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キリの異世界探検( Kiri's Otherworldly Exploration)第1章 貴族編 7.ミユの治療院

 塩の配布で、ミユは、感謝されたが、実際には、キリの作った工場で、自動的に塩は作られている。ミユ自身は、何もしていないと思い始めた。

 「塩を配るだけなら、私でなくても出来るわ。私にしか出来ない事を何かしたい」

 「ミユ、それなら、治療院を作ってみたらどうかしら?」

 「怪我人や病人を治療するってこと?」

 「そうだよ。ミユは、白魔導士だろ。治癒は得意じゃないか」

 「そうだわ。キリの言う通りね。治療院は、私にピッタリよ」

 私は、ミユの為に、治療院の建物を土魔法で創り、助手をローザに探して貰った。そして、城との行き来が簡単に出来る様に、転移用の魔法陣を作っておいた。

 暫くして、ローザが助手を2人雇って、送ってくれた。執事のヒースが、ミユに紹介した。

 「ミユ様、助手の2人です。治療院に寝泊まりします」

 「よろしくね」

 「「はい」」

 ミユは、早速、治療院で、治療を始めることにした。農民は、小さな怪我をよくする。それを無料で、治療してくれると聞いて、初日から、多くに人が集まって来た。

 「ミユ様、魔物に襲われて、怪我をしました」

 「怪我は、足だけですか?」

 「はい。そうです」

 ミユは、足の怪我を見ながら、治癒魔法を掛けた。

 「傷よ治れ。治癒魔法ヒール

 「おぉ、痛みが亡くなりました。ミユ様、ありがとうございました」

 「次の患者を呼んでください」

 「はい」

 ミユは、要領よく、患者を診て行った。簡単な傷の場合には、助手が赤のポーションを掛けて、治すこともあった。

 治療院の運営も軌道に乗って来たので、遠方から来るのを避けるために、少し離れた所に治療院の別院をキリに作って貰った。ミユは、それらを行き来しながら、治療を続けて行った。

 新たに治療院の別院を作るたびにローザに助手を送って貰った。助手の給料は、キリ商店から支払われた。助手まで、ボランティアという訳にはいかないからだ。

 「ミユ、頑張っているね」

 「皆に喜ばれて、私も嬉しいわ」

 「でも、無理はしないでね。既に、治療院の別院も、5カ所になっているよ。大丈夫?」

 「簡単な治療は、助手が行ってくれているわ。だから、無理をしていないわ」

 「そうか。それなら、いいけど、大きな怪我も治せるような助手も必要じゃないか?」

 「そうね。光魔法が使える白魔法師がいればいいけど。滅多にいないでしょ」

 「そうだね。でも、簡単な光魔法を使うだけなら、神具をつくることが出来るよ。それを複数、怪我の状態に応じて使うっていうのは、どうかな?」

 「そんな事ができるの。凄いわ」

 「それじゃ、ミユが、どんな神具が必要か、私に教えてくれる?」

 「いいわ」

 私は、ミユの指示に従って、10個の神具を作った。それを各治療院に置いておくために、5セット作っておいた。

 「さあ、これを使ってみてね。何か、要望があれば、改良していくよ」

 「キリ、ありがとう。大好き」

 ミユが、私に抱き付いてきた。私は、ミユの頭を撫でて、あげた。ミユに喜ばれて、私も嬉しい。

 それから、ミユが治療院の別院に直ぐに行けるように、転移の魔法陣をそれぞれの場所に描いておいた。これによって、本館の治療院から、簡単に神具を使って移動することができる。助手だけでは治療が無理な場合に、ミユ自身が移動して、治療に当たれるという訳だ。

 それから、各治療院の別院での作業状況が分かるように、監視用の魔法陣を描いておいた。これによって、別院での助手の作業状況をいつでも、見ることができる。

 「ミユ、転移用の魔法陣と監視用の魔法陣を描いておいたから、使ってみてね」

 「キリ、ありがとう。早速使わせて貰います」

 「もし、追加の機能が必要なら、言ってね。神具の機能追加も含めて、遠慮しないでね」

 「はい」

 暫くの間は、順調に治療院での活動が行われていたのだが、ある日、神殿から、使いがやって来て、神殿の傘下に 入るように言われた。

 「私は、自分のやりたいように治療を続けて行きます」

 ミユは、やって来た神殿の使いに思っていることを言い放った。これに腹を立てた神殿が、ミユの治療院に難癖をつけて来た。無料で、治療を行うことで、神殿の収入の妨げになっていると、国王に訴えたのだ。

 私は、神殿に多額の付け届けを行い、ミユの活動を見逃すように交渉をした。その甲斐があって、神殿は、今後も、寄付をするなら、見逃そうと言ってきた。

 私としても、神殿は、嫌いだけど、今、神殿と正面切って敵対するのも、良いことではないので、暫くの間は、我慢して、神殿側の言いなりになることにした。でも、ミユは、嫌がるだろうから、このことは、黙っておくことにした。

 「ねえ、キリ、神殿から、何か言ってこなかった?」

 「何も、言ってこないよ」

 「おかしいなぁ」

 「まあ、いいじゃない。大した影響がないと思って、放っておいてくれるのでは?」

 「それなら、いいけど。キリ、何かあったら、直ぐに言ってね」

 「わかった」

 暫くは、知らない振りをしないといけない。ミユにばれる前に、本当の事を言うつもりだけどね。

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