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第Ⅱ部 勇者パーティ編 第9章 魔大陸侵攻編 4.魔人タウ、再び

 今回は、忘れないように、Theta シータ島への転移用の魔法陣を見ておくことにした。

 「キリ姉、先に、Theta シータ島へ転移するための魔法陣を見ておきたいの。いいかな?」

 「もちろんよ。見てきていいよ」

 私は、パープルとミユを連れて、もう一つの魔法陣の前にやって来た。遺跡には、2つの魔法陣が描かれていた。前回は、すぐに、ダンジョンに向かったので、見ることが出来なかったが、今回は、しっかりと、見ることが出来た。そして、以前のように、意味が分からないって、言うことはなかった。しっかりと、その内容を理解することが出来た。

 また、タウ島への転移魔法陣との違いを確認することが出来た。もう少し、別の魔法陣を確認すれば、汎用型の転移魔法陣を作成できそうだ。

 「キリ姉、終わったよ。それじゃ、ダンジョンに潜ろうか?」

 「それじゃ、行くわよ」

 「「はい」」

 私達は、ダンジョンに潜っていった。ダンジョンの中に充満している魔力は以前とは、けた違いの量だが、魔物の種類やレベルに変化はなかった。

 私達は、ミユの強化魔法を掛けて貰ってから、一気に、進むことにした。

 「ミユ、強化をお願いね」

 「はい、
 スキル魔力耐性向上、
 スキル物理攻撃向上、
 スキル魔法攻撃向上、
 スキル攻撃速度向上」

 ミユに全員が強化魔法を掛けて貰った。

 「キリ、念のため、ダンジョンの中を調べて見て」

 「はい、スキル探索」

  私は、スキル探索で、ダンジョンの内部を調べて。すると、ダンジョンは以前と変わっておらず、魔人タウは、50階層の最下層にいる。そして、その他の魔物も、同様だった。

 「キリ姉、前と同じよ。最下層の第50階層に魔人タウがいるわ。それと、ガーゴイルやスケルトンの軍団やレッド・ドラゴンもいるわ」

 「わかったわ。キリ、ありがとう」

 「前回と同じでもいいけど、こちらの体力は残しておきたいね」

 ハルトが、意見を言った。キリ姉も賛成の様だ。

 「それじゃ、隠密魔法で、最下層まで、隠れて行く?」

 「「賛成」」

 「それじゃ、キリ、お願いね」

 私は、全員に隠密魔法を掛けて、姿を消した。

 「私と、ミユは、パープルの背中に乗って、先に、最下層に行くね」

 「わかったわ。ハルトと私は、少し遅れるけど、後を追いかけるね」

 「それじゃ、また、後で」

 私は、パープルの背に乗って、ミユと共に、一気に、最下層に到達した。

 「さあ、どうしようかなぁ」

 「まずは、最下層の調査ね」

 私は、スキル探索で、最下層を重点的に調査した。あの変な機械は、修理されて、治っているようだ。そして、魔人タウは、階層の中央に陣取っていた。周りには、魔物は、いないようだ。

 次に、私は、スキル鑑定で、魔人タウを調べて見た。すると、レベルは、変化がなかったが、魔力量は、以前の10倍になっていた。従った、魔法の威力も、10倍になったと考えていいようだ。

 「すごい魔力量よ。多分、あの機械も強くなっているわね」

 「弱点が雷ということに変わりはないと思うわ」

 「そうね。でも、魔人タウに魔法を防御されそうだわ」

 「あの機械の鎖を防げれば、ハルトが倒せると思うわ」

 「そうか、あの回転を止めればいいんだね。ミユ、やってみるね」

 私達は、ハルトとキリ姉が来るまで、待機することにした。私は、その間に、ハルトの支援方法を考えていた。

 「お待たせ」

 キリ姉がやっと、到着した。私は、調べたことを伝えた。

 「そうか、魔力が10倍になっているのか。少し、厄介だね」

 「まずは、あの機械を止めない?」

 「いいわよ。どうするの? 何か、考えたの。キリ」

 「土魔法で、あの機械の回転を止めるつもりよ。そこをハルトに攻撃してもらうわ」

 「あの魔人タウは、どうするの?」

 「ミユの光魔法とキリ姉の火魔法で、注意を機械から逸らして貰える?」

 「いいわよ」

 「それじゃ、行くよ」

 私は、皆の隠密魔法を解除した。これで、皆は、魔人タウに認識されることとなった。

 キリ姉が、魔人タウに声を掛けた。

 「久しぶりね。元気になったのかしら?」

 「魔火山が噴火したからな。もう、ベストの状態になったよ。今まで、待ってくれて、ありがとう」

 「それじゃ、始めましょうか? 私達は、パーティーで、戦うけど、いいわね」

 「もちろんだ。それでこそ、私も、本気で戦える」

 「それで、殺してもいいのかなぁ?」

 「それは、覚悟の上だ。どんな結果になっても、後悔はない」

 「わかったわ。それじゃ、始めましょうか」
 
 私達は、キリ姉の声に合わせて、配置に着いた。ハルトが先頭で、まず、あの変な機械を相手にする。それから、ミユとキリ姉で、魔人タウの注意を引きつける。私は、全体の様子を見ながら、攻撃をすることにした。

 「ハルト、頑張ってね」

 キリ姉の声と共に、ハルトが、円柱形の機械に攻撃を仕掛けた。私は、鎖の部分が、うまく回転しないように、円柱形の機械の傍に、土魔法で、柱を何本も作っていった。それにより、回転が阻害されている。

 ハルトは、勢いが弱まった鎖を大斧で、叩き落した。これで、円柱形の機械の攻撃は、無くなったと思ったが、また、新たな鎖が鉄球付きで、飛び出してきた。あの鎖は、1本ではなかった。

 やはり、円柱形の機械本体を攻撃して、破壊しないとだめなようだ。

 ミユとキリ姉の二人も、魔人タウの注意をハルトから、逸らしていたが、そろそろ限界にようだ。私は、魔人タウの攻撃を弱らせるために、闇魔法で、結界を作り、魔人タウの身体を覆った。

 「おぉ、闇魔法を使うのか。これは、予想外だった。だが、闇魔法は、私も、得意だよ」

 魔人タウは、私の結界を直ぐに無効にした。やはり、闇魔法では、魔人の方が、一枚上手のようだ。

 私達は、長期戦になっていくのを覚悟することになった。

 魔人タウとの戦いは、もう一度、最初から、仕切り直しになってしまった。

 「キリ、先にハルトと、その機械を破壊してくれる」

 「はい、わかった」

 私は、円柱形の機械の周りを闇魔法で結界を作り、魔人タウの影響を遮断した。それから、雷を連続で落とすことにした。

 「雷柱サンダー・ポール
 雷柱サンダー・ポール
 雷柱サンダー・ポール

 やはり、雷が弱点の様だ。円柱形の機械の動きが鈍くなってきた。

 「ハルト、今よ」

 「おぅ、ドリャー」

 ハルトの大斧が円柱形の機械の上部に大きな穴を開けた。私は、すかさず、雷をその中に落とすことにした。

 「ハルト、避けて」

 私の声と共に、ハルトが横に飛んだ。

 「雷柱サンダー・ポール

 円柱形の機械の中に雷が吸い込まれていった。それと共に、大きな爆音がなり、円柱形の機械は、ばらばらに飛び散ってしまった。だが、その部品は、思っていたものと少し違っていた。もっと、電気的な機械かと思っていたのだが、からくり人形の内部のような感じだった。機械仕掛けという感じ、昔の時計の中を拡大したような雰囲気だった。

 「キリ姉、やったよ」

 「ハルト、直ぐにこっちに来て!」

 キリ姉の声が大きく響いた。私は、パープルを呼び、その背に乗って、魔人タウの前に移動した。ハルトも、ダッシュで、キリ姉の横に移動した。

 「ミユ、後ろに下がって、ハルトを強化して!」

 ミユは、後ろに下がりながら、ハルトを強化した。

 「はい、
 スキル魔力耐性向上、
 スキル物理攻撃向上、
 スキル魔法攻撃向上、
 スキル攻撃速度向上」

 私は、闇魔法で結界を作り、ミユを保護した。それから、魔人タウへの攻撃を開始した。

 「雷嵐サンダー・ストーム

 しかし、私の魔法は、魔人タウの周りで、かき消されてしまった。

 「キリ姉、だめ、魔法が届かないよ」

 「ミユ、光魔法で、魔人タウの周りの結界を消して」

 キリ姉が、ミユに指示を出した。

 「はい、
 浄化魔法ピュリフィケーション

 「聞いていない様よ。別の魔法を使った見て!」

 また、キリ姉がミユに指示を出した。

 「はい、
 最上級解呪魔法マキシマ・ディスペル
 

 今度は、効いたようだ。

 「キリ、今よ」

 「雷柱サンダー・ポール

 今度は、魔人タウに雷が落ちた。

 「グァー、まだ、まだ。やれるぞ」

 「雷柱サンダー・ポール
 雷柱サンダー・ポール
 雷柱サンダー・ポール

 少し効いたようなので、私は、連続攻撃をした。すると、キリ姉の横に居たハルトが、一気に魔人タウの前に出て、大斧で、切りつけた。

 「ドリャー」

 大斧は、魔人タウの左肩に食い込み、血しぶきを上げた。しかし、魔人タウは、それを気にも留めずに、どこかから鎖を取り出し、ハルトを縛り上げた。そして、ハルトをクサリごと振り回し始めた。

 「どうだ! もう、大斧は使えないだろう!」

 私は、パープルに魔人タウに飛び掛かるように頼んだ。

 「うん、行くよ」

 私は、アイテムボックスから、聖剣を取り出し、光魔法で、魔力を注ぎ込んだ。すると、聖剣は、光輝き、光の剣となり、大きさをどんどんを大きくしていった。そして、パープルが、魔人タウの3m前に来た時には、聖剣の光の剣が魔人タウの胸に突き刺さっていた。

 「うぅ。聖剣か」

 「どうだ、降参するか?」

 私は、魔人タウに尋ねた。できれば、殺したくなかった。

 「いや、聖剣で、殺されるなら、本望だ。私は、戦いの中で、死にたかった」

 「だめだ、降参しろ!」

 私は、再度、魔人タウに尋ねた。聖剣の光は、魔人タウの身体を包み込み始めた。それと共に、魔人タウの身体が消え始めた。殺すというよりは、聖剣で、浄化しているような感じだ。

 「おい、これが最後だぞ。降参しろ」

 「ありがとう」

 ついに、魔人タウは、消えてしまった。そして、聖剣の光も小さくなり、元の聖剣の姿に戻っていた。

 ハルトの身体を拘束していた鎖も、魔人タウが消えるとともに、消えてなくなっていた。

 「やったわね。キリ」

 「うん。でも、殺したって、感じじゃなかったわ」

 「そうね。なんだか、別の世界に消えていったような感じね」

 「結局、魔人タウからは、有益な情報は、聞けなかったわね」

 「そうね。でも、本人は納得できたみたいで、良かったのかなぁ?」

 私達は、次の島に渡るための準備を始めた。遺跡に描かれていた魔法陣を使っても良かったのだが、余分な魔力を注ぎたくなかったので、移動用の神具を作ることにした。

 「キリ姉、新しい神具を作るから、少し、待ってくれる?」

 「良いわよ。その間に、食事をするわね」

 「キリ姉、ずるい。私も、先に食べる」

 私達は、ミユの用意してくれた、食事を食べて、少し休憩を取った。それから、私は、魔法陣を解析して、新たに神具を作った。

 「お待たせ。出来たわ」

 「それじゃ、行こうか」

 キリ姉の声掛けと共に、私は、神具に魔力を注ぎ込み、転移魔法用の魔法陣を起動させた。そして、私達は、次の島であるシータ島に移動した。  

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moka
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