桜花賞攻略2023
なんか今週の重賞確認したところ書かなきゃいけないの桜花賞しかなかったので特別編です。
ニュージーランドトロフィー
阪神牝馬ステークス
桜花賞のコースは阪神牝馬ステークスと同じなのでコース論はそっち見てください。
過去の桜花賞ラップ推移
2013 12.4-11.0-11.4-12.1-12.0-11.9-11.5-12.7 34.8-36.1 46.9-48.1
2014 11.9-10.5-11.4-11.5-11.7-11.4-12.8-12.1 33.8-36.3 45.3-48.0
2015 12.7-11.7-12.7-12.9-12.5-11.3-10.7-11.5 37.1-33.5 50.0-46.0
2016 12.4-10.7-11.7-12.3-12.0-11.4-11.3-11.6 34.8-34.3 47.1-46.3
2017 12.7-10.9-11.1-11.8-11.8-11.5-11.9-12.8 34.7-36.2 46.5-48.0稍
2018 12.3-10.7-11.5-12.1-12.1-11.5-11.3-11.6 34.5-34.4 46.6-46.5
2019 12.2-11.1-12.1-12.3-11.7-10.8-11.0-11.5 35.4-33.3 47.7-45.0
2020 12.4-11.2-11.3-11.6-11.5-11.7-12.6-13.8 34.9-38.1 46.5-49.6重
2021 12.1-10.8-11.2-11.1-11.6-11.2-11.2-11.9 34.1-34.3 45.5-45.9
2022 12.4-10.8-11.4-12.2-12.0-11.1-11.5-11.5 34.6-34.1 46.8-46.1
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レッツゴードンキが勝った15年のように道中で大きく緩む時もないわけではないが、基本的には中盤の緩みやすい区間においても12秒前半の比較的タイトな流れで推移し、時に11秒台中盤が出ることすらある。
頭数も多く、逃げの決まりづらいコースで、さらに各競走馬にとって一世一代の晴れ舞台ともなれば前のめりにもなりやすいというもので、それがただでさえ不利な逃げ馬にとってさらに厳しい環境を作り出しており、先のレッツゴードンキ以外では重馬場で異常なタフネスさを発揮したスマイルカナが20年にデアリングタクトの3着に残したくらい。
このスマイルカナという馬は、馬場コンディションが全く異なるとはいえ2走前のフェアリーSでほぼ同じくらいの推移の逃げを打って勝っている。即ちこの強度のレースを既に経験していたということになり、好走のための下地は十分に整っていたと解釈できる。
前哨戦で重要なのは、ただ上位に食い込んで出走資格を得たり賞金を稼ぐことだけでなく、本番につながるレースになるかどうかという部分である。
そこで今回は、桜花賞に臨む馬たちの前哨戦にあたる重要なレースを回顧し、どのくらいの強度になるのかを見ていきたい。
なお、阪神JF以降の重賞・L・OPが回顧対象。
レース別回顧
阪神JF
出走馬 ()は除外対象馬
1着 ⑨リバティアイランド
2着 ③シンリョクカ
3着 ⑬ドゥアイズ
(5着 ⑩ミシシッピテソーロ)
6着 ⑯ドゥーラ
(9着 ⑥ミスヨコハマ)
10着 ⑭ブトンドール
11着 ⑱ラヴェル
(12着 ⑤モリアーナ)
14着 ②キタウイング
17着 ⑮ムーンプローブ
ラップ
12.1-10.5-11.1-11.5-11.8-11.1-12.5-12.5 33.7-36.1 45.2-47.9
前半3Fは過去10年全ての桜花賞より速いというレース。5Fで見ると21年のほうが0.2秒だけ速いのだが、21年桜花賞及び同週開催の阪神牝馬Sは共に従来より1秒前後早い決着で、非常に高速馬場化していたことは考慮する必要がある。
また、序盤の時計が流れたのは1枠1番に世代屈指のスタート力を誇るサンティーテソーロがおり、このレースでも抜群のスタートからハナを取ってしまったことによる。
実際のレースではこの馬が直線を迎えるまで1馬身前後のリードを保っているため、後続の追走ラップは表示されているものより少し遅くなる。
この日の阪神芝が、インチーというほどではないにせよインをかなり有効に使える馬場であったことも注意。
イン有利な馬場で内から突っ込んできただけだから次走の評価を下げ、とまでは行かないものの、内よりも外から来た馬の方が評価を高くしたい。
中団外から早めに動いて前を捕まえに行った⑮ムーンプローブは、直線に向いた時点でもう手応えが残っていなかった感じ。
②キタウイングは内枠もあり終始インに張り付いての競馬。
この馬の場合、このレース以外は中団~後方からの競馬をしており、珍しく前目につけたこのレースは残り200m付近で大きく失速している。
そのため初めてのペースに対応しきれず沈んだ部分はあるだろう。
除外にならない馬のうち先行していた馬はこの2頭のみ(⑫リバーラは回避)。1着⑨リバティアイランド、2着③シンリョクカが同じくらいのところに内外並んで道中走っており、それより前にいた馬は逃げた①サンティーテソーロ(7着)と⑨③の2馬身くらい前にいた④アロマデローサ(4着)以外は大きく離された結果になっており、先行勢にとっては極めてタフなレースを強いられたことが伺える。
既に述べた通り勝ち馬と2着馬は道中は同じくらいのポジションで運び、直線でも内外大きく分かれての結果。
単純に0.4差という着差もそうだが、内が使いやすい馬場であったことも加味すると、相対的な距離ロスが大きくなった⑨リバティアイランドは③シンリョクカと比べてやはり見た目以上に能力差がある。
ただし⑨は直線を向いてから終始フリーであったのに対して、③は内から抜け出しを図るのに垂れてくる馬の間の狭いところを2回くらい通しており、その分スピードを乗せるのが遅れている。
そのため⑨>③と片づけてしまうのは単純明快だが、③も全く悪い内容ではないし、道中の追走に苦労していた様子から③は距離に余裕があるほうが力を発揮できるタイプと考えると、⑨とはオークスなら逆転の見込みもある。
3着⑬ドゥアイズはコーナリングでしれっと内に入れており、直線では③と同様馬群の間を縫うようにして抜け出してきた。
スタートで遅れてしまったことで初めての差し競馬に回る形になったが、このレースは①が抜群のスタートでハナを主張、それに続いて他の内枠勢ががっちりと隊列を固めてしまったことを考えると、五分で出ていても結局ある程度溜める形に収まっていそう。
実際に外枠から無理に前を主張した⑫⑮は共に大きく負けている。
図らずも溜める競馬を試せたのは良かったのではないだろうか。
6着⑯ドゥーラと11着⑱ラヴェルは共に出遅れたことで最後方からの競馬を余儀なくされているが、コーナーで内に入れた⑯と終始外を回した⑱の差がそのまま結果に出ている。
⑯は残り200からの伸びがいいので、それまで札幌で2回勝ってきた馬で次走チューリップ賞では大敗していることを差し引いてもなお急坂コースは得意だと言えるだろう。なお最終直線で3着⑬ドゥーラに内から寄られて進路が狭くなる不利を受けている(⑬鞍上吉田隼騎手に過怠金3万)。
⑱に関してはレース後に坂井騎手も言っているように力んでいた部分は確かに見られ、いくら外を終始回したからとは言ってもまともに走っていれば同じく外を回した⑩エイムインライフ(8着)以下の上がりしか出せないということはないはず。
10着の⑭ブトンドールも外を回した追い込み馬。外枠勢の中では無難なスタートも位置を下げて直線に託した形だったが、直線では案外。
運びとしては追い込み勢の中では悪くなく、弾けてもよさそうな序中盤の運びだったことを考えると、距離が1600mでは長いか、或いは出せる上がりの上限が低いタイプかもしれない。
シンザン記念
出走馬
1着 ②ライトクオンタム
ラップ
12.5-11.0-11.3-11.5-11.8-11.5-11.9-12.2 34.8-35.6 46.3-47.4
ディープインパクトのラストクロップの一頭である②ライトクオンタムが牡馬を蹴散らしたレース、といえば聞こえはいいが実際のところ7頭立てのレース。
レース質としては全体的に緩みの少ない展開にはなっていたため、隊列が7頭立てにしては縦長になったものの、②の追走ペースも1000m59.1と決して遅くはない。この世代の阪神JFと比べると見劣りするのは事実だが、例年の桜花賞であれば問題なく好位につけることはできているくらいのペース。
最後の直線では誰もいない外、コースの真ん中あたりまで出していき、伸び伸びと走っていた。
レースぶりにまだ余裕はありそうな走りではあったものの、レース選択は完全に裏街道のそれ。
同じくシンザン記念→桜花賞ローテで勝った馬には18年のアーモンドアイがいるが、あちらは新馬戦で17頭、勝ちあがりを決めた未勝利戦でも15頭と多頭数のレースを経験し、また2018年のシンザン記念は函館2歳S2勝ち・京王杯2歳S2着のカシアスや札幌2歳S2着のファストアプローチらを完封している。
それに対してこちらは新馬戦は11頭、シンザン記念も7頭と小頭数のレース経験しかなく、2レース共戦った馬に強敵と呼べる存在は皆無(新馬戦2着の馬は勝ち上がったが、チューリップ賞で12着の大敗)で、アーモンドアイとは事情がまるで異なる。
色々な意味で経験不足と言わざるを得ない。
フェアリーS
出走馬 ()は除外対象馬
1着 ⑭キタウイング
(2着 ⑩メイクアスナッチ)
(7着 ⑥ミシシッピテソーロ)
ラップ
12.1-10.8-11.6-11.8-11.9-12.0-11.8-12.3 34.5-36.1 46.3-48.0
序盤にかなり流れ、前傾気味の決着。同じような推移をした年には2017年がある。
当日の中山は連続開催の途中とはいえCコース替わり4日目であり、また芝レースが少なくなる時期であるため消耗が大きくなく、内も外も十分に使える馬場。
また、このレースは全体的に前のめりな推移になった中多くの馬が前の方でひと塊になって進んでいったのが特徴的であり、これらの多くは非常に苦しい経験を積んでいるのだが、残念ながら勝ち馬・2着馬共にその集団には加わっていない。
勝った⑭キタウイングは前走阪神JFでこのレベルのハイペースなレースで前受けしていた経験が活きた形。
中盤までは離れた後方2番手からの追走で、3コーナーあたりからインを通していき、最後の直線では物凄く狭いラチと馬の間の1頭分しかないようなスペースから突っ込んできた。
前が沈みやすい展開になったのは事実ではあるが、馬群に怯まず脚を伸ばせる精神面の強さは魅力。
2着の⑩メイクアスナッチは⑭よりは2馬身くらい前の位置で我慢の競馬、コーナーでは馬群を避けて外に持ち出しよく伸びたがわずかに及ばず。
⑭の上がり3F34.9に対して⑩は上がり3F35.3としているが、コーナリングに余裕がある中山外回りでインを攻めた分と外に出した分の差がこの0.4秒に詰まっている感じで、この2頭の脚色そのものに0.4秒も差があったとは思えない。
個人的には⑭も⑩もそれぞれ違った良さが出ていて評価できる。
なお、このレースで一番強い競馬をしたのは3着の①スピードオブライトなのだが、桜花賞には賞金が足りず登録もしていないので考慮しない。
紅梅S
出走馬 ()は除外対象
(1着 ④ダルエスサラーム)
ラップ
12.3-11.1-11.2-11.7-11.6-11.7-12.2 34.6-35.5
1400mのレースで、中京芝が重から回復中の稍重だったことは考慮する必要がある。
具体的には、この日の5R未勝利戦がかなり極端な上がり3F勝負に寄ったレースだったが勝ったシャザーンの上がりは34.6まで、6Rも概ね同じような質のレースで、勝ったマスクトディーヴァの上がりは中団追走から34.4まで。
あまり上がりを出せる馬場状態ではなかったということ。
そういう馬場状態の中で比較的前目につけていったこともあり、④ダルエスサラームの上がり時計が物足りないこと自体は情状酌量の余地はある。
となればやはり問題は完璧なレース運びだった割に2着に半馬身差まで詰められていることと、その2着馬がチューリップ賞では大敗、続戦の1勝クラスでも勝ち切れず3着までと相手関係に恵まれただけではないかという部分。
また、小頭数のレースらしく変なプレッシャーを受けたり馬群に揉まれたりといった、先々を見据えた「強度の高いレース」をこの段階まで一切踏めていないのも気がかり。
せめてペースがもっとハイになってくれればよかったのだが。
エルフィンS
出走馬 ()は除外対象
(1着 ⑤ユリーシャ)
2着 ⑪コナコースト
3着 ⑧シングザットソング
ラップ
12.4-11.6-11.6-12.1-12.1-11.4-11.1-11.9 35.6-34.4 47.7-46.5
何も知らずに除外対象馬確認してたまげた。そうはならんやろ。
ここに記載されているラップは嘘偽りない嘘偽りのもの。
矛盾しているようだが、逃げて勝った⑤ユリーシャと2番手以下の馬では全く違うレース質になっており、1レースの中で2つのレースが共存している。
最近の例でいうと22年天皇賞(秋)が分かりやすく、逃げたパンサラッサと2番手バビット以下では全くレース質が異なっていたのと同じ。
ちゃんと計測していない(しようとしたがカメラワーク等の問題で断念した)ので厳密ではないが、2番手で追走していた⑨マルクパージュ(8着)の位置で0.5秒くらい追走が遅れている。
このレースの場合さらに3番手も少し離れて控えているので、3番手以下の馬群の前半4Fは48.5くらい、前半5Fは60.5くらいになると思われる。
となれば、最後方から脚を伸ばして3着に入った⑧シングザットソングの追走ペースは61秒台ということになるが、実際⑧の走破タイムである1分34秒7から上がり3Fの33.2を引くと61.5になり、これが追走ペースと見て概ね差し支えないだろう。
この日の他の中京芝のレースはタフな2200m・道中ペースで11秒0付近が連発して上がり勝負にならなかった1400m・前半3Fだけ異様に遅く4F目から12.2を下回らなかったロングスパート気味な2000mで上がりを求められないレース質のものばかりだったが、そのすべてで最速34秒前半が出ており、瞬発力を増長する馬場であった可能性は高い。加えて脚をじっくり溜めて末脚を爆発させることができたのであれば、33.2という上がり時計そのものに特別な意味はない。
2着の⑪コナコーストは4コーナーから直線を迎える直前でスパートをかけ始めたが、直線の坂を上るあたりまで伸びが苦しく、最後の最後にやっと伸びてきて2着を確保といった内容。
途中まで伸びなかったのは若干外に行きながら走っていた分のロスがあったからかもしれないが、或いは坂に課題を残している(残していた)馬かもしれない。
これを書いている段階ではまだチューリップ賞を何も見ていないので、そちらの方を踏まえて再度検討。
3着の⑧シングザットソングはある意味衝撃的なレースで、全くスタートダッシュが決まらないばかりか左手綱をかなり緩めているのに右に大きく逃避してしまうという最悪の序盤。
これでは序中盤では全くアクションを起こすこともできず、馬群の最後方から追走、コーナリングも若干怪しいところがあった。
最後の直線でも前肢の変換をしたところ内に刺さりそうになって変換した脚を戻したりとちぐはぐな競馬をしながらも、最後は外から伸びてきて3着に飛び込んできている。
びっくりするくらい完成度は低く粗削りではあるものの、うまく育てば強くなりそうな原石。
このレースに関しては何と言っても勝った⑤ユリーシャが自分で勝手に強度の高いペースを刻んで完封勝ちしているので一番強い競馬をしているのは疑いようがないのだが、リステッド競走を勝って安心していたら賞金不足といわれてしまい桜花賞の切符は配られなかった。
出走していれば桜花賞のペースそのものに干渉する存在であり、また時計を出しやすい環境下で決して逃げ有利ではないコースでの逃げ切りという面でも台風の目になりうる存在でもあったため、彼女が出走できないのは非常に残念である。
クイーンC
出走馬 ()は除外対象馬
1着 ⑨ハーパー
2着 ⑦ドゥアイズ
(3着 ③モリアーナ)
(15着 ⑯ミシシッピテソーロ)
ラップ
12.2-10.9-11.4-11.7-11.8-11.3-11.6-12.2 34.5-35.1 46.2-46.9 稍
稍重馬場と発表されているが、普通の稍重馬場とは少し違い、この時は降雪によるもの。レース映像では序盤の一番下のところに積雪の跡が残っているのが確認できる。
そこから読み取れる情報としては、メインレースが行われた午後3時過ぎの時点でも積雪が多く残っていることから気温が低く、またそのことによって本来東京競馬場で高い性能を誇っている水はけ能力が十全の力を発揮できなかった可能性がある。
とはいえこのレースの時計は全体的に速く、1着⑨ハーパーの走破タイムである1分33秒1は過去10年でアドマイヤミヤビが勝った17年に続くタイム。なお17年の時は逃げた4着馬レーヌミノルが桜花賞を勝ち、このレースで2着だったアエロリットは桜花賞5着の後NHKマイルCを勝っている。
もしかしたら雪は雨ほど芝の時計にそこまで関与しないのかもしれない。
またこのレースは、逃げた⑧ニシノカシミヤに対して他の馬も積極的なアプローチを行っており、34.5-46.2-58.0のペースで逃げても後ろを全く振り切れていない。
さらに言えば、馬群自体はやや縦長になったものの、追い込み勢最先着の③モリアーナがクビ差ハナ差で僅かに及ばなかった以外ははっきりと差が出てしまっている感じ。
勝った⑨ハーパーは58.6-34.5の追走-上がり。直線を向いてから馬群を捌き切るのに少し時間を要した分開いてからの伸びが鋭く、このレースでは頭一つ抜けた結果。
阪神JFに出走していない馬の中ではかなり高い強度の追走ができており、また関東遠征という条件下でー12kgとしながらもレースでは結果を出したので、関西に帰ってきての上積みも見込めそう。
レース上がりが11.3-11.6-12.2と徐々に遅くなっていることが追走ペースの苦しいレースであったことを物語っているが、新馬・未勝利戦の2戦とも上がり3F3位以内に入っていないことから、上がり速度に限界がある代わりにタフな流れでこそ活きるタイプで得意とするレース質であったのだろう。
2着の⑦ドゥアイズは勝った⑨よりもさらに前での競馬。
スタート直後は5,6番手くらいにいたのを、前の位置を確保するために追走ペースを上げているので、かなり厳しい境地に自ら飛び込んでいっている。
位置を上げた後コーナーではじっと内で我慢、直線では外に進路を求めて無理やりこじ開け(このことで鞍上吉田隼騎手に過怠金10万)迫ったものの僅差の2着。
この馬以外の先行勢は全滅する流れで、結果的により厳しい条件を自らに課したにもかかわらず2着という結果は立派で、このレースで一番強い競馬をしたといってしまってよいが、懸念としては阪神JFでの出遅れが偶然だと断言できるくらいのスタートではなく五分くらいだったところか。
チューリップ賞
出走馬 ()は除外対象馬
1着 ⑨モズメイメイ
2着 ⑬コナコースト
3着 ⑰ペリファーニア
(4着 ③ルミノメテオール)
(6着 ⑤ダルエスサラーム)
7着 ②キタウイング
15着 ⑧ドゥーラ
ラップ
12.5-11.0-11.7-12.3-12.4-11.3-10.9-11.9 35.2-34.1 47.5-46.5
ラップ的には分かりやすく中盤に溜めを作った瞬発力勝負だが、このレースは最初から前哨戦という位置づけであるからか21年以外は全て同系ラップを刻んでいる。
最近はチューリップ賞よりも間隔を空けて臨む有力馬も多く、チューリップ賞からの連戦で桜花賞を勝利したのは16年ジュエラーが最後。
馬券内は昨年のウォーターナビレラがチューリップ賞5着→桜花賞2着などあり、必ずしも前哨戦としての価値が失墜したわけではないが、それでも昔より絶対的な存在でもなくなっている。
走破時計は過去10年で重馬場開催の15年を除くと3番目の遅さで、19年以来の1分34秒台。
過去1分34秒台で決着した時はチューリップ賞から桜花賞で好走した馬を出しているが、14年に勝ったハープスターと19年に2着のシゲルピンクダイヤはいずれもスローペースの中追いこんでのもの。
今年はテン3Fこそ極端に遅いというわけではないが、そこからの緩み幅が大きいためにマイル戦としてはかなりゆったりとした流れになった。
スローペースの中でもかなり遅くなった原因は、勝った⑨モズメイメイが好スタートからハナを叩き、ペースを掌握してしまったことによる。
この馬はチューリップ賞で3勝目をマークしているが、3着のつわぶき賞も含めて全てこのチューリップ賞とほぼ同系のラップでしか走っておらず、また完全に自分のペースでの競馬に落とし込み、さらにこの日の馬場でよく伸びるポジションだった内ラチ1~2頭分くらいのところを終始走り続けたにしては、上がり速度があまりにも物足りない。
馬群がそこまで縦長になったわけでもなくタイトな展開になったわけでもないのに、パフォーマンスとしては特筆すべきところがスタートのうまさくらいしかなく、またこれを差せなかった他の馬にも同時に疑問符がついてしまう。
2着の⑬コナコーストは一旦2番手くらいまでつけるも、外から⑭ルカン(5着)が競ってきたのを見て引く競馬、結果先行馬群の少し後ろに落ち着いた。
コーナーから直線を向く直前から追い出しを始めたが中々伸びてこず、最後の急坂を上り終えたあたりから脚色がよくなり、最後は⑨とハナ差で2着。
エルフィンSでも同じような競馬をしており、結局のところズブさという課題を残している馬という感じ。
となればイメージ的にはディープボンドのような前々につけて早めにすり潰しに行くくらいの競馬が望ましいが、この馬のもう一つの懸念点はこれまでスローペース追走しか経験がないところ。
3着の⑰ペリファーニアはほぼフルゲートの阪神芝1600mで、しかもやや出遅れたスタートからよく巻き返したと言える。
道中はあまり折り合えている感じではなく、スタートから3コーナーあたりまでを使って外からじわじわと前に出ていき、結果最後の直線では前を何にも塞がれないフリーな位置で迎えることはできたが、そこからの伸びが今一つ欠けていた。
モズメイメイのところでも書いた通り、さほど流れてもいなかったペースの割に先行馬群の誰も⑨を抜かせられなかったレースで、根本的にレベルの低い馬が集まってしまったか、或いは瞬発力に欠ける馬が先行馬群に集結してしまったレースと考えるかの二択。
前者で捉えるのであれば⑨⑬⑰は評価する必要はないし、後者で捉えてかつ桜花賞で流れる予想をするのであれば⑨⑰を買う理由もできる。
7着の②キタウイングと15着大敗の⑧ドゥーラはこの展開で後方から進めては出番がなくても致し方なしという内容。
②はフェアリーSのパフォーマンスを思えば案外だが、フェアリーSは内ラチぎりぎりを目一杯使ってのワープに近い騎乗ができたのに対して今回は馬群が密集し道中での仕掛けを打ちづらい展開になってしまったことが苦しかった。
メンバー内上位の上がりは使えており地力負けではないものの、阪神芝1600mという癖の少ない舞台で勝ち負けをするには騎乗にもう一工夫か能力或いは展開にもうひと押しが必要。
⑧ドゥーラは鞍上戸崎騎手の判断が悉く裏目。スタートは決して悪くなかったものの控えて②と同じくらいの位置からの競馬で、直線で一度は外に出そうとするも一転内に切り込みを図るなどふらふら。結局②とそのすぐ外にいた①アンリーロード(12着)の間を割ろうと突っ込むも失敗に終わり、この2頭の間がより狭くなったことでスペースを失い失速。
これまで4戦全て上がり最速をマークしていたが、阪神JFを除けば全て上がりをマークしづらい札幌でのレースで、ある意味純粋な上がり勝負のレースをしたのが初めてという馬。
その戦い方では通用しない可能性が高いということが分かったのは収穫といえる。
フィリーズレビュー
出走馬
1着 ⑫シングザットソング
2着 ⑮ムーンプローブ
3着 ⑨ジューンオレンジ
6着 ⑬ブトンドール
ラップ
11.8-10.3-11.1-11.7-12.0-11.8-12.0 33.2-35.8
桜花賞への前哨戦の一つだが、1600mではない競走は珍しく、フィリーズレビュー以外では紅梅Sくらいしかない。1800mのフラワーCは時期的に桜花賞へ向かわないことのほうが多いため考慮しない。
これが何を意味しているのかというと、明らかにマイラーではなくスプリンターと判断されている馬も1400mならパスできる可能性があるため、ここには多くのスプリンター色が強い馬が出走してくる。今年は久々にチューリップ賞が16頭以上の出走となったが、フィリーズレビューでは頻繁に18頭フルゲートの開催になることがそれを物語っている。
それの何が問題かというと、ペースを上げるだけ上げて力尽きる馬が多くなってしまうこと。
元々阪神芝1400mというコースは向こう正面の長さが序盤のペースアップを誘発し、それに乗っかった先行勢が潰れやすいコースではあるのだが、フィリーズレビューにおいてはその先行勢にスピード特化型のスプリンターが多く入ってくるために、序盤の展開を完全にスプリントにしてしまう。
今年はとりわけ極端で、テン3F33.2という時計は過去10年最速。この時先行争いをしていた⑧エコロアイ⑩トラベログ④ジョリダムなどは直線を向いてすぐに脱落、⑥リバーラは残り200m辺りまで頑張っていたが急坂で力を使い果たして後続に呑み込まれた。
その先行馬群にいた馬で最も頑張ったのが、今回の勝ち馬でもある⑫シングザットソングである。
⑫シングザットソングはスタートをうまく出たので一度は前を主張しようとしたが、内枠の馬が多く競ってきたため引いて⑧④⑥⑩の後ろのポジションを⑦ポリーフォリア(7着)などと共に追走。4コーナー付近で外に出しながら上がっていき、残り200mあたりで粘る⑥リバーラを捉え先頭に立つと、迫る後続をクビ差振り切った。
概算での追走ペースが4F45.4なので、単に追走という観点だけで見るならば阪神JFの2番手追走馬くらいのペースに匹敵することになり、極めて強度の高い走りをしている。
エルフィンSまでは不器用で粗削りという言葉が走っているような存在だったのが、ここにきてまともにレースへ参加できるようになった。それだけで喜ぶのは何かが間違っているような気もするが、この馬の一番の問題は最初の1Fで最悪の出目をしょっちゅう引くことだったので、それが起こらない可能性があると判明しただけでも大きい。
2着の⑮ムーンプローブは阪神JFから一変、もしくは距離が短くなった分余裕が出たような感じ。
スタートは良かったが無理をせずに控えて外の中団待機、4コーナーから直線に向くところで外に持ち出した際すぐ外にいた⑯マルモリディライト(13着)とやりあい、そこからギアが入り外を突いてよく伸びクビ差2着。
レース全体の流れ自体は阪神JFとそう変わらないというのは既に書いた通りだが、この馬は前走よりも位置を後ろにしての競馬で、初めてこのポジショニングで結果を残せた。
ただレース後コメントで鞍上の北村友騎手が「競馬に来るとピリピリしていた」と言っていることから精神面に課題は残していそうで、また阪神JF以前の2勝のラップが上がり2F-1F間で共に1秒以上落ちていることから、やはり本質的にマイルが長い可能性が高い。
能力自体は決して低くなく、より安定して折り合いがつくようになれば今回取りこぼした重賞にも手が届きそうだが、桜花賞でそれができるかと言われると色々と克服しなければいけないことが多すぎる。
3着の⑨ジューンオレンジは、今回掲示板に入った馬の中では1列も2列も後ろから進めた馬。
スタートの時点でかなり立ち遅れ後方からも、立て直して中団馬群の一番後ろまで取りつく形での運び。馬群は縦長になったが、前がかなり飛ばしていたレースだったので、結果論で言ってしまえばこの位置からの競馬でも十分間に合ったということになる。
ただし阪神内回りのコースは物理的に追い込みが届きづらい特徴を有しており、それに加えてこの馬の場合直線を向いてしばらくは前に壁ができていたため、追い出せた時間が他の馬と比べても短い。
その中で使った脚の速さはピカイチで、「まともに走れば」余裕で勝っていたというロマンはある。
尤も、その「まともに走れば」という枕詞を外せるようになる可能性はそこまで高くない。というのも、この馬は松山騎手が乗って2着の未勝利戦以外全て出遅れており、それもちょっとやそっとのものではなくかなり大がかりな出遅れをしている。
現在は富田暁騎手が3戦連続で手綱を取り桜花賞でも同騎手で出走予定で、鞍上を固定することでどうにかゲート難を克服しようとする意思は見えるが、まるで改善の兆しが見えてこないあたり馬の成長待ちという部分がかなり大きい。ましてやこの馬はG1阪神JFを通っておらず、大観衆の中での競馬が初めてとなるので、少なくとも桜花賞の時点ではこのゲート難は克服不可能という前提で考えた方が良いだろう。
6着に敗れた1番人気の⑬ブトンドールは、スタート五分から下げ、⑮の1馬身くらい後ろの内での競馬で位置取り的には決して悪くないのだが、直線でそもそもあまり追えず。
直線半ばで並んで抜け出された⑨と比較するとより顕著で、⑨の富田騎手が進路を見つけて目一杯追えているのに対して、⑬の鞍上鮫島克騎手はしっかりと追えていない。
これはパトロールビデオを見るかレース後コメントを振り返ると理由が出ているが、要は直線を向いてから内に終始刺さるような状態であり、その修正で手一杯になってしまい勝つための競馬ができなかった。途中で馬に対して左側に身体全体を寄せているシーンも見られることから、涙ぐましい努力がうかがえる。
正直参考外でいいレース内容ではあるものの、元々距離に課題がある馬ということを考えると、本番でもどうか。
アネモネS
出走馬 ()は除外対象馬
1着 ⑤トーセンローリエ
2着 ⑯コンクシェル
(10着 ⑦ミスヨコハマ)
ラップ
12.3-11.0-11.4-11.9-12.1-11.9-11.2-12.0 34.7-35.1 46.6-47.2
比較対象としては時期も馬場も違うのでちょっとおかしいのだが、一応参考までにフェアリーSのタイムが1分34秒3、アネモネSのタイムが1分33秒8。
展開としてはフェアリーSのそれと比べてわずかに遅い程度ではあるが、根本的に冬開催の中山と比べて春開催の中山は時計の出る馬場になりやすく今年もそのパターンだったため、0.5秒差があるとは言えど決着は寧ろ遅いくらい。
ただし馬場状態が綺麗で良好だったわけではないようで、加えて⑤トーセンローリエと①スピードオブライト以外は差し・追い込み馬が上位に目立っていることから、必ずしも前が楽なレースだったというわけでもない。
勝った⑤トーセンローリエは内目枠の利を活かして先団につけ、そのまま押し切るという中山芝1600mの内枠での教科書のようなレース。
①スピードオブライト(4着)が好スタート好ダッシュで早々にハナを主張する中、そのすぐ外から押して押して2番手を確保。そのまま①の半馬身~1馬身後ろで鈴をつけながら追走し、じりじりと伸びて残り200mあたりで捉えると後続を辛くも凌ぎ切った。
レース映像だけ見ると強さを感じず物凄く地味ではあるが、上に書いた通りこのレースの本質が差しに展開の向いたレースであったと考えると話は変わってくる。
鞍上の横山和騎手が「切れるタイプではない」馬ということを理解していたからこそ流れるペースになることも厭わず前々のポジションを取りに行っており、事実その展開で勝っていることから、最低限の基礎スピードは保有しているが本質的にタイトな展開での粘りこみに特化した馬と捉えてしまって何ら問題ない。
桜花賞に向くかどうかは展開次第としか言えない。基本的に流れても上がり33秒台を要するレースになることが多く、末脚能力に乏しいこの馬は基本的に不利。ただし雨が降れば上がり勝負ではないタフなレースになる可能性がぐっと高まる。
恵みの雨が落ちるようなら有力候補になりうるのではないだろうか。
2着の⑯コンクシェルは今までのレースで見せたことのないような強烈な末脚で追いこんできた馬。
今までは一定の位置を取っていたのを、今回は中山芝1600mの大外枠ということもあり無理をせず後方待機。
残り600mを切ったあたりから動かし始めたもののあまり伸びず、直線を向く直前では前の⑨シルバージュエリー(6着)が邪魔になるような仕草もしており、直線を向いてからの追い出しがやや遅れてしまっている。
それでも急坂を上ってからの伸びが凄まじく、馬群の大外から前を一気に呑み込もうとしたが先頭には僅かに及ばなかった。
位置取りを後ろにしたこともそうだが、初ブリンカーでまさに一変という感じ。
ただズブさはあり、加えて今回のレースが差し優位な展開であったとするのであれば、能力の高さの片鱗は見せたものの本番ではやはり足りない感じがする。
フラワーC
出走馬
1着 ④エミュー
ラップ
12.8-11.9-12.9-12.6-12.4-12.9-12.7-12.4-12.6 37.6-37.7 50.2-50.6不
これまで見てきたどのレースよりも前提条件が特殊で、まずレースそのものの条件として桜花賞までの間隔が短くなりすぎることからここに出走した馬は賞金加算できても桜花賞へは向かわずオークスやフローラSに向かうことが多い(桜花賞へ出走する馬が全くいないわけでもないが)。また今年は不良馬場での開催となったため、出走馬へのダメージも勘案するのであれば桜花賞へは向かわないのではないかと思われたが、勝ち馬④エミューは出走を表明している。
④エミューは出が良くなかったこともあってかスタートしてすぐに位置を下げ単騎で最後方追走。1コーナーに入るところでは内目にいたが2コーナーあたりからもう外に出しており、この時点で既に腹を決めていた感。
不良馬場で1000m62.5が速いかどうかは何とも言い難い部分があるが、良馬場でも61秒後半くらいの追走ラップが時たま出現することを考えると決して前の流れは遅くなく、それはこの馬にとって味方してくれた。なおこの馬自身の追走は何度計測しても先頭が残り5F棒を通過してから2秒以上遅れて通過しており、1000m64秒台後半で通過している。
3コーナーから4コーナーにかけては極力馬場の悪いところを通らないように外を回しており、直線では大外に向いて勝負。十分溜まった脚を存分に開放して見事な追い込みを決めた。
とこう書くと非常に強そうな競馬をしたように見えるが、実際のところここに出走していたメンバーは④以外は全て1勝馬。つまり少し捻くれた見方をすれば、格下相手に見た目派手な競馬をしただけとも捉えられる。
菜の花賞で先着を許したトラベログはフィリーズレビューで、アリスヴェリテはチューリップ賞でそれぞれ負けており、ここで勝ったところで賞金を積んだ以外の意義を一切持たない。
総評・主観
やはり高く評価したいのはG1らしく流れた阪神JF、或いはクイーンCも面白い。
また近年あまり前哨戦としての意義を果たせていないフィリーズレビュー組も骨っぽく、本番と同条件開催のチューリップ賞組と比べるとフィリーズレビューの方に重きを置きたいと個人的には思える。
全18頭の能力(桜花賞適正)格付けを個人的に行うとしたらこんな感じ。
ここは何を評価するのか、どこに重きを置くかでかなり変化するところではあるので、「こいつはこういう風に評価するんだな」くらいにとどめておくのが良いかと。
なお、同レベル帯にいるからといって左にいる方が上ということではないので注意されたし。
S ドゥアイズ リバティアイランド
A+ ハーパー
A キタウイング シングザットソング シンリョクカ
B トーセンローリエ
C+ ラヴェル
C コナコースト ジューンオレンジ ドゥーラ ペリファーニア ムーンプローブ モズメイメイ ライトクオンタム
D エミュー コンクシェル ブトンドール