賢い買い物ができない
精神衛生を保つためには、思考と行動のバランスが大事になる気がする。
思考に寄りすぎると、病みのモードに入る。
私のような思考に寄りがちな人は、それなりに外に出て、人と話して、
「考えているより現実は何とかなる」ことを繰り返し思い出させないといけないと思う。
行動するというのは体力がいることで、万年文化部だったへなちょこにとっては難しい。
そんなことを考えている時、ふと、比較的行動に移しやすいのが買い物なのかなと思った。
社会人になってからというものの、週末に何かしらの買い物をすることがストレス発散の手段になっている。
自分の稼いだお金で生計を立てて、その上で暮らしを豊かにする買い物ができるのが嬉しくて、社会人って最高だなと思う。
私は無駄遣いをするほうではなくて、むしろケチな性格がゆえに、
欲しいものができたら、できるだけお得に手に入れたい。
「いつも使ってるクレジットカードのポイントがたまるのはAとB、
今日行きたいお店はAにはあるけどBにはない…
え、来週からCでポイントバックキャンペーンが始まるの?じゃあ来週まで待ってからにするか…ああでも売切れたらショックだな…。」
色々考えている間に日は暮れるし、脳みそは疲労困憊だ。
行きついたカフェで甘い飲み物を吸引しつつ、有り余った購買意欲をおなかの中にためたまま、ぐるぐるぐる。
食材を買う時も、あーお肉買う時はあっちのお店の方が安いんだけどな!でも仕事で疲れてそっちまで歩くの無理…と考えながら、買い物かごを見つめてため息ひとつ。
こんなの、まるで「お得の奴隷」だ。コスパも大事だけど、タイパの概念もそろそろ学んだ方が良い。
今日から年に4回の大セール。よーし、欲しいもの探すぞ~!(←?)
え、これすごいかわいい。どうしよう、似合うかな?正直似合わない気がするけど、なんかどうにかしたらいけるんじゃないかな。えーい、勢いでいっちゃえ!
…うーん、全くダメじゃないけど、思ってたのとは違うなあ。
タッチアップするべきってわかってるのに。楽しみにしてた分、がっかりする気持ちも倍増して、なんか泣きたくなってきた。
欲しいと思うもの、だいたいSNS経由で知って、何度も目にするうちに欲しくなってくる。たぶん、誰かの思惑にまんまとハマっている。
こんなの、「SNSの奴隷」だ。自分のセンスで好きなものを見極めるおしゃれな人になりたかったな。
厄介なのは、購買欲求というのは限りなく一時的な欲望に過ぎなくて、手に入れたその時がピークなのだ。
次の週にはまた別の欲しいものがあって、先週買いたくて血眼になっていたそれは、家の棚の上で寂しそうにこちらを見つめている。
そのくせ、ずっと手に入れたくて恋焦がれているものにはどこまでも奥手になりがちで
「いや…でも…」と遠慮して絶好の購入チャンスを逃すこともしばしばである。
賢く、素敵に生きたくて必死なのに、実際の行動はすごくアホくさい。
何かを買う時、私はそれに付属している「なりたい自分のイメージ」も一緒に買っているのかもれない。
この本で一生懸命勉強して、言語が理解できるようになる自分。
ぷるんとした唇になって、可愛くなる自分。
脚がきれいに見えるワンピースで、かっこよく街を歩く自分。
でも、だいたい、めんどくさくなってタンスの肥やしになったり、
肌に合わなくて使えなくなったり、
自分の身の丈に合わなくて恥ずかしくなったり、
「良い買い物」ができる確率は高くない。
その度にがっかりして、何も変わらない自分の姿に悲しみを覚える。
古本屋さんで、「やりたいことの見つけ方」というワードが目に入った。
うわー、今の私にドンピシャすぎる。悔しい。
結構世の中的には普遍的な悩みってことですね。悔しい。
これを売りに出した人も、やりたいことが見つからなくて、見つけられなくて、
ヒントが欲しくてこの本を手に取ったんだろう。
それで、ヒントは見つかったのかな。
見つかったから手放したのか、結局わからなくて、持っていてもしょうがないから手放したのか。
私は、どっちの人になるんだろう。
ヒントを見つけられた自分を想像しながら、私はレジに向かった。