見出し画像

あの日、オーバカナルで

「どこに住んでるの?」知り合って間もない友人にそう聞かれたとき、「東京」と答えるような人が私は好きです。もちろんその時会っている場所は都内のオーバカナル。お相手は保守的なカプチーノで私はショコラショー。
エナメルのダブルストラップの5cmヒールがお気に入りのご様子。だってしきりに私の脚ばかり見るんだから。

頼み過ぎたフレンチフライを無造作に手に取り、ショコラショーに漬けて頬張る私。そんな仕草も微笑ましいという天使の顔で見るのはやめて?だって私たち友だちでしょう。
ちょっと鋭い目つきで見てやると彼はすこし哀しそうな顔。まるで子犬だ!いかにも鳴き出しそう。

「君はいろんな顔をもってるね」彼はふとそう呟いた。怒った顔も泣いた顔も可愛いだろうなと言った。あっそ、といった感じの退屈さをもってチョコレートケーキを頬張る私。
チョコレートばかり求めるのはきっと欲求不満なのだろう。だから文章を書いてみるのだ。
きっと彼は言うだろう。
「君の文章もきっと素敵だろうな」