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【短編】県庁所在地

「そもそも、県庁があるっていうだけでなんで偉そうにしてるんだよ」
「いや、偉いとかじゃなくてさ、県の代表として」
「ほら、代表ヅラしてんじゃん」

また始まった。飲むといつもコレだ。
この不毛なやりとり、いい加減に終わらせたらどうなんだ。
東北にあるM県の、「所在地選考委員会」の半年毎の会合。
委員長はウンザリしていたが、同時に前回から参加している新顔にはひそかに期待を寄せていた。

委員長に「新顔」呼ばわりされているのは、△市の末永だ。前回の2年前の選考会で初参加ながら強烈な存在感で場を仕切り、△市を初の県庁所在地に決めた事で時の人となった。

「日本国内において、県庁所在地を2年毎に変える県なんて他に無いんだから。県内の小さい勢力争いなんか置いといて、選考制度をもっとM県のアピール材料として上手く活用すべきじゃないですか。」

閉塞感を破るカリスマ性はじゅうぶんだった。
今回の選考会も、△市末永の卓越したファシリテーション技術によって誰からも不満が出ない形で次の県庁所在地はZ郡に決定した。
Z郡は県の西部に位置する人口およそ1万人の自治体だ。
30万人を抱える△市からの移行となると、各方面から異論が噴出しそうだ。しかし末永のロジカルファシリテーションが炸裂し、メリットとデメリットの絶妙なバランスで不思議と会合はまとまってしまうのだ。

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