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魔力の墓所と太陽の指輪が禁止されているブラジルの変種EDHフォーマットConquestについて
さて、先日(9月23日)EDHの禁止推奨リストに《魔力の墓所/Mana Crypt》《宝石の睡蓮/Jeweled Lotus》《波止場の恐喝者/Dockside Extortionist》《有翼の叡智、ナドゥ/Nadu, Winged Wisdom》が追加されました。
実際カードパワーが上昇する中で、爆発的なマナ加速が圧倒的なパワーを持つ場面が特にカジュアルな環境下で多かったのだと思います。
しかし、今回制限されたカードたち、これらだけがこの不均衡をもたらすのでしょうか?《太陽の指輪/Sol Ring》は?《魔力の櫃/Mana Vault》はどうでしょう?《太陽の指輪/Sol Ring》を引くことができる、できないは序盤の動きにおいて圧倒的な差を生みます、たまに引いて所謂ぶん回った、それは統率者委員会のいう通り、楽しい体験でしょう。しかし例えばアーティファクトサーチがあったら?問題は複雑になっていきます。
かつて私も自分のプレイヤーグループでにわかに軍拡の機運が高まった際に全員一定の金額を投資できるわけではない以上なにか指針になるルールが欲しいなと思った時、同様の疑問を抱き、たどり着いたのがこのフォーマットでした。
Conquestは主にブラジルでプレイされているEDHの変種フォーマットです。
EDHの変種フォーマットというと日本ではパイオニアEDHやヒュージリーダーズが人気を博しています、海外でも様々なフォーマットが日夜開発され、(Secret lair などに抗議を示すためだけに作られたCaptainsなる謎フォーマットもありました)…そして消えていっています。哀しいかなマイナーなフォーマットはプレイ機会が少なく、いずれ消えてしまう傾向にあります。そんな中Conquestは主にブラジルを中心に比較的継続してプレイヤーを確保しているという点でユニークなフォーマットといえるでしょう。禁止リストやルールの調整については公式Discord上でルール委員会がプレイヤーからのアンケートや大会結果をもとに決定しています。
このフォーマットでプレイを始めて2年ほどになるので、所感をまとめつつ紹介したいと思います。
①独自のバンリストについて
コンクエストでは全ての再録禁止カード、フェッチランド、その他強力なサーチ手段などが禁止されており、当初はこれを目的に自分たちのプレイグループにこのルールを持ち込みました。ある日だれかが急に魔力の墓所とフェッチフルセットを購入してきて、チキンレースが開始するのを恐れたのです。とは言えプレイしていくにしたがって、その他のルールによる調整や統率者としての指定の禁止といったコミュニティベースならではの段階的な措置に魅力を感じるようになりました。たまにこいつが釈放されていてほんとによいのか…?と感じることもありますがおおむね満足してプレイできています。Conquestの禁止リストがほかのハウスルールや提唱されたバンリストに比べて特別優れている!ということはないと感じますが、大事なのはある程度妥当かなと思えるリストを共有できることなのでその点では今のところ調整員会のフットワークや方針には満足できています。
パイオニアEDHとの違いは統率者向けにデザインされたカードを利用できることでしょうか。
②すべてのプレイヤーは30点のライフを持ち、統率者ダメージは12点となる
このルール変更については最初はそれほど大きく感じていなかったのですが、今はこのルールが一番気に入っています。10点分死に近いことはライフを用いたデッキに十分なリスクを負わせ、序盤の盤面上のやり取りがより意味を持つように感じられるようになりました。
これは好みの分かれるところかもしれませんが、戦闘による決着となることは元の統率者戦より多いです。そのため社交的な要素が強くなっていると感じます(悪く言うとキングメーカー問題に直面する機会が多いです)
統率者ダメージは思ったより重く、平均的な殴りジェネラルはプレイヤーを2,3回の攻撃で落としきることができるようになりました。盤面が膠着しやすい多人数戦において、特にサーチカードやマナ加速の禁止によるコンボ弱体がある中でゲームの長期化を防ぐためにこのライフにかかる調整はかなり良い調整だと思っています。
