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【短編】 へっぽこ探検隊

「おーい、水があるぞ。飲めそうだ」

ガンマ隊員が仲間を呼ぶ。安堵の空気の中、皆水分補給している。
「しかし、ここまで迷うとはな。簡単には発見出来ないという事だな」
杉山隊長はそうつぶやき、まともに機能していないGPSをポケットに入れた。

この探検隊は、シルバータビー王朝の幻の秘宝を見つけるという使命を受けて結成され、長い準備期間を経て今ここにいる。
しかし事前調査での期待値に対し、現地での捜索は想定よりも数段難航していた。
「隊長、一度ベースキャンプに戻り、体勢を立て直した方が良いのではありませんか」
ベータ隊員の言うことも一理ある。一度ベースキャンプに戻ろう。
そう思い杉山が隊員に指示しようとしたその時。
「た、隊長。大変です」
「何だ、どうした?」
「隊員のおよそ半数がひどい腹痛でダウンしてます。全く動くことも出来ません。今ベースキャンプへ移動するのは無理かと」
「そうか。仕方ないな。救護班、応急処置を頼む」

ベースキャンプが野獣に襲われ壊滅状態との知らせが入ったのは翌朝の事だった。
「何と皮肉な。皆が腹痛に苦しまなかったら、今頃探検隊は全滅していたかもしれない」

偶然生き延びた探検隊は、気を取り直し前へ進む。
山岳地帯を越えた辺りで、隊員の一人があることに気付く。
「まずいです。ここら一帯は、クリームベアの生息地です。クリームベアは基本的にはおとなしい熊ですが、警戒心は強い動物らしいので近寄らないに越した事はありません。」
「分かった。このエリアを迂回しよう」
杉山隊長の決断により、隊は大きく迂回して進むことになった。

「隊長、茂みの向こうに誰かいます」
「何?気を付けろ。先住民かもしれん」
アルファ副隊長が注意深く近づくと、先住民ではなく山向こうの市街地から来たと思われる地元民だった。
「こんにちは。道を聞きたいんだけど、熊の生息域を迂回しながら最短でシルバータビーの遺跡に向かう道はないですか?」

通訳係のゼータ隊員が話しかけた途端、地元民はなぜか慌てて立ち去ってしまった。
「おーい!何だよ。道を聞きたかっただけなのに。」
「ははは。お前の発音がイマイチで通じなかったんじゃないのか?」

結局、探検隊一行は6時間かけてクリームベア生息域を迂回し、遺跡にたどり着いた。

隊が去ったあと、忌々しくその姿を見ている先程の地元民。
「くそ。何だあいつらは。もうちょっとでクリームベアの子供を捕獲出来たのに。サーカスに売れば高く売れるんだ。邪魔しやがって。きっと保安院に通報しちまっただろうな。当分は密猟は出来ないな」

探検隊はついに秘宝が眠る古代神殿の入り口に辿り着いた。神殿は2つあるが、向かって右の神殿には死のトラップがいたる所に仕掛けてあるらしい。
「よし。左の神殿に入るぞ。」
蔓に覆われた入り口から、ナイフを使いながら一人ずつ入っていく。
しばらく進むと大きな空間に出た。
「隊長。事前に入手しておいた遺跡内の図面と違う気がします」
「ああ。確かに、図面では巨大空間はもっと先にあると記してある。シグマ隊員、この図面で間違いないのか?」
「・・これはトラップが無いほうの神殿の図面で間違いないですね。なので、今我々がいるのがトラップ有りの神殿ということになります」
「しかし、何も起こらないじゃないか。確かこの大広間は侵入者が足を踏み入れると床が抜けて針山に串刺しになるはずだ」
「おそらく、トラップのトラップかと。本当は安全とされているほうの神殿がトラップなんだと思います。我々は入る神殿を間違えた事で、結果的に命拾いしましたね」

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