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性犯罪が無罪になるといても立ってもいられなくなる人々

先ごろ、
医大生3人による女性への強制性交罪事件について(改正前)
一審での有罪判決が覆り
高裁で無罪判決が下された件で、
世論とX界隈がやたら盛り上がっております。

世の中には性犯罪で訴追された件が
無罪になるのが
どうしても許せないという方が
一定数いるようで、数年前にも
名古屋で父が娘を
レイプし続けていたとされた件で
一審無罪判決が出た際に
今回と同様の反応が出ました。

無罪判決が怪しからん。
こんな判決を出した裁判官は
訴追委員会にかけてやれ。

こんな署名活動が
あの時も、
そして今回も実施されました。

私の見解は一貫して変わらず、
性犯罪とて他の犯罪と同じであり、
無罪推定は及ぶのであるから、
検察官の立証が足らんと
裁判官が心証を得たのであれば
それは無罪判決になって当たり前
と思います。

そして、
高裁で一審判決が覆ることが
かなり少ないことに鑑みれば、
よほど重視すべき事情があり、
それが捜査側の言い分を垂れ流すだけの
報道機関によっては
全然報道されていないのだと
考えております。

しかし、この記事で
私が言いたいのはそんなことではありません。

今回の「裁判官を訴追せよ」という署名が
一体どれだけ世論を
反映しているものかについては
おおきなクエスチョンを持って
判断すべきであると思うということです。

実際、私の知り合いの中には
「訴追」の部分を読み飛ばし、
単なる無罪判決への抗議だと思って
署名した人がいて、
しかも裁判官の訴追を軽々と求めることの
危険性を認知していませんでした。
(取り上げちゃった方、ごめんなさい。
ただの例示です。)

x上の同業者でない私の知人は
それほど多くないので、
そんな中にも一人いるということは、
頭に血が上った状態で
おそらく署名の趣旨をきちんと考えないで
オンライン署名に名前入れちゃった方は
大勢いることを推察させます。

これに加え、ネットによくいる
面白半分、興味本位で署名した人も
一定割合いることでしょう。

さらに、私としては署名した人の中には
「性犯罪の無罪はおかしいと言わないと
叩かれる」
と思っている人も一定数いると考えています。

そのため、そんなにこの話題に興味がないのに
自分が非難されないために署名したという人も
今の世の中結構いることと思います。

私はそういうご時世になってしまったことが
今回の裁判官訴追問題に如実に表れていて、
それこそが最も恐れるべきことだと
思っています。

周囲と違う意見を持つことが許されない。
興味がないのに賛同しないことが許されない。

こういう激しい同調圧力は、
戦中の隣組の監視活動を思い起こさせます。

お上の言うことや世間の動向に同調しない人を
非国民呼ばわりしたあの時代に、
日本(いや世界か?)はネット社会を通じて
逆戻りしているように思います。

今のところ、X上で、弁護士以外に
「裁判官訴追までやるのはおかしい」と
堂々と言っている人に
私は出会えていません。

この問題になると
我々法曹が陸の孤島化する状態です。

忘れてはいけないのは、
これまで訴追側のトップだった
元検事総長も
自身に向けられたレイプの疑惑について
同意があったと無罪主張している
ということです。

それだけ密室で行われた男女間の行為の
同意の有無の問題は
取扱いが難しいということです。

冷静になりましょうと
呼びかけたところで、
私ごときの力では無駄だと思います。

ですが、
自分の思いと違う方向に向く人がいること自体を
許さないという発想はやめるべきです。
そういう人は、
自分がいる社会をどんどん危険なものにしています。

これだけ言って終わりにしたいと思います。

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