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土と水と空気と。〜2022年7月26日の日記

さて、今日の日記は下書きしておいて 明日の移動途中とかに公開しようとおもいついた(ていうか、予約機能もっと使えや、という話)。明日7月27日は移動日で、地球を西側に向かう私たちにとっては実質38時間くらいになるのだ(日付変更線を戻る方向に越えるとそうなる)が、ネットに繋がることが出来る時間が限られているのでね。

実家のある水戸地域、今年は雨雲に避けられていたのだが、7月26日は早朝からしっかり雨。日本を発つ前に母の墓に参っておこうと思っていたら出掛ける時間には土砂降りだった。
運転してくれる姉に「あんまり酷かったら車から降りずに手を合わせて戻ろう」と言ったけれど、なんのなんの。
お寺さんにつくころ小降りになって、車を降りた時には傘いるかな?というくらいの優しい雨になった。手を合わせて母の好きなビールを一本供え、車に戻ったらまた雨足が強くなる。
家に戻ったら今度は雷までなり出しザーザー降り。
どこのどちら様か存じませんが、天気へのご配慮ありがとうございました。

今回の一時帰国は母の7回忌という外したくないものがあったのだが、まぁ2ヵ月という時間を久し振りに滞在してみて私の「根っこ」が元気になったと感じているのは 年齢だろうか。

2年半ぶりの一時帰国だったけれど、「私の身体はここの土と水で出来ていたんだなぁ」と深く感じることが多々ある。それを聞く人には大抵「?」という顔をさせてしまうので「水は軟水だし、その味も自分に合う」と簡単に説明するのだが、これでほぼ100%の方が大体の感じを受け入れて下さるっていうのは面白いな、と思う。日本人は水とともに生きているんだよね。
それに「ここの土と水で出来ていた」と感じるのは食を通じて、でもあるのでそこを切り取るとなんかわかりやすいみたいだ。

でも、本当にいいたいのはもうちょっと、なんというか観念的なことなんだ。根源的にここの土に歓待されている気がするのだ。降る雨に、大気の中の水分に、そしてそのなかを通じて届く日本という国の祈りみたいな音にならない振動・・・いや、波長?に。

今日のうちに読み切ろうと思っているが、夏川草介さんの「始まりの木」を読んでいてすごい一節に出会った。
ご神木として大事にされている大木を前に そこに神を見出した日本人にとって神は心を照らす灯台だった、灯台に過ぎなかった、という見解が主人公の師によって語られる。

もとより灯台が船の目的地を決めてくれるわけではない。航路を決めるのは人間だし、船を動かすのも人間だ。何が正しくて、何が間違っているのか、灯台は一言も語らない。静まり返った広大な海で、人は自ら風を読み、星に問い、航路を切り開くしかない。(中略)この国の人々はそうして神とともに生きてきた。この地の神とはそういう存在だったのだ。

夏川草介「始まりの木」より

もちろん小説の中の一節なので言葉以上に拡がりのある深い意味をもつ文章なのだけれど、今の私にはとてもわかりやすく「自分の根っこ」を教えてもらった気がしたのだ。(まだ響いたものが漠然としていて、ここに何度も戻るので読み切れていないが。)

どうも話が飛んでいて読んで下さっている方には申し訳ない。
でも言語化できないから書かない、ではいけないような気がしているんだ。

日本人は自分に厳しいヒトが多い。それは善くなろうという心の現れで素敵だと思うのだが、時々は自分自身の頑張りをみとめてあげようや、と思う。まぁ世の中でもよく言われるようになったけどね。
でね。「そうは言っても頑張りが十分じゃない自分を認めるなんて・・・」って言いがちな人たちは、日本の八百万神が好きな気がするのだ。多分、「無条件に受け入れてくれている神」、灯台のようにそこにいてくれている神を大事にする気持ちは、日本人のDNAにまで入っているのかもしれない。

それで、多分私は日本の土の上にたつと「ただ在ること」を受け入れられているなぁと強く感じているのかもしれない。かなり頑固に「私はダメだぁ」と思い込んでいるほうなのだけれど、少しずつ、肩をもんでもらうように「ま、それでもいいんだよ、ダメだめなままでも」というように。

もうひとつ付け加えると、やっぱり湿気のある空気はいろんな想念なんかを届けやすくすると思う(これは何度も書いてる事なんだけれども)。ということで、帰国すると音以上のなにかを絶えず受け取っている。

だから2ヵ月もいると「あれ?なんか元気になった?」となる。すごい事だ。禍の間 本当に外にも出ないし人にも会わない時期が長くなって「岩」になりかけていた自分というのが 手足があるのを思い出してまた歩き始めた、って感じだ。


もちろん、今はアメリカの家が懐かしいし帰るのが楽しみだ。でもそういうのとは違う「だいじなもの」がここにはある。
その土地で生まれ育つ、ってそういうことなのかなぁ。よく分からないけれど、郷愁って心の中に知らず刻み込んだそんな「だいじなもの」の引力なのかもしれない。


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たなかともこ@ツレヅレビト
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