人がいい職人は損をする
「お願いしていた大工さんに断られちゃって~」
この入りで依頼される仕事はろくなもんじゃないことが多いです。先に依頼されていた大工が断った理由で考えられることは大体以下のどれか。
・別の現場の仕事がずれ込んで受けられなくなった
・別の依頼の方が重要orオイシイと感じたためそっちを優先した
・よくよく聞いてみると仕事内容がめんどくさそうで断った
・断ったというより施工管理や元請けと揉めてケツを割った
これ、一度は引き受けてるわけだから社会人としてダメムーブですよね。自己都合の身勝手な理由だよコレ。が! がしかしのだがしかしだよ! 職人界ではめちゃくちゃ横行してる現実なのだ。なぜこんなことがコータローまかり通るのか。
管理側が職人に仕事を依頼する際、詳しい仕事内容を伝えずにざっくりと、日程に予定を入れておいてください、とだけ伝えて職人を仮押さえしておくのは常套手段です。
この時点で職人に断られてしまうことを避けるために、いくつかの事実をさりげなく秘密にしておくんです。大体の職人は仕事の内容をそこまで深く聞いてこないから聞かれないことは言わなくてもいいよねって理屈。んで、何を秘密にするかというと大体以下のどれか。
・エレベーターがない
・予算があまりない
・現場が遠い
・仕事内容が大変
一応管理側をフォローしておくと、実際に詳細が依頼主から降りてこなくて、職人に伝えようにも本当にまだわからないって場合もあります。
職人からしてみるとエレベーターがないくらいはまだギリギリ許せるというか、許さざるを得ない。依頼された現場に行ってみたら団地の五階でエレ無しでした、ってのはよくあります。ものっそい愚痴るけどね。
住所を聞いてみたら現場が遠いっていうのもよくある。「また日にちが近くなったら発注書送りま~す」とかいってササっと電話を切り、実際予定していた日の前日に発注書が届く、んで見てみたら現場が超遠い...みたいな。
予算がないときによくあるのが、当日現場で言われるパターン。「ごめんなさい。今回の現場予算があまりなくて、次の現場でみるんでお願いできますか?」ってね。こんなこと面と向かって言われたら、そりゃあ〜た断りづらいですよ。
ほんで、仕事内容が大変なやつ。よくよく聞いてみたら手間がかかりそうな内容でどう考えても骨が折れそうな仕事。これね、プロだったら断るなよって言われそうですが、ごくごく普通の仕事と金額が同じときてるのよ。そりゃあ人間ですもの、楽な方がいいに決まってるじゃないですか。
一番多いのは仕事内容が実は大変のパターンかもしれん。当日の朝に現場で開けてビックリ玉手箱状態。大工も他の業者もこれで怒ってることが本当に多い。聞いてないよ〜ってね。
とまあ、要するに元請け側も職人側もどっちもどっちだったりするんですね。こういう経験が積み重なって職人は冒頭のような行動に出るわけです。大工に限らず真っ当な職人は複数の業者と取引しているので、狡賢い業者や人の悪い業者とは縁を切ってもなんとかなると考えてるからね。
こんなことが起こらないようするためには依頼する側もされる側もお互いによくコミュニケーションをとって、言うことはハッキリ言う、聞くことはキッチリ聞くのが大事だよ〜・・・って皆んなこんなことはわかってるんです。それが難しいから大変なんだよね。
生の現場では職人側も管理側も人がいい人は損をしてるし、狡賢く立ち回れる人が得をしています。これは現実。
事実、僕は損をしている実感がある(胸は張ってない)。