もじこ塾 総合型選抜 合格報告会2021〜その3
◆Q&Aタイム(後編)〜併願、配慮申請、小中学校の時etc.
Q 併願やすべり止めについて、何かなさっていましたか?
◆評定を完全に捨ててはならない
もじこ これは大事な質問。柳沢くんからどうぞ。
柳沢 今の大学では2回AO入試があって、両方とも受けました。1回目で落ちて、2回目で受かった形です。
実は、第一志望は別の大学で。二次試験までは進んだのですが、落ちてしまいました。評定が全然取れてなかったのが原因だと思います。同じくらいの出来の人を比べるとなると、もしかしたら、最後は評定で選ぶのかもしれません。
もじこ 柳沢くんが受験した2年前は、「AO入試は評定不問」と、もじこ塾では思っていました。でも柳沢くんの結果から、評定を完全に捨ててはいけないとわかって。
それで、「評定は3.0、できれば3.5くらいとっていると道は広がるよ」と言うようになったのです。
そこから、もじこ塾に来ている中学生には、「大学受験まで考えるなら、ランクを下げた高校を選び、評定を上げるのもひとつの手ですよ」と勧めるようになりました。
もっとも、2人はそういうことは無縁に高校を選んでまして。いおりちゃんのように、通信制に移った結果、評定が上がったケースもあります。
話を戻して、いおりちゃんはどうでしたか?
いおり 正直、他の大学は考えていませんでした。落ちたら考えようとは思っていたけど、落ちるまではとりあえず第一志望に一直線に努力するという感じ。あと、もしも落ちても、自分は評定が取れていたので、同じ大学の同じ学科でも評定が必要な入試、つまり公募推薦を受けようかなと思っていました。
もじこ そうでしたね。同じ大学の同じ学科のAO・推薦入試は、たいてい何回か形を変えて行われます。いおりちゃんはAO入試の後は、それのための心の準備をしていましたよね。
なお、指定校推薦は1校しか受けられませんが、AO入試や公募推薦は併願可能です。他大学との併願ももできます。
さえちゃんの大学は、入試時期が早かったですよね。併願は考えていましたか?
さえ 併願校は、一応決めていました。落ちた後でも出願できるところを何校か、目星をつけてありました。でも勉強は、第一志望のAO対策しかしていませんでした。
Q 中学以降、配慮を受けていない場合、その実績で大学入試の配慮申請はできるのでしょうか?
もじこ これはつまり、中学で配慮を受けていて、高校で受けない場合、大学入試で配慮申請はできますか? ということだと思います。
結果から言うと、多分これはできない気がします。大学入試で配慮を受けるには、高校での配慮の実績が必要です。大学入試で配慮を受けたいのであれば、高校で配慮を受けるようにしてください。
奥の手としては、浪人して、「高校では配慮を受けていませんでしたが、高校卒業の頃に発達障害だと分かりました」と言って配慮申請できます。もじこ塾ではこれまで、このような事例に複数対応してきました。浪人生のために私が一筆書いたこともあります。
Q 柳沢さんに質問です。大学入学後は英語が必修だと思いますが、どのような苦労があるでしょうか?
柳沢 大学では、そんなに英語に苦労したことはないですね。英語の単位は必修ですが、レベル別なので、下のクラスに入れば普通にできました。
あと「小学校の英語ではこういうことをしますよ」という授業があって、そこでは割と英語を話すのですが、もじこ塾でフォニックスをやっているので、意外とそれが役に立っています。
もじこ もじこ塾では、卒業生に助手になってもらうのですが、中学生の授業に入って、フォニックスをずっと続けることで、英語が上手くなっていきますね。柳沢くんは大学生になってから、中1の生徒にフォニックスを教えるのを手伝っていますが、そのことによって英語力が伸びています。なんなら、大学生になってからのほうが伸びたというくらいに。
もじこ いおりちゃんとさえちゃんの、大学入学後の英語の抱負は?
いおり とりあえず、単位を落とさない程度にはやっていきたいですね。
さえ 私は合格後に診断書をとって、大学に配慮申請をしました。「英語ができないので、単位を配慮してください」という内容です。昨日出したばかりなので、まだ返事は来ていないのですが。
あと、もじこ塾に今も週1で通わせてもらって、少し対策を練っています。
もじこ この塾にはいろいろなクラスがあるのですが、重度なディスレクシアでフォニックスが簡単に定着しない人のためのクラスがあります。さえちゃんは今そこに、生徒として通っています。大学に受かってから、もう一回フォニックスを勉強しようとしているんですよね。
さえ そうですね。
もじこ 大学が決まって心の余裕ができたら、とても苦手な英語を頑張ってみようという気になったんですよね。まだまだ伸びるよ、頑張ろう。
Q ご自分の経験を踏まえて、中高時代に理解、配慮があれば将来は変わる可能性はあると思いますか? 配慮や理解に対して、今どんな気持ちを抱いていますか?
