【短編】 終末キノコ
「早くしろ。シャトルが出てしまうよ。この便を逃したらたぶん、もう地球を脱出するのは不可能になるぞ」
医師である私は職場の上司、元同僚などのコネを最大限使って脱出シャトルのチケットを入手し、家族を連れてネシキ宇宙空港に向かっている。
「お父さん、あの飛行機に乗るの?」
「そうだよ。あれで、火星の基地へ行くんだよ」
ほんの数年前にはまさかこんな事になるなんて、思いもしなかった。
ある超大国の天文研究機関が地球に接近する小惑星の存在を確認したのが4年前。
綿密な計算・分析の結果、地球への衝突が不可避であることが分かったのがその2年後。というわけだ。
私は人脈の多い仕事柄か、比較的早くその情報を得ることが出来、こうして脱出シャトルのチケットにありつけた。おそらく全人類の3ぶんの2はシャトルに乗ることも出来ず、助からないだろう。
元々人類の生存戦略として「火星移住計画」はあったが、今回の件でそれが加速度的に進められ、世界はパニック状態だ。
小惑星が発見されるのと同じ頃、一方でもう一つの発見が植物学会を驚かせる。
「catastrophe mushroom」
=終末キノコ、と名付けられたそのキノコは、
小惑星騒ぎを尻目に、緯度の高い地域の山間部で次々と発見された。
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