副産物として、ある程度のパワーをもつ統率者は最後まで脅威になるようになりました、よくならず者の道で人が死にます。
③それぞれのプレイヤーは80枚以上のシングルトンでデッキを構築する
Conquestではサーチカードが大きく制限されています、そのためデッキ枚数が減ることはサーチカードが減ったことによる再現性の低下による引きに左右されるゲーム展開をある程度補ってくれています。
という理屈よりも80枚はシャッフル楽という点で恩恵を感じることが多いです。あとMTG公式スリーブはちょうど80枚なので2つ買わなくてもデッキがきれいに収まります。
80枚以上というのがミソで、ヨーリオンの相棒指定が満たせたり、構築済みデッキから太陽の指輪を抜くだけで参戦できたりします。(80枚の恩恵は大きいので構築済みデッキから20枚シナジーの薄い順に抜くといい感じのデッキになります)
④プレイヤーはゲーム開始前に自分より先にターンを行うプレイヤーの数だけ占術ができる
先手有利是正策として途中で実験をへて実装されたルールです。ちなみにこのルールが正式実装された影響で魔力の櫃は禁止送りになりました。
これがあっても先手有利は大きいですが後手なら多少攻めたハンドでキープできるなど恩恵があります。
⑤全体的なプレイ感
大体のゲームにおいて1~2時間くらいがかかるため標準的なカジュアル統率者と同じくらいのゲーム速度でゲームが展開することが多いです(そもそもプレイベースがカジュアルよりなので本場のConquestプレイヤーはもっと早い可能性はあります)
装備品ジェネラルや違法改造車に轢かれると12点の統率者ダメージは即達成されてしまうため全体除去、単体除去を見る機会は通常の統率者戦より多いです。
戦闘による決着が多いため、だれを殴るかといった点で社交的な取引が発生する場合もおおいです、決着がそれに由来する場合も多いのでこれは好みの分かれるところかもしれません。12点はシステムジェネラルでも達成できなくはないので、暇があればパンチが飛んできます最近はバンブルフラワー夫人が宙に浮かびながら筋力で人をしばく様子がよく見られるようになりました。
スタートダッシュを決めたプレイヤーがタコ殴りにあうことも多いです、ライフ上限を下げたことで、突出したいわゆる魔王を咎めやすくなっていると思います。逆にそのまま逃げ切ったときの感動はひとしおです。
良くも悪くもうっかり人が死ぬためうっかり脱落したプレイヤーが暇になりやすいのは問題でしょうか。そういった意味でダスクモーンの魔王戦には期待をしています。(基本的にはEDHなのでプレインチェイスなどが絡めやすいのはConquestの良いところです)
フェッチランドがないため5色統率者が苦しそうな顔をしていることが多いです。これを色のパワーによる代償とみるかどうか意見が分かれるところだと思います。
終わりに
かつて統率者の公式ルールにはルール0という一文がありました。
Rule 0: These are the official rules of Commander. Local groups are welcome to modify them as they see fit. If you’d like an exception to these rules, especially in an unfamiliar environment, please get the approval of the other players before the game begins.
これは統率者戦の公式ルールですが 各地域のグループはこのルールを自由に変更して構いません。初めて会うプレイヤーとゲームするときなどは、ゲーム開始前に変更したルールの説明を行い承認を得てください。
統率者戦はカジュアルなゲームであるとよく言われるところですが、プレイヤー同士の納得と了解があればルール自体を変更することだってかまわないのです。ブラジルから輸入した謎ルールに手を出してくれた友人たちに感謝ですが2年間なんだかんだ楽しくプレイできています。今回の禁止改定で愛用のカードに使い道がなくなってしまった!というプレイヤーはどこかでそれが使えるレギュレーションに参加したり、あるいは作ったりしたっていいんだと思ってくれると嬉しいです。もし興味を持ったらブラジルと日本の局所でプレイされているConquestに手を出してみてください。Tchau!
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