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文字起こしにおける「素起こし」とは?
言葉の端々まで正確に聞き取る
音声をテキスト化する文字起こしでは、「起こし方」にいくつか種類があります。その一つが「素起こし」(すおこし)です。逐語記録、逐語起こし、丸起こしと呼ばれることもあります。
素起こしという語感から、ざっと簡単に起こすことだと思っている方もおられるようですが、むしろ逆です。
素起こしは、音声を聞こえた通りに正確にテキスト化します。ですから、言葉の端々まで漏らさず聞き取る丁寧な作業が求められます。
通常の文字起こしはケバ取りが行われる
人の話というのは、耳で聞いているとあまり気にならないかもしれませんが、文字に起こしてみると無駄な部分が結構あります。
たとえば、「あー」「えーと」といった意味のない言葉や声、言い間違え、言い淀み、「そうそうそうそう……」といった過剰な繰り返しなどです。
通常の文字起こしでは、こうした明らかに話の内容と関係のない部分は削除や修正しながら起こします。この作業は「ケバ取り」と呼ばれ、読みやすい文章に仕上げるために必須の作業といえます。このケバ取りを行わないのが素起こしということです。
素起こしが必要になるケース
読みづらくなってしまうのに、あえて素起こしを行う必要があるのでしょうか。じつは、素起こしのほうが都合がよいケースがあるのです。
たとえば、研究のため行われる会話分析やインタビュー調査、それから裁判証拠として提出する文書なども素起こしが求められます。いずれも、読みやすさよりも正確さが優先される場合です。
なお、とくに必要性がないのに「なんとなく正確なほうがいいんじゃない?」と安易に考えて素起こしを依頼するのはやめたほうがよいでしょう。録音内容や話者にもよりますが、ケバが多くて素起こしした文章が読みづらく、後で読みやすく直すのが大変だったということになりかねません。