◆先生のノートのコピーを授業前に頂けないかとお願いしたものの…
もじこ 中高時代に、こんなふうに理解、配慮されていたら変わったのに……と思うことはありますか?
いおり 私はたとえば、通信制の前の高校に通っている時期に、学校側にお願いしたことが一つあります。それは、学校の先生のノートのコピーを授業前または授業後に頂けないかということ。でも結局いただけませんでした。そんなことも、高校中退につながっているのですけど。この配慮があったなら、もしかしたら辞めていなかった可能性があります。
ただ、やっぱり、配慮はなかなかして頂けないことが多いのかな、と自分の経験から思います。
もじこ 合理的配慮は、日本で制度化されてからまだ5〜6年目と日が浅いので、どういうふうに学校側に働きかけていくのかは、ディスレクシア側の課題かもしれません。
いおり その高校では授業が進むのが速かったので、黒板の板書を写そうとすると、先生の話す内容まで理解がいかないんです。なので、板書はとるから録音を頂けるとか、逆にノートを頂けるなら聞いているとか、どっちかに絞ったら内容は入るかもと思っていましたね。
もじこ さえちゃんは、中高時代にこのような理解や配慮がほしかったというのはありますか?
さえ うちの高校は勉強ができない人が多すぎて、ディスレクシアがどうしても埋もれちゃうんですよね。だから努力してもできないのか、それとも勉強自体をやってないのか見分けがつきにくいので、仕方がないという気持ちはありました。なので、ディスレクシアの人にはどうしてもできないことがあると理解してもらい、それを前提に課題を出してもらえるという心持ちだけでもほしいですね。
実際に何かされるとかじゃなくて、そういう考えを持ってほしいです。勉強してないと思われるのがちょっと悲しいなというのはあります。具体的な何かというより、とりあえず知ってほしいです。
もじこ 配慮がほしい以前のこと。
さえ そうですね、やっぱりディスレクシアの人が本当にできないとは、先生たちは思ってないと思うんですよ。ディスレクシアのことを伝えたときに「わかった、でも単語頑張りましょう」と言われたのですが、知っていればそんな言葉は出ないと思うんですよ。
先生からしたら、やってもらわないと他の人に示しがつかないんでしょうけど、もうちょっとだけディスレクシアに配慮してもらえるといいなと思います。せめて理解してほしいです。
もじこ ディスレクシアの人は、見た目は普通なので特性が見えにくく、理解されにくい面があります。「英語だけ極端にできない」という状況が想像しにくいと思うので、もじこ塾としても広報していかないといけないですね。
Q 先程の質問は、中卒から高校認定の場合の話でした。中学の実績で、配慮入試の申請はできますか?
もじこ 多分できないと思います。
もちろん、「物は試し」で、中卒から高卒認定を経て大学入試で配慮申請をしてみてもいいと思います。
けれども、高卒認定はそもそもAO入試が難しいのでは、と思っています。質問者の方のような状況なら、通信制高校に進み、高認ではなく高卒の資格をとったほうが、配慮も受けやすいと思います。
なお、少し違う話になりますが、高認は、高校入試をトップレベルで戦える人が選ぶべきという現実があります。高認も楽な試験ではありません。センター試験の1年半くらい前の難度です。そこそこ字を読まなければいけない試験なので、トップレベル公立高校を目指すレベルでないなら、通信制高校に進むほうが高卒資格は楽にとれます。
Q 診断書はどこでもらえるのですか? また、もらうまでは大変ですか?
もじこ 病院を見つけるのが大変ですね。
さえ 私の場合、地元のメンタルクリニックで1時間くらいの診察を受けたら、6000円ほどで診断書を書いてもらえました。私は地元に病院があったので、思ったよりは大変じゃなかったです。地元に病院がない場合は、たしかに大変と思いますが……。
もじこ 地元のメンタルクリニックに行ってみるといいかもしれませんね。「大人の発達障害」を診てくれるところに相談してください。
Q 小学校や中学校の時、国語や算数はどうやって勉強しましたか? 塾や家庭教師は利用されていましたか?
