マンション大工と呼ばないで!
大八の僕が大工として独立できた背景には、切れない仕事という大きな後ろ盾がありました。ここ数年激増したマンションの買取再販業者。彼らが生業にするリノベーション工事は日々物件の先取り合戦のように行われているので途切れることがほぼありません。
僕はそこで発生する木工事で食べています。年間でも95%くらいはマンションでの仕事となり、戸建ての仕事はほとんど叩いていません。これをね、軽く下に見る人たちが居るんですよお。な〜に〜っ!?
実際、「マンション大工」という言葉にはマンションを主として仕事場にする大工という意味の他に、マンションしか叩けない半人前の大工という意味が少なからず含まれていると思う。てか、そういう意味で使われていることが多い。
たとえば、こんなことがありました。
マンションリノベーション工事の現場で二十代前半の若い大工と二人で仕事することになったんです。木工事が工期内に終わりそうになくて、請け負っていた大工が現場を放り出して別の現場に行ってしまった(しょっちゅうあります)。そのケツ拭きに僕とその若い大工が抜擢されたというわけです。
この若い大工がドラゴンボールの人造人間16号に顔も雰囲気も似ていて、寡黙で仕事がめっぽう速い! 僕が1やってる間に3終わらせるくらいのスピード。まじもんの人造人間やんけ、と僕は思いました。んで、聞いてみたんです。
「若いのに、仕事めっちゃ早くてすごいね。何年やってるの? 大工」
「一年半です」
天才発見。
おいおいおいおい。一年半なんて、あたしゃホーキしか持たせてもらえなかったよ。そのホーキで現場掃除してろって言われて、日が暮れるまでマジで一日中掃除してました。
なんでもこの16号くんは大工の見習いになって半年を過ぎた頃、唐突に現場を任されて、わからんことは親方に電話で聞きながら一人でこなすようになったとのこと。
これですよ。職人を早く育てよう又は成長しようと思ったら一人でやらせてみる又はやってみるのが一番早い。16号くんの素質もすごいし、その親方の思い切りもすごい。
この話を一年半以上僕に現場掃除と手元だけやらせていた張本人にしてみました。
僕「ていうわけで、そんな若い大工に会ったんだよ。凄いでしょ? 一年半だよ。もう一人で現場やってんだってさ」
親父「ふ~ん。でもマンションでしょ?]
僕「そうだよ。マンション」
親父「マンション大工だからね~」
こら親父ぃ~!! やっちまったなあ!
こんな風に戸建てを長いこと主戦場にしてきた古参大工はマンションにおける大工仕事全般を軽く蔑視して、「マンション大工」と呼び、自分たちと差別化する傾向があります。
実際僕は階段を作れない半人前大工なので軽視されても仕方がないのですが、現場がマンションでもすごい人はすごいよ。逆もまたしかりでしょ。