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ハヤトの芝生のオオカマキリ 『カナガワの鱒釣り』7

 ある夏の終わり、僕は高架橋をこえて、新幹線の向こう側の畑に沿って歩いていた。更に畑の向こう側、野球場ほどの芝生が広がっていた。

 ハヤトの芝生は広くて、空は青く高く、陽射しがまぶしかった。足を踏み入れると、キチキチが陽に照らされた草むらに向かって飛び込んでいく。

 芝生の片側はコンクリ擁壁が30メートルほど続いて、そのすぐ下のあたりは背の高いススキやネコジャラシが群生していた。中に入ると形の綺麗なショウリョウバッタのメスやオオカマキリにチョウセンがすぐにとれた。

 僕の虫かごは小さくて、ショウリョウバッタのメスとオオカマキリを1匹ずつ入れると、それぞれ弱ってしまうのだけど、僕は次々と見つかる虫たちを躊躇なく放り込んだ。

 オオカマキリ、チョウセン、チャイロ。

 コカマ、キチキチ、オンブ。ヒシバッタはいらないな。

 昆虫採集だったらいい。小さな命に教わることは少なくないよ。彼らの食べもの、住むところ、何を考えてるのか? そういったこと。

 そういえば、あのお兄さんは誰だったのだろう。藪の中から飛び出して、手足を見ると僕は蚊にさされて、あちこちぷっくり膨らんでいた。虫よけなんてもってない。かゆくなるのは帰り道。かゆみに耐えきれず肘や膝をかきむしると血がふきだす。痛くはないけどね。

 「きみ、おいで、ウナコーワつけてあげる」

 学生帽の凛としたお兄さんが僕を呼び止めた。

 本当はキズにしみて痛かったけれど、ありがとうございました。

 家について、虫かごを開けるとオオカマキリもチョウセンもチャイロも、みんな眼が真っ黒で、枯葉のようなにおいがした。








読んでくれてありがとう。明日も元気で!
多分僕もまた来ます。

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