、盗賊団の討伐に行こうか」
「うん。行く」
こうして、私達は、初めてのギルドの指名依頼を引き受けることが出来た。
依頼内容は、森の近くの村が、盗賊団に占拠された。その盗賊団を捕まえることだ。特に、生け捕りにする必要はないようだ。
昼頃には、目的の村の近くに到着した。私は、直ぐに、スキル探索で、村の様子を調べた。
村人は、中央の広場に集められて、一人ずつ、縛られていた。盗賊団は、25人で、強そうな者は、5人ほどで、レベル50にも、満たないようだ。
「ルナ、どうする?」
「直ぐに、責めて行きたいけど、いいかな?」
「いいよ。僕は、土魔法で、できるだけ多くの盗賊を拘束するよ」
私は、こっそりと、光魔法で、ルナをシールドで包み、防御力をアップさせておいた。もちろん、自分自身にもかけておいた。
「土壁」
取り敢えず、手前の盗賊5人を土魔法で、拘束した。ルナは、火魔法で、盗賊を倒して行った。どうやら、かなりのダメージを与えているようだ。
「火壁」
「火壁」
連続で、魔法を繰り出している。私も、負けないように、土魔法で、盗賊を拘束して行った。最後に、5人が残った。少しは、強そうな盗賊だ。おそらく、盗賊団のリーダー達だろう。
「可愛い顔して、ひどいことをするな」
「黙れ。抵抗せずに、降伏しろ」
ルナが、盗賊団のリーダー達に、降伏を促した。しかし、全く、その気配はない。
「やってしまえ!」
5人の中の2人は、黒魔導士の様だ。直ぐに、詠唱を始めた。面倒なので、私は、2人の口を闇魔法のシールドで、塞いだ。これで、声は出せないだろう。無詠唱なら、仕方がないけどね。
「うっ、こ・え・が、…」
残りは、3人だ。ルナの火魔法が、襲いかかった。あっという間に、3人の黒焦げが出来上がった。私は、縛られていた村人たちを解放して、盗賊たちを縄で縛るように、頼んだ。
「村長、後は、任せてもいいかな?」
ルナが、拘束された盗賊団の処分を村長に任せた。
「分かりました。私共が、城の兵士達に引き渡しておきます。そして、冒険者ギルドにも報告しておきます」
「よろしく、お願いいたします」
私達は、難なく、ギルドの指名依頼を達成することが出来た。
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