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【短編】 サバイバルカントリー倶楽部
友人の田中から招待され、私は「サバイバルカントリー倶楽部」へ車を走らせていた。
クラブハウスに到着すると、田中が満面の笑みで迎えてくれた。「よく来たな!今日は特別な体験が待ってるぞ」と彼は興奮気味に言った。
私は田中の熱量に戸惑いながらも、ゴルフの楽しさに期待していた。
カートに乗ってコースへ向かう途中、田中は突然、真剣な表情で言った。
「このクラブは普通のゴルフ場とは違って、サバイバルがテーマなんだよ。」
「サバイバル?」私は驚いて聞き返す。 「そう、ただのゴルフじゃなくて、自然の中でのサバイバル体験も含まれているんだ。ちょっとした冒険だよ。」田中はにやりと笑った。
少し不安を感じながらも、私は田中に従い1番ホールのティーイングエリアからドライバーショットを放った。
セカンド地点に着くと確かに普通のゴルフ場とは違う様子で、コースは木々や岩が多く、障害物だらけだ。
「ここからは自分で道を切り開いていくんだ」と田中が説明した。
最初は楽しんでいたが、ホール数を重ねるごとに次第にコースは険しくなり、道に迷いはじめる。
突然、田中が「気をつけろ、ここからが本番だ」と言った。その瞬間、周囲の木々がざわめき、地面が揺れたように感じた。
「何が起きてるんだ?」私は恐怖に包まれた。
「これがサバイバルカントリー倶楽部の醍醐味さ!」田中は笑いながら叫んだ。
途中、自然の中でのサバイバル技術が試される場面がいくつもあった。険しく高い崖をよじ登ってからの200ヤード打ち下ろしのアプローチ、ゴウゴウと流れる濁流のウォーターハザード、野生の動物たちと遭遇する度に心臓が高鳴った。
数時間が過ぎ、私たちはようやくクラブハウスに戻った。汗だくで疲れ果てていたが、心地よい達成感があった。席に付くと次々に美味しそうな食事が運ばれてきた。
「どうだった?これがサバイバルカントリー倶楽部の魅力さ」と田中は満足そうに言った。
「確かに一味違うゴルフだったよ」と私は笑いながら答えた。しかし、その時、田中の目が突然真剣になった。
「このクラブにはもう一つの秘密があるんだ。実は、今日のラウンドはちょっとしたテストになっているんだよ」田中は淀みなく言葉を並べる。
その瞬間、私の背後から誰かが現れた。振り返ると、クラブのスタッフが不気味な笑みを浮かべて立っていた。「おめでとうございます、お客様はテストに合格しました」
「テスト?」私は困惑した。
「そう、あなたは当クラブの新しいメンバーとして迎えられます。お好きな時にお好きなだけ、プレーをお楽しみ頂けます。しかし、そのためには一つの条件があります」とスタッフは続けた。
「条件?」私は心拍数が上がっていくのを感じた。
「ここを二度と離れることはできません。あなたは永遠にサバイバルカントリー倶楽部の一員となり、サバイバルとゴルフのスキルを磨いていただきます。
他にも沢山のゴルフサバイバーがいて、日々鍛練を続けています。あなたは彼らと共にリアルゲームのキャラクターとして生きていくんです。」
私は言葉を失った。田中は静かにうなずき、「俺もここに来た時、同じことを言われたんだ。でも、ここでの生活は悪くない。さあ、楽しもう」と言った。
冗談じゃない。一体、どうしたんだ、田中。頭がおかしくなったのか。二度と帰れない?バカげてる。
脱出しようと試みるが、私の車はすでに地中深くに埋められていて、自力での脱出は出来そうになかった。
「脱出は絶対に出来ません。諦めて当ゴルフ場にご協力ください。悪いようにはいたしません」
その日以来、私はサバイバルカントリークラブの一員として、永久にサバイバルとゴルフの生活を送ることになった。
どうやら、ここには政財界の大物や、資産家達がお忍びでやって来るらしい。
彼らはリアルゴルフサバイバルゲームのプレイヤー。私たちは彼らに選択されるキャラクター、というわけだ。
実際に人間が人間を操作するのではなく、要するに「bet」=賭け事なのだ。
勝率が高いキャラクターになると、生活レベルも上げてもらえる。
もちろん敷地の外へは出られないが、その他はなに不自由なく暮らせる。
サバイバルはやはり向き不向きがありちょっとしんどいが、好きなゴルフだって無料でプレー出来る。
まあ、厳密には「プレーさせられている」のだが。
はじめのうちは何とか脱出出来ないものかと考えていたが、すぐに諦めた。
案外快適なので、脱出しなくてもよいか、という気分になってくるのだ。
最近は私の戦績も良く、某国会議員のお気に入りキャラとして月2回のラウンドでかなりグレードの高い暮らしが出来ている。
苦手だったサバイバルも、かなりこなせるようになってきた。
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