◆普通の塾では、変な目で見られることもあった
さえ 漢字は苦手でしたが、他は特に目立ったところはなかったですね。でも、算数はできなかったです(笑)。高校受験では普通の塾に行っていました。生徒2に対して先生1のスタイルでした。
いおり 私は、私立でレベルの高い子が集まる一貫校に在籍していたので、小学校と中学校の勉強は大変でした。塾や家庭教師は、小学生時代からつけてもらっていました。ただ、予習や復習ができるレベルまでは伸びなかったですね。
高校の時は、英語の塾、あとAO塾に一回行きました。ただ、全部続かなかったです。基本的にディスレクシア対策がなく、普通の人として扱われるから。
なので続かないし、メンタルもやられるし……。普通の塾に行くなら、もじこ塾に行く回数を増やすほうがいいと思います。
さえ 普通の塾では、変な目で見られることもありました。私の場合、英語ができなさすぎて。「単語書けるの?」と言われて、できないことが晒されている状況になるんですよ。「は?」みたいな顔をされたり「頭おかしいの?」みたいな目で見られることもありました。
相手への理解がなさすぎて、心にくることがあるので、私も、英語を勉強するならもじこ塾のほうが絶対にいいと思います。
もじこ もじこ塾の小論対策はどうでしたか?
さえ 私は良いと思います、一対一でやってくれるので。他のところだと、そこまでちゃんとやってくれないんですよ。書き方とか、受験方法に合った対策をしてくれるので、私はもじこ塾はいいと思う。
もじこ ディスレクシアの生徒には、一般の生徒と比べて得意な部分もあります。いいことが言える、洞察力があるなど。一方、漢字のミスがいつまでも直らないとか、文章が飛躍するとか、助詞がおかしいとか、ディスレクシア特有の困難もある。こちらは、そういった困難がディスレクシア由来だとわかった上で対応をしています。
いおり 私はAO塾にも行っていた時期がありましたが、数回行ってすぐ行かなくなってしまいました。そこの塾は「上を目指そう、頑張っていこう」みたいな感じで、雰囲気についていけなかった。そこは一対一だったので、晒されて恥ずかしいとかはなかったのですが、その先生が「やろうよ!」という感じで、「やる気ないの」と言われちゃって。続かなかったですね。
だから、それと比べるともじこ塾は、自分のペースでできるのが良かったと思うのと、ディスレクシアに理解があるので、できない理由が他の子と違うということをわかってくれている。
たとえば「文章力が上がらない」という苦手を持っている人は、ディスレクシアでない方でもいらっしゃると思うんですけど、それがディスレクシアだと「漢字が思い出せない」という苦手で、苦手の種類が違うんだと思うんです。
他の方と、課題が違うんですね。もじこ塾では、その課題をちゃんと把握してくれて、その課題への対策をしてくださったというのがよかったです。
もじこ もじこ塾では、効率的に学べるかもしれないですね。難しいポイントが普通の人と違うと理解しているので。
Q リモートでの授業はやりませんか?
もじこ 現時点では、英語は対面のみとしています。小論はできるかなと思っていますので、ご相談ください。
コロナも長引きそうですから、少なくとも小論文はリモート対応しようと思います。ご要望に応じて組み立ていこうと思っていますので、ご相談ください。
◆まとめーー後輩へのアドバイス
◆できることさえやっていれば、案外大丈夫
もじこ そろそろ時間ですので、最後に、後輩に一言お願いします。
ディスレクシアの中学生や小学生で、悩んでいる子がいると思うんです。まだまだディスレクシアは世間に知られてないので、追い込まれている子もいると思うのだけれども、そういう子に向けてメッセージをもらえますか?
いおり ディスレクシアであることは大変でもありますが、あまり自分を追い詰めないほうがいいと思います。ゆるゆると、自分の心が壊れない程度に、できることをやっていれば、大学に行けないとか、将来の夢が叶わないというのはない、と思っているので。自分ができることをやっていく。できることさえやっていれば、案外大丈夫。と思っておけばいいのでは。
もじこ 今は漢字が書けなくても、あまり思い悩まずに。
いおり そうですね、大学に入っちゃえばパソコンが使えるので。心が壊れないことが大事です。
さえ ディスレクシアのことを自覚して、それに合った行動をしていくのがいいと私は思います。やはり、どうしてもディスレクシアのことで、日常生活だったりいろいろなことで困難があるとは思います、私もたまにあるんですけど。それに合った行動を考えて、あまり凹まず気にせずにいくのがベストかなと思います。
もじこ ディスレクシアだと知るのは、なるべく早いほうがいい?
