錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第29章 魔王復活 2902.イミテーションの効果
これまでの戦いから、魔王軍も学習し、分断されないように戦っていた。特に、一番弱い第4の四天王を他の魔人が援護しながら戦っているようだ。
私は、テラjrの戦いを見ながら、第4の四天王やその他の魔人の様子を窺った。
第4の四天王は、海蛇属で、巨大な海蛇の姿をした悪魔だった。その形状から水魔法に特化していることは容易に判断できた。
次に、四天王以外に2人の魔人についてだが、一人は、巨人族で大きな巨体で、怪力の持ち主のようだ。絶えず、近くにある岩を投げつけている。また、地震も起こすことができるようだ。おそらく、土魔法に特化しているのだろう。
そして、最後の魔人は、大きな蝙蝠のような羽を持っていた。そして、何やら怪しげな光を放ち、敵の攻撃をかわしていた。
私達のグループは、テラjrのグループの支援をするために、巨人族の魔人を引き離すことにした。
私は、ラーンスとハプーンに手伝ってもらい、巨人族の魔人とテラjrのグループの間に大きな障壁を作ることにした。
まずは、ハプーンに巨人族の注意を引いて、少し離れた所に誘導して貰うことにした。
「ハプーン、あの巨人族の魔人の注意を引いて貰えるかな」
「いいよ」
ハプーンは、返事を終えるや否や巨人族の魔人に攻撃を仕掛けた。そして、直ぐに撤退し、追いかけてくるように誘導していた。
私は、ラーンスの背に乗って、巨人族の背に高い壁を土魔法で、作って行った。暫くすると、巨人族の魔人は、他の魔物や魔人から離れて、ハプーンと1対1で対戦する状態になった。
ある程度、離れたことを確認して、私は、巨人族の魔人を土魔法で造ったドームの中に閉じ込めた。
「よし、巨人族の魔人を隔離できた」
私が、思い通りに巨人族の魔人を誘導できたと思った直後に、大きな地震が起こり、折角作ったドームは、粉々に崩れ去った。
「しまった。失敗か」
土魔法で造ったドームは、巨人族の魔人が放つ地震に耐えることができない。
私は、ラーンスの背に乗ったまま、巨人族の魔人に声を掛けた。
「おい、私はムーンという。お前を倒して、魔王の完全復活を阻止してやる」
「ほぉー、元気だけはいいようだな」
「お前の名前は、何だ?」
「まあ、教えてやろう。私は、ガープという。魔王の左腕だ。そして、直ぐに魔王様を完全復活する者だ」
「ガーブ、それは、無理だな。お前は、ここで、私に倒されるから」
「ほう、お前のような小さな者が、どのようにして、私を倒せるのだ」
私は、闇魔法のバリアで、ガーブを拘束した。
「どうだ。動けないだろう」
「何を、こんなもの」
ガーブは、私のバリアを引き千切ろうと、必死に力を込めているようだ。しかし、直ぐには、引きちぎれないで、もがくだけに終わっている。私は、アイテムボックスから、聖剣擬きを取り出し、魔力を込めて行った。
すると、聖剣擬きは、青い光を放ち始めた。そして、その光は、聖剣擬きの表面を覆い、いつの間にか青色の聖剣擬きになった。
私は、聖剣擬きで、ガーブの右腕を切り取った。普通の剣であれば、切られた所から直ぐに新たな腕が映えてくるのだが、暫くしても、何の変化もない。切られた所は、回復していない。
「ウォー、これは、何だ! どうしたことだ」
私は、次にもう一つの腕も、聖剣擬きで、切り取った。
「ウォー、止めてくれ!」
ガーブは、唸り声をあげて、藻掻く始めた。何とか、元に戻そうとするガーブだが、それは叶わないようだ。
「どうした。ガーブ、私は、お前を殺せるぞ! 消滅させることが出来る」
「どうして、そんな力を持っているのだ。お前は、勇者か?」
「いや、違う。でも、お前を殺せる」
「そんなはずはない。我々魔人は、勇者以外には、殺されはしない。消滅せずに復活出来るはずだ」
「ほう、そうかな。それなら、やってみるか」
「何を言う。止めろ。消滅したらどうするのだ」
「私に、何の関係があるのだ。お前が消滅しても、何の問題もない」
「待ってくれ。取引をしよう。お前は、何が望みだ。それを叶えてやろう」
「私の望みは、お前を殺すことだ。どうする? どうする?」
「私を見逃してくれたなら、お前に、情報をやろう。残りの魔人の事を知りたくはないか?」
私は、少し考えた。このガーブという魔人は、怪力と地震を操るが、いつでも倒せそうだ。それなら、ここで、取引するのも、悪くはない。
「よし、分かった。取引しよう。お前を見逃す代わりに、他の魔人の事を教えろ。そして、二度とここへは現れるな」
私は、ガーブから、色々な情報を得た。当然、魔人のことも、魔王のことも、そして、魔火山の事も、聞かせて貰った。これらは、思っていた以上に有益な情報だった。
魔王の最後の四天王は、ディアブス・セルぺスマリヌスと言い、別名「海蛇の悪魔」と呼ばれている。そして、思っていたようなに水魔法に特化している。更に、海を自由に操れるという。
そして、魔王の右腕は、闇魔法に特化しており、光魔法が弱点だという。しかし、本当の名前は知らないらしい。
魔王は、現在更に下の階層に居て、魔力不足から動くことが出来ないでいるらしい。魔火山が噴火しないとだめらしい。
そして、魔火山は、この階層に繋がっており、もう少しで、噴火するという。かなりの量の魔力が注ぎ込まれたらしい。
私は、得られた情報を思念伝達でテラjrに連絡した。そして、聖剣擬きでも、聖剣のような効果があることを教えた。