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発達障害と依存

はじめに

こんにちは!
Mojo の産業医木村です。
いつもお読みくださりありがとうございます。

6月になりました。梅雨の季節ですね。
実家の京都では6月30日に水無月という和菓子を食べる風習があります。
夏越の祓という神事の元にいただく風習だとは最近知りましたが、三角形の白いういろうの上に小豆が乗ってます。
三角形の形が氷の形を表している、なんて風情ですよね。
湿気の高いおじいちゃんの家で食べた思い出は今でも忘れられません。

発達障害と依存

さて、今日のテーマは発達障害×依存症です

「発達障害」のある方は「依存症」になる傾向が
あると言われています。

首相官邸のホームページにも”発達障害の視点から見たギャンブルなどの依存について”というページがあるくらいですから、いかに社会問題なのか伺いしれます。

依存症とは?

そもそも、依存症とはどのような症状を指すのでしょうか。

依存症は、特定の物質や行動に強く引きつけられ、それなしでは日常生活が困難になる状態を指します。
アルコールや薬物、ギャンブルなどが代表的ですが、SNSやゲームにも依存することが知られています。

依存症の主な特徴は3つです

①強い欲求
特定の物質や行動を繰り返し行いたいという強い欲求が生まれる
 ②無自覚
依存症であることを自覚せず その行動が日常生活に悪影響を及ぼしていることに気づかない
身体的・精神的な影響
依存対象を取り入れないと身体的・精神的な不調を感じる

皆さんの周りの方にはいらっしゃいますか?

ADHD傾向の強い人が依存症に多い理由

依存症は、特にADHD傾向の強い方に多く見られます。

その傾向は以下の通りです。

原因1ドーパミン不足

元々発達障害の中でもADHDの特性が目立つ人は脳の構造上の特徴として、脳内報酬系の活性が低い(ドーパミンが少ない)傾向があることが指摘されています。
脳内報酬系は、専門的にはA10神経と呼ばれるドーパミンが関与する神経系です。
人は、脳内報酬系が刺激される(ドーパミンが増加する)ことで、やる気や快感が生じ、集中力を持続することが可能となります。

脳内報酬系の活性が低い傾向があるADHDの人は、刺激が少ないと、やる気や快感を感じることがなかなか出来ず、不注意から様々なミスを繰り返すことになります。
ADHDの人は無意識のうちに、行動し続けること(すなわち多動)や、何かに依存することで脳内報酬系の活性を高めようとしていると思われます。
その何かが人によってはアルコールや薬物、ギャンブル、ゲーム、買い物などであり、それらを続けるうちにやめようと思ってもやめられない依存症という状態に陥ってしまうと考えられます。

薬物依存症の約半数、アルコール依存症およびギャンブル依存症の約3分の1に発達障害が認められるとも言われています。

原因2ストレス

ADHDの人は特性により起こる生き辛さが原因でストレスが溜まりやすい。その結果、たばこ、お酒、スマホなどの何かに依存してストレス発散しようとする行動を取りがちです。
これも依存症になりやすいの要因の1つです。
実生活でうまくいかない事が多すぎて、孤独感を感じたり、自己肯定感が低くなる中で、努力をせずとも獲得できる快楽に手を伸ばしてしまうことは容易に想像できます。

依存症の原因を深掘る

依存症の対策を考える上で重要なことは、なぜ依存症になってしまったかについて考えることです。

当事者は「ストレスからギャンブルなどにのめり込んだ」と言い訳しがちですが本当にそれだけでしょうか。

依存症とストレスはある程度関係がありますが、ストレスが多い人が皆依存症になる訳ではないので、他にも重要な関係因子があると考えられます。

①ADHDと依存症の関係性
②遅延報酬障害と依存症の関係性

の二つが考えられます。
以下にそれらについて解説します。

ADHDの病態として、先天的に脳内報酬系の感受性低下および遅延報酬障害があることが分かっています。
遅延報酬障害とは、将来もらえる大きな報酬よりも、すぐにもらえる報酬を選んでしまうことです。

分かりやすく例をあげると、今すぐに10万円がもらえる場合と5年後に100万円がもらえる場合、どちらを選択するかという課題です(金額の大小は個人差があるので、あくまでそういうイメージとしてとらえて下さい)。

みなさんはどちらを選びますか?

別の表現をすると、遅延報酬障害とは、コツコツ積み立てをするのを好まず、一発大当たりを求めてしまうという傾向です。

ADHDを有する人は、遅延報酬障害があるため、目の前の10万円を選ぶ人が多いのです。
ギャンブルは、目の前のお金を取りに行く行為であり、遅延報酬とは正反対の即時報酬が得られるため、ADHDを有するひとはギャンブル依存症になりやすいと考えられます。その場合はADHDの治療を受けることで、ギャンブル依存症も回復に向かう可能性があります。

それでは、ADHDではない残り3分の2の人の場合はどうでしょうか。
ADHDを有しないギャンブル依存症者の特徴は、非常に「冷めている」ことです。喜怒哀楽が少なく、何事にも淡々としている人が多いのです。
しかしそういう人たちでも、やはりほとんどの場合、遅延報酬障害は認められます。その場合は、ギャンブルにのめり込む過程で、脳内報酬系が強い刺激に晒され続けて後天的に遅延報酬障害が生じ、即時報酬を求めるようになり、結果としてギャンブル依存症まで発展してしまったと推測されます。

日常生活の中で、貯金をして家族で旅行に行って楽しかった、仕事を地道に頑張り成果を上げた、それ位では脳内報酬系が刺激されず、幸福感を感じられなくなってしまっているのです。

では具体的な対策はあるのでしょうか。

依存症と対策

依存症は周囲の早期発見が非常に重要です。

陥ってしまう前に見つけ出してあげないと、気がついたときには手遅れという事もあり得ます。

ただ、なかなか見つけるのは難しいのが実情です。
なぜなら、本人が”今この状態にあることが大変なことだ”と気がついていない(水原被告もそうでしょうね)ので、周りが気がつくのも遅れます。

認知行動療法やマインドフルネスなどの心理療法と薬物療法を併用する事で効果が出るかもしれません。

そしてできる事ならば、当事者の人たちが何か自分や周りを疲弊させてしまうものでドーパミン不足を補おうとするのではなく、ポジティブな対象を見つけて、そこに彼らのエネルギーをぶつける事ができる何かを見つけられるといいな、と思いを巡らしてます。

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