コンビニエンス 『カナガワの鱒釣り』13
あまりにも、あまりにも可愛らしいあまりに、毎日タバコを買ってしまうようなコンビニ娘のレジ打ちをながめて、会社の軽トラで国道1号線を1時間半かけて帰る、これが天然ものの生活だ。
天気予報は雪がふる、雪がふると午前中から脅迫じみた予報を流していたけれど、結局どうして、いつも通りの国道1号線がつづいた。
帰り道のわくわくがへったものだ。80年代には色々とあった。夕ご飯までのファミコン、夕方6時のアニメ、夕ご飯、7時のアニメ、8時からのテレビ、9時からのファミコン、お菓子を食べて、炭酸飲んで、ふとんでぐう。
渋滞にはまり、駐車場のおおきなコンビニが気になる。僕は2019年のわくわくを家に連れて帰るべく、そのコンビニに寄る。
店員さんはおっさんだ。彼は、まるでフラワーロックが音を感知して動くかのように、一瞬だけど僕に反応した。コンビニはおでんとコーヒーとあげもののにおいが混じった匂い。外では作業着姿が立ってタバコを吸って、スーツ姿はコンビニパスタをしゃがんで食べている。
前向きに停めた軽トラックの中から、僕は二人をながめていた。目の前の二人はちらと僕を見る。スマホを開いて見ると、LINEアプリのアイコンに赤数字が出てるけど、僕は無視して、どうでもいいニュースを見てしまう。
人気アイドルグループ活動休止!
女子大学生遺体で発見される!
○○容疑者暴行容疑で逮捕!
僕にはどうしようもないな、と思う。
「もしもし? 夕飯どうする? なんか買って帰ろうか?」と、仕事帰りの妻から電話がくる。
「あー、今日はいい。食べない」
「そうなの? お酒は? あるの」
「あー、いま買ったよ」
ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ妻はため息のような間を開ける、僕が自分の小遣いで嗜好品を買ったことが気に食わないのだ。嗜好品は家のお金で買え、と妻は言う。これが妻の愛情なのか。
2019年のわくわくは、こうして後ろめたいニッカウイスキーとなって、助手席で揺れている。
読んでくれてありがとう。明日も元気で!
多分僕もまた来ます。