体験の宝庫、Rollei 35Sの魅力
8年くらい前、フィルム写真からデジタル写真への移行ということで、フィルムカメラを全て売却しました。売却したのは、LEICA M5、LEICAFLEX、Nikon F、CONTAX IIIa、CONTAX T2、Konica Big Miniです。今思えば、本当に勿体ないことをしたなと後悔しています。LEICA M5とライカレンズは、とくに勿体なかったです。
その後に、友人が無期限貸出ということでRollei 35Sを譲ってくれました。フィルムカメラを手放して後悔していた時だったので、この好意に対してとても嬉しかったのを覚えています。それから7年くらいになります。昨年3月にLEITZ minolta CLを買うまで、ずっとフィルムカメラはRollei 35Sの1台でした。
Rollei 35Sの概要
このカメラは1967年から1980年まで生産され、発売当時は世界最小の35mmカメラでした。コンパクトだけではなく、ビルドクオリティーが高く直感的に操作でくます。ドイツ製からシンガポール製になっても高級感は引き継がれました。Carl Zeissのレンズを搭載し、写真の質も手を抜いていません。
距離計が付いていないので、レンジファインダーカメラではなく、単なるファインダーカメラとなります。
特徴
手にすっぽり収まる驚異的なサイズの35mmカメラです。そのおかげで、カバンに入れっぱなしに出来ます。
沈胴式のレンズはCarl Zeissの銘玉40mm F2.8ゾナーで、Rollei-HFT (High-Fidelity-Transfer)というレンズコーティングが施されています。今年1月から自家現像を始めてからモノクロームばかりですが、カラーフィルムも良い味を出してくれます。とくにロサンゼルスに住んでいた時に撮影した写真を見ると、西海岸の独特な空気感をフィルムに落とし込んでくれています。
東海岸でのモノクローム写真も、とてもいい味を出してくれます。小さなボディからは信じられないクオリティです。
私の個体は露出計が生きており、意外と正確で信用しています。カメラをぶつけてリペアに出した時、ついでに露出計を現在一般的に販売されているアルカリ電池1.5Vに合わせて調整してもらいました。露出計が機能するのは、私にとってありがたいです。
このカメラの最も高いハードルは、目測ということでしょう。被写体までの距離を推測して自分で焦点を合わせます。瞳オートフォーカスなど、カメラ任せでピントが合う現代においては目測に対する抵抗はあると思います。以前、外部レンジファインダーを手に入れましたが、数回使っただけでした。かさばって折角のコンパクトサイズがスポイルされるのと、外部レンジファインダーだけ距離を合わせて、カメラ側にその計測を反映するのを忘れて撮影したことが多々ありました。外部レンジファインダーのおかげで、ピンボケを量産したことになり本末転倒でした。そのため、結局使わなくなりました。
このカメラの最大の利点は、露出計以外はフルメカニカルなので、多少壊れても修理が可能ということです。実際、私も2回ほど壊して修理に出しました。金属製なので凹んだり塗装が剥がれてもエイジングとして味わいを楽しめます。
チャームポイント
正面から見ると、クラシックスポーツカーのコックピットにある3連メータのように見えるし、下から見上げると、クロノグラフ時計のような小さな体にぎっしりと詰まったメカニズムに男心がくすぐられます。
ウィークポイント
バッテリーはフィルム室内にあり、もしフィルムが入っている状態でバッテリーが切れたら、そのフィルムが撮り終わるまで交換はできません。また、正面左上にある採光窓は開きっぱなしなので、バッテリーを消費します。サードパーティーでこれをカバーするパーツが売られているので、バッテリーの消費が気になる場合は、これを装着することをお勧めします。私は、無い方がシンプルで格好が良いので、カバーはしていません。
バッテリーは、水銀電池のMR-9です。これは今は販売しておらず、アルカリ電池で代用することになります。ただ、アルカリ電池の電圧は1.5Vで、MR-9の1.35Vと異なります。修理した時、ついでに1.5Vに合わせて露出計を調整してもらいました。もしくは、高価ですが空気亜鉛電池 MRB625を使うこともできます。
ホットシューが下に配置されているのも、一般的なカメラとは違います。ただ、GODOXのトリガーを付けて多灯ライティングをやりましたが、そんなに違和感は感じませんでした。
まとめ
1年半前に「ライカブームであえてRollei 35S」という記事で「ライカはとても気になりますが、我が家の財力ではとても買うことはできません。Rollei 35Sは、その欲望をうまくコントロールしてくれるありがたい存在です。」と書いたものの、結局我が家の財力の限界を無視してLEICA MP 0.72を買ってしまいました。自分の欲望の深さに呆れます。ちなみに、エリザベス女王はライカM型(確かM3とM6)とRollei 35(ゴールド)の両方を使っています。超背伸びをしているのが分かります。笑
ただ、ライカを買ったからこそ、改めてRollei 35Sの良さを再確認できたと思っています。ミニマルでメカニカルな外観から男子の物欲をそそるRollei 35 Sは、写真を観賞するまでに沢山の行為があり、まさに体験の宝庫です。とくに目測というデメリットが、実は直感や感性を養い良い写真につながるような気がします。デジタルカメラは、露出もフォーカスも自動で行われバックモニターでその場で写真を観賞することができるので、写真撮影の体験は一瞬です。そのため、SNSなどで共有することやアプリで加工するという新たな体験価値にシフトしました。Rollei 35Sは、純粋に写真を撮るという素敵な体験を提供してくれます。
メンテナンスさえちゃんとすれば、自分の寿命が尽きたとしてもこのカメラは元気に動くでしょう。これからも長く愛用していきたいと思います。
<モノクローム写真>
カメラ:Rollei 35S
フィルム:KODAK Tri-X
現像液:ILFORD ILFOTECH DD-X
停止液:水
定着液:TF-4 ARCHIVAL RAPID FIXER
水洗:水
水滴防止剤:ILFORD SIMPLECITY
スキャナー:Plustek OpticFilm 8200i SE
スキャンソフト:SilverFast SE Plus 9