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第Ⅰ部 キリ誕生編 第3章 魔王軍誕生編 3.ラストボス? との戦い
今の私達は、レベル70のAランクの冒険者だ。特級ダンジョンの最下層近くにいる魔物は、レベル80とこれまで戦ってきた魔物とは比べられないほど、強い。
今のままでは、この魔物を倒すことは困難だ。ワーキャットは、非常に素早いが、レベルは50に満たない。パープルは、特別で、私達と狩りをしていたお陰で、レベル60に達している。
しかも、ダンジョンの中では、魔物はすぐに回復する。豊富なマナがダンジョンの中にあるからだ。
だから、ダンジョンの中の魔物は、ポーションを被りながら戦っているようなものだ。これでは、勝ち目がない。
「キリ姉、このままでは、最下層の一つ上にいる魔物は倒せないよ」
「まだまだ、私達のレベルでは難しいね」
「パープル達も50人近くになっているけど、レベルが低すぎるわ。どうする?」
「魔物の弱点を探す? でも、弱点が見つかっても、それだけで倒せるとは思わないわ」
「そうだね。今回ばかりは、パープルでも、横をすり抜けるなんてことは難しいね」
「何か、いい方法はないかな?」
「あっ、そうだ。キリ、マナを吸収するものって、作ってなかった?」
「あるよ。闇魔法で作ったバリアがマナを吸収するよ」
「それって、どれだけのマナを吸収できるの? 一つのダンジョンの中のマナをすべて吸収できる?」
「キリ姉、それは無理。どんだけのマナがあると思っているの?ダンジョンだよ」
「そうか、無理か」
「ちょっと、今のバリアではだめだよ。マナを吸収できる容量について、効率が悪いの。研究はしていくけどね。すぐには無理ね。それに、ダンジョンは洞窟のようだけど、外界からマナが流れ込んでいるよ。だから、ダンジョンの中だけの問題じゃないよ」
「えっ、今なんて言った?」
「今のバリアでは、無理だって」
「キリ、そうじゃなくて、最後に言ったことよ」
「ダンジョンの中だけの問題じゃないよ、って」
「もう、外界からマナが流れ込んでいる、って言ったよね」
「はい、言いました。それが?」
「もし、外界からダンジョンの中にマナが流れ込まなかったら、どうなる?」
「多分、魔物によってマナが消費されていくので、ダンジョンの中のマナは減っていくと思うよ」
「そうよね。外界と遮断されると、ダンジョンの中のマナは、減るよね」
「キリ姉、それがどうしたの?」
「そうすると、中の魔物は弱っていくということね」
「そうだね。で?」
「キリは、マナを反射させることもできたよね」
「そうか! ダンジョンを結界で囲んでしまうわけね。光魔法で結界をつくれば、外界からのマナを遮断できるということね」
「そうよ。キリ、できる?」
「できないことはないけど、100階層もあるダンジョンだから、かなり時間が掛かるわよ」
「そんなに、いらないわよ。精々、5階層もあれば、十分よ」
「それなら、大丈夫よ」
私は、キリ姉に言われたように、上級ダンジョンの最下層から、5階層を結界で包んだ。
「キリ姉、できたよ」
「よしよし。それじゃ、残りの階層の魔物を狩りつくすよ」
「パープル、手伝ってくれる」
「ハイ、ナカマニモ タノムヨ」
「ありがとう」
私達3人とパーティの仲間のワーキャット達で、一気にダンジョン内の魔物を狩りつくした。
「ダンジョンの中のマナはどう? キリ、調べてね」
「だいぶ薄くなっているよ。ダンジョンの中じゃないみたい」
「よしよし、残った5階層のマナを吸収してくれる」
「はい、わかった」
私は、先ほど作った結界に接続するように、新たな結界を作った。これは、闇魔法で作った結界だ。闇魔法で作った結界は、マナを吸収する。そして、それをマナのバッテリーとして働く、マナッテリーに繋いだ。このマナッテリーは、アイテムボックスの中に多量に用意している。
パープルに、マナッテリーの管理を頼んで、私とキリ姉は、結界の中に入っていった。
「取り敢えず、ラストボスのようなレベル80の魔物以外を狩るわよ」
「はい。いつでもいいです」
「行くよ!」
私は、魔物を範囲攻撃で狩っていった。キリ姉は、範囲攻撃で狩れなかった魔物を火柱で狩っていった。
倒された魔物のマナは、どんどんとマナッテリーに蓄えられていく。
ついに、ラストボス擬きだけになった。マナの流れを確認すると、魔物の周りのマナも希薄になっていた。
「いよいよ、レッド・ドラゴンだけになったね」
「炎息に注意してね。キリ、喉の所にある逆鱗が見える?」
「はい。見えます」
「あの鱗の下が、急所よ。何とかして、あそこに剣を突き刺してね」
「はい、頑張ります」
私達は、レッド・ドラゴンの炎息と尻尾の攻撃を避けながら、逆鱗への攻撃を窺っていた。
キリ姉は、氷柱で、レッド・ドラゴンの足を狙って、動きを止めている。
レッド・ドラゴンは炎息を出す前に一瞬だけ、大きく口を開けて、溜めを作っている。その時が狙い目だ。
「キリ、今よ」
キリ姉の声と同時に、私は風魔法で、自分自身を飛ばし、剣に水魔法で氷の強化を施して、レッド・ドラゴンの逆鱗に剣を突き立てた。しかし、鱗は固く、剣先が少し食い込んだだけで、ダメージを与える事すらできなかった。
「だめ、硬いよ」
私達は、一気に倒すことを諦めて、少しずつ、体力を削ることにした。
まず、土魔法で、レッド・ドラゴンの足元に大きな穴を掘った。次に、その穴を氷水で満たした。
レッド・ドラゴンは、腰の辺りまで氷水に浸かった。キリ姉は、氷柱でレッド・ドラゴンの翼を切り裂いていく。パープルは、レッド・ドラゴンの注意を引くために、目に攻撃を加えている。
少しずつレッド・ドラゴンの動きが鈍くなってきた。
「もう少しよ。頑張って!」
「はい、キリ姉」
「パープルも、頑張ってね」
パープルは、尻尾を振って、私に合図を送っている。まだまだ、元気そうだ。
レッド・ドラゴンの炎息を放つ間隔が大きくなってきた。私は、氷水を完全凍らせた。続いて、風魔法で、自分自身を加速させて、水魔法で強化した剣を前にして、レッド・ドラゴンの逆鱗に向かって飛び込んだ。
先ほどは、高い所に向かって飛んでいったのだが、今回は、少し上向き程度で剣を突き立てることが出来た。そして、今回は、剣が逆鱗に触れると同時に土魔法で作った岩石を剣の柄頭(ポンメル)にぶち当てた。
剣先が鱗に少し突き刺さった。更に、岩石を剣の柄頭(ポンメル)にぶち当てる。何度も、繰り返した。レッド・ドラゴンの動きが鈍く、炎息も打てないようだ。
更に、岩石をぶち当てた。「パキーン」という金属音と共に、ついに、逆鱗を割り、急所に剣を突き刺すことが出来た。レッド・ドラゴンは、大きな呻き声とともに息絶えた。
私は、魔石を拾った。大きな魔石だった。キリ姉は、王級のアイテムボックスにレッド・ドラゴンを入れていた。
パープルが、私に抱き付いてきたので、頭をナデナデしてあげた。
暫くして、マナの流れを確認した。マナはダンジョンの中とは思えないほど希薄になっており、また、安定していた。
「さあ、ダンジョンコアを採りに行くよ。キリ、準備はいい?」
「はい、いつでも」「ハイ、イツデモ」
パープルが、私の真似をしている。
特級ダンジョンでもあり、最初に現れた人工的なダンジョンのダンジョンコアなので、何か特別な仕掛けでもあるのかと思っていた。しかし、予想に反して、これまでのダンジョンコアと何ら変わりはなかった。
魔法陣の働きを止めて、結界の中にダンジョンコアを放り込んで、私達は、避難所の工場に戻った。
私は、まず、ダンジョンコアに刻印されていた魔法陣の複製を作り、それを机の上に置いた。
魔法陣だけで、ダンジョンコアがないので、何も心配いらない。つまり、魔法陣を元に戻しても動作しないということだ。
合計14個の魔法陣の複製が机の上に並んだ。どれも違いがなかった。全く同じものだった。
「キリ姉、調べたけど、すべて同じものだったよ」
「そうか。では、動作環境の違いだったのかもね。上級と特級の違いは」
「動作する時の魔力量の違いだと思う。それに、この魔法陣陣自体が特殊なの」
「詳しく、教えて」
「これまでの魔法陣は単純な物だったけど、これはかなり複雑なの」
「どういうこと?」
「平板な魔法陣では使える魔法も、単純な物の組み合わせしか、表現できない。それで、私はマナクロを作って、複雑な作業をさせることが出来たの」
「でも、これは、複数の魔法陣を繋ぎ合わせているの」
「そんな、魔法陣って、図書館でも見たことないよ」
「そうなの。今までに見たことがない魔法陣になっているの」
「そんなものを誰が作ったというの?」
「分からないわ、キリ姉。でも、ダンジョンコアは、誰が持っていたか、予想できるわ」
「そうだね。あれだけの数のダンジョンコアだから、ザーセン王国の神殿だと思う」
「キリ姉、私もそう思う。でも、あそこの神官達では、このような魔法陣を作ることは出来ないと思うの」
「ウーン、そうも思うけど。ザーセン王国の神官でなければ、神具というべきダンジョンコアを使えないとも思うし。分からないわ」
「神具で作ったとしたら? 作れるのでは?」
「そうね。あの国の神官達が天才的な人達とは考えにくいね。これまでの行動からすると。でも、神具なら使えるね」
「よく分からない魔法陣なのに使おうと思かな? それも、よく分からない」
「ここで、推測しても時間の無駄ね」
「そうだね。情報が少な過ぎるね。もっと、集めないと、ね」
今後の事は、もっと、情報を集めてから考えることにして、新たなダンジョンが生まれてくる前の状態に戻すことが先決だ。
新規にできた上級ダンジョンも各王国の兵士や冒険者ギルドによって、制圧されつつある。後は、時間の問題のようだ。すでに、上級ダンジョンから溢れ出てくる魔物はいなくなったようだ。
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