さえ そうですね、私はそうでした。自覚がないと、「自分はできない」と責めちゃう気持ちがあるので。凹む気持ちもあるけど、自覚して行動を変えることもできるので、早いほうがいいと思います。
もちろん、諦めが効かないというのはあると思います。でも、自分がディスレクシアだと知らないと、「もしかしたら、いつか英語ができるようになるかもしれない」という気持ちがどうしても出てきちゃうので。知ることは大切かな、と。
もじこ 知ると、捨てる勇気が湧くというか。
さえ そうです。仕方がないことと思える。
もじこ 捨てる勇気を発揮してここまできた、と。
さえ そうですね。
もじこ まだまだ伸びますよ。
◆自分が何が好きで、何が得意なのかを把握してほしい
もじこ 柳沢くんはどうですか?
柳沢 まずは自分が何が好きで、何が得意なのかを把握してほしい。行きたい大学を決めたり、自分がどうやって社会人として生きていくのかなどを考えなきゃいけない時に、自分が何が得意で、どういうところから活躍できるか、ということを知っておけるといいですね。
ディスレクシアというのは、できることとできないことが表裏一体の部分があるので、「自分ができることは何なんだろう」ということを突き詰めていくほうが生きやすいというか、生活もしやすいし、仕事とかもちゃんとしやすいかなと思うので。
まずは好きなこと、できることを見つけてもらいたいかな、と思います。
もじこ 柳沢くんのメッセージは一貫していますよね。できること、得意なことを見つけて、それで突き抜けましょう、それで人の役に立ちましょうと。
とても努力家で、大変なこともあったけれど、自分のディスレクシアを知って、自分のできることに戦略的にリソースを集中させていますね。
AO入試で言うと、ゆるゆると細く長く文章の練習を続けて、受験学年になったらパッと集中して乗り切るというのが、理想のタイムラインでしょうね。
本日はありがとうございました。
◆ご案内〜もじこ塾 小論文クラスについて
今回は、どのようにしてAO入試を闘うのかという具体的な話は散発的に少し入っただけでしたが、それに関しては、noteというサイトで去年の一年間かけてかなり詳しく書いています。https://note.com/mojiko_shinjuku/n/n5182319b3bfb
AO入試に興味がある方はそちらをご覧ください。
タイムスケジュールについてはこの回に一番詳しく書いています。
https://note.com/mojiko_shinjuku/n/n1ad80ece00a3
100円の有料なのですが、かなり具体的に「このような手順で戦ってください」ということを書いています。
もじこ塾は基本的には英語塾なのですが、ディスレクシアで、最難関大学を目指すのでなければ、大学に行きたい人はぜひAOで戦いましょうということを、今後は強く打ち出していこうと思っています。塾には、今の段階で高2の方が来ているのですが、高1でも来たかったらどうぞと考えています。今年の4月から、新高1、現中3の方、来たかったらどうぞ来てください。
月一回、土曜の午後にクラスを行っています。
内容は、純粋書字練習、スピーチ、話す練習、音読する練習、それを要約する練習、そして最後に文章を書きます。私と助手とで文章を読み、添削もその場でたくさんします。また、言葉が出ない人には、言葉を出す手伝いもします。
特性理解と文章力の向上は相互に関連していると、私は思っています。
自分のディスレクシアが理解できると「こういうふうに戦えばいいんだな」と文章力が上がるし、文章力が上がれば特性理解も進むという、螺旋のような関係になります。
実際には、ゆるゆると学んでもらって、高3のゴールデンウィーク明けに、各大学の募集要項が出ますので、その頃から個別指導に入っていきます。
個別指導の内容は各大学によって変わりますが、基本的に、ディスレクシアはやはり読むのが大変なので、志望校選定からお手伝いします。
志望理由書の作成、課題文作成、面接対策と、ここでは一例を出しましたが、それも各大学に合わせて対策をします。
あと、合理的配慮申請のお手伝いもさせていただいています。一緒に病院を探すところから、状況報告書に何を書くのかというところまでサポートします。ここもノウハウが蓄積しておりまして、そのあたりのことはnoteに5回にわたり書きました。ご興味のある方はぜひご覧になってください。
第1回https://note.com/mojiko_shinjuku/n/n6ee5a9b63d09
第2回https://note.com/mojiko_shinjuku/n/nb9360d359120
第3回https://note.com/mojiko_shinjuku/n/n224ad192a55f
第4回https://note.com/mojiko_shinjuku/n/nd2ec55b22b64
第5回https://note.com/mojiko_shinjuku/n/nc1fb182ffcec
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