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思考に落ちていく

また会えるようになったら。

こんな気持ちで海の向こうにいる家族や友人にこの言葉を使うようになる日がくるなんて正直思っていなかった。「戦時中と違うんだから」手紙も電話もメールもあるんだから。「この平和な時代に」そう思って、「いつでも帰れるから」海外に暮らすことを楽しもうと決めて、そして今離島に取り残されたような気分が時々襲ってくるのをどうすることもできない。

世界中がstay homeになってもう1年近くになる。

そうなる前から比較的他の人との接点薄めな生活をしているので、正直最近では私自身の生活が変わったのかどうか怪しいなぁ、と思うくらいなのだが、息抜きやちょっとした用事を片付けたいとき、その不自由さは突然現実のものとして浮上してくる。

ストレスからなんだろう、「たいした事ないウイルスじゃないか」そういう言葉もちらりちらりと目にしたり耳にしたりする。殆どの人が軽症なのにどうして私達がこんな不自由な思いをしなきゃいけない、そういう叫びなんだろうなと思って、議論する気持ちの余力もない私は黙って通り過ぎる。

個と全のバランス、ということをとにかく最近思っている。
そしてそのバランスの取れるやじろべえの一点は それぞれのひとの考え方で百人百様なのだ。できればそこを「あなたは間違っている」ではなく、「みんな違う考えだから、出来るだけ柔軟性と多くの選択肢を持たせよう」にならないと、どこにも辿りつかないのではないか。
どうしてこんなに、そのバランスの取り方の違いを「摘発」するみたいな社会になってきてしまうのだろう。

状況と心の状態で そのバランスをとる一点は個人の中でも揺れるのになぁ。


自らの生活を守らねば生きて行くことはできない。でも全体(今の場合世界全体)の利を考えなくなったら自分の生きる場所すらなくなる。今の私達はそんなところにいるんだろうけどなぁ、と時々ニュースを聞きながら思う。

経済がどうしようもなく停滞しているから何がなんでも経済を回すのが大事だ、と、ここまでは良いんだけれど、一部の人の「大体のひとが軽症でおわる感染症にビクビクした政策をしているのがオカシイ」はちょっと飛躍しすぎだとおもう。


ワクチンは危ないんでしょ?どうして受けなきゃいけないの。

数十万人に2−3人という確率を「危ない」と判断するなら、それは仕方無い事だ。自動車事故に遭う確率より低いが 「自動車は怖いから乗らない」というひとを責めるのは間違っている。
けれど、「自動車は事故があるから」公共バスの運転を止めろ(もっと先に行ったら「自動車撲滅」とか言いかねない)、という論理が成立しないように、ワクチンの大きな目的のひとつが「全体として感染のチャンスを減らす」=接種するひとが多ければ多いほどこの目的は達成される可能性が高い、というときに、「どうしてそんなことをするんだ」と怒ってもなぁ・・・って、今の私自身は嘆息しているほうなのだが。

個が受ける不利益と 全が受ける不利益と。

敢えて不利益を産み出そうとしている社会なわけではない。ということは 利益と不利益を天秤にかけ、「全の視点を失わず」政策やルールが示されている、と一応理解していこうと思っている。

で、ジブンゴトに戻るのだけれど、多くの海外組には今 個が受ける不利益=故郷の家族や友人に会えない、ということの出口が見えない。でも言葉にしなくてもそこに大きな不安を感じているのは私の年代以上のひとだけかもしれない。もっと若い年代は「いつか元に戻るでしょう」って漠然と、でもかなり楽観的に思えるだろうから。

最近、以前に増して「もうあのひとと会うチャンスは本当にないかもしれない」と感じることが増えた。自分が年をとった、ということなのかもしれないけれど。

一期一会。
その言葉を どんな時も心の中で握りしめる。今この瞬間、について、全の中の個として実感することが多いからこそ 以前より考えるようになった。

「また会えたら」をさみしい気持ちで言わないために、今日も個と全のバランス探しをしている。個としての自分に出来ることと出来ないことは何か、私が生きる全という集団のためになにを考えるか、いろんな点でいろんなところで、ずっと考えている。


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ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリーより、soi/ツグミ工芸舎さんの作品をお借りしました。木工作品の静かな佇まいが 考えながら潜っていく自分の気持ちになんとなくしっくりしたので・・・

木工作品もそうですが、とても味わい深いイラストも描かれていてどれも素敵です。ぜひ覗いてみてください。

soiさん、素敵なお写真をみんフォトに置いてくださってありがとうございました。

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たなかともこ@ツレヅレビト
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