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唐揚げの時間

深夜、無性に唐揚げを食べたくなる時ありません?

私にはある。

そんな時には、家から少し歩いた所にある定食屋へ行く。

線路沿いをテクテク歩き、高架下をくぐり、踏切を渡るとそのお店がある。

老夫婦がふたりで切り盛りしていて、カウンターが8つとテーブルが2つくらいの、小さなお店。遅い時間帯までやっていて、残業にまみれた仕事終わりに通っていたらすっかり