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もう刑事弁護はできない

私は名古屋や東京で仕事をしていたころ
刑事弁護をたくさん担当していました。

世間からつまはじきにされて、
味方なんて誰もいなさそうな人に
自分なりに寄り添って
仕事をしてきたつもりでした。

そういう私ですから、
極悪人と世間から呼ばれる人の
事件を引き受ける同業者には
一目置いていました。

ですが、ちょっとその感覚が
変わってきました。

選挙活動で
恫喝や脅迫まがいの行為を繰り返して
逮捕・起訴され、
公判が始まったつばさの党。

彼らの弁護人の中に
東京時代の知人弁護士が
複数含まれているのですが、
どうしても
「頑張るな~」と
感心する気持ちが湧いてこないのです。

個人的には(報道を見る限りですが)、
彼らがやったことはただの迷惑行為で、
「表現の自由」という言葉の悪用でしかない
と思っているのです。

「表現の自由」というのは、
国家権力の暴走を許さないために
政府を批判する言動を保護しよう
というのが、その理念の根本にあります。

最近はこの「表現の自由」という言葉を
はき違えている人が大勢いて、
その名のもとに権力がない個人を
貶めるような活動をしている人が
たくさんいます。

私はこういう人たちに対して
「表現の自由」を汚してくれるなと
強い憤りを感じるのです。

生活苦のために窃盗を繰り返す。
発達障害や知的障害があったのに
適切なケアを受けることができず、
犯罪に陥ってしまう。
そういう人たちと一緒くたにしてほしくない。

心からそう思います。

つばさの党の弁護人たちは、
6か月間保釈されないことについて
国家賠償請求まで起こした
ということですが、
そういう彼らに入れこんだ活動について
全く共感できません。

もちろん彼らも仕事でやっているので、
その活動を誹謗中傷したりするようなことは
考えていません。が、自分は、
彼らのためにそこまでするのが、
いくらお金をもらってもイヤだなと
感じてしまうのです。
(そのお金の出どころだって
クリーンじゃない可能性が高そうですし。)

私は一度刑事事件から距離を置いて、
その後再び少し刑事事件を担当しましたが、
どうにもやる気が出ずに、
またリタイアに近い状態にしようと
しています。

こんな感覚になった私は、
きっと被疑者被告人を
「気の毒な人」
「気の毒じゃない人」に
心のどこかで分けてしまって、
「気の毒じゃない人」に対しては
まともな対応が
できなくなってしまうでしょう。

なので、
リタイアしてちょうどよいと思うのです。

盗人にも五分の魂と言いますが、
場合によりけりだなと思ってしまう
自分がいるのでした。

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