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失われた記憶を探す闇の魔法使い(The dark wizard searching for lost memories) 第1章 冒険者ルナ 第6話 ラズの冒険者登録

 私達は、初級ダンジョンを出てから冒険者ギルドに向かった。しかし、リリアは、用事があると言って、途中で分れた。

 「ルナ、リリアって、変な感じだったね」

 私は、ルナがどのように感じたのかを知りたくて、声を掛けて様子を窺った。

 「そう? 私は、別に変だとは思わなかったわ」

 「魔力量を偽って、初心者のふりをしていたよ」

 「ラズ、それをリリアに言ったの?」

 「言わないよ」

 「そう。それならいいわ。ラズも、魔力量を誤魔化しているでしょ」

 「そうだよ」

 「絶対に、知られないようにしなさいよ」

 「うん。分かっているよ」

 ルナは、急に、私の心配をし始めた。暫くすると、冒険者ギルドが見えて来た。

 私達は、冒険者ギルドに入って、初級ダンジョンで得られた戦果を買い取って貰った。

 「ねえ、ルナ。今日は、皆、落ち着いているね」

 昨日は、慌ただしかった冒険者ギルドの中が、すっかり、落ち着いていた。

 「そうねぇ。ラズの言う通り、今日は、皆、落ち着いているわね」

 そういうと、ルナは、受付に向かった。

 「ねえ、ローズ、ダンジョンの異変は、どうなったの?」

 「それが、不思議な事に、中級ダンジョンや上級ダンジョンの異変は、解消されたの」

 「冒険者ギルドで、何か、対策をしたの?」

 「いいえ、何もしてないのよ。それなのに、今日、調査に向かった冒険者パーティーによると、異変は、解消されているって、言うのよ」

 「そんなことって、あるの?」

 「ダンジョンの異変自体、私がこのギルドで働き始めてから、初めてのことよ。だから、それが、勝手になくなるなんて、本当にびっくり」

 「もう、中級ダンジョンに潜っても大丈夫だということ?」

 「それは、だめよ。もう暫くは、様子を見ることになったから」

 「残念。できれば、中級ダンジョンにも挑戦したかったのに」

 「そんなに、慌てて、どうしたの?」

 「強い魔物を倒してみたいの。私が、どれほど、強くなったかを確かめたいの」

 「ルナは、まだ、Fクラスの冒険者なのよ。それに、相棒のラズは、まだ、冒険者登録も出来ない年齢よ」

 「分かっているわ。でも、ラズは、私の足を引っ張ることはないのよ。ああ見えて結構強いのよ」

 「でも、まだ、5才じゃない?」

 「冒険者ギルドの登録は、年齢の制限はなかったはずよ」

 「そうよ。ギルドに登録できることを証明した者ならいいわよ。ラズは、何ができるの?」

 「分からない」

 「そう。それなら、諦めてね」

 ルナは、下を向いた。そして、寂しそうに、私の所に戻って来た。

 「ねえ、ラズ。ラズも、冒険者ギルドに登録したいでしょ」

 「うん。したいよ」

 「それなら、何が、出来るのか。私に教えてくれる?」

 私は、何を見せたらいいのか、迷ってしまった。ここで、ルナも放つことが出来ないような魔法を見せるわけにいかない。まして、闇魔法を大勢の前で放つことは危険だ。

 「あっ、そうだ。ポーションを創れるよ」

 「本当。いつの間に覚えたの?」

 「ルナが、沢山ポーションを作っているのを見て、覚えたよ。多分、作れるよ」

 ルナは、手持ちの袋から、薬草を取り出して、私に渡した。

 「これで、作ってみて!」

 「はい」

 私は、ポーションを入れる瓶を土魔法で、まず、作り上げた。それから、受け取った薬草を使ってポーションを作って、瓶の中に入れた。

 「ルナ、できたよ」

 私の作業を見ていたルナは、びっくりしてしまった。まさか、土魔法で、瓶まで、作るとは、思ってもいなかった。土魔法に加えて、光魔法も使える。複数魔法が扱えるのだ。それに、魔力量は、計り知れない。
 
 でも、ルナは、成り行きに任せることにしたようだ。私が作ったポーションを持って、冒険者ギルドの受付のローズに見せに行った。

 「ローズ、今、ラズが作ったポーションよ。これで、いい?」

 「ちょっと、待ってね。確認するから」

 ローズは、受付の奥へ行って、道具を持って来た。ポーションが、買い取れるほどの品質かどうかを調べるつもりだ。

 「お待たせ。この道具は知っているわね。もし、ランプが点灯しなかったら、諦めてね」

 「はい、分りました」

 ルナも、神妙な顔で、ローズの操作を見入っていた。

 ローズは、受け取ったポーションをトレーの中に入れて、鑑定をした。鑑定と言っても、トレーに置くだけで、自動的に鑑定が行われる。

 トレーについているランプが点灯するか、どうか、だけだ。

 暫くして、ランプが点灯した。5個あるランプが、順番について、ついには、5個すべてが点灯した。

 「まあ、本当に、これをラズが作ったの?」

 5個のランプが点灯するということは、最上級のポーションだということだ。

 「本当よ。本当に、ラズが一人で作ったのよ」

 「ちょっと、待って居てね」

 ローズは、トレーごと持って、奥に消えて行った。

 暫くして、ローズが、戻って来た。そして、私に、囁いた。

 「ルナ。ラズと一緒に私と一緒に来てくれる」

 「はい」

 私は、ルナの手招きに応じて、ローズとルナと共に、受付の奥にあるギルド長の部屋に入って行った。

 私とルナは、ギルド長の迎えのソファに座らせられた。

 「申し訳ないが、このような事は、俄かには、信じがたい。本当に、幼児のようなラズが一人で作ったのか?」

 「はい。そうです」

 ルナが、答えた。ギルド長は、私を睨みつけた。でも、私は、ちっとも、怖くなかった。威圧感がなかったからだ。

 「もう一度、作ることはできるか?」

 「薬草があれば、大丈夫だよ」

 私が、ギルド長に答えた。それを聞いて、ルナが、薬草をまた、私に渡した。

 私は、仕方がないので、もう一度、先ほどと同じように、瓶を創り、ポーションを作って、瓶を満たした。

 「ローズ、調べてくれ」

 「分かりました」

 ローズは、ギルド長に言われたように、また、トレーにポーションで、満たされた瓶を入れた。やはり、先ほどと同じだ。5個のランプが全て点灯した。

 「分かった。ルナ、ラズ、このことは、誰に言わないでくれ。ここだけの秘密にしてくれ」

 「分かりました」

 ルナが、直ぐに返事をした。

 「うん。分かったわ」

 私も、了承した。

 「この品質のポーションを定期的に納入してくれないか?」

 「いいよ。いくついるの?」

 「週あたりに20本欲しい。できるか?」

 「問題ないよ。100本でも、余裕だよ」

 「本当か? それなら、100本、お願いする」

 「でも、僕は、まだ、冒険者登録していないよ。だから、納品できないよ」

 「大丈夫だ。特別に、私が、登録する」

 ギルド長は、直ぐに、私を冒険者登録した。初めての登録なので、Fクラスだ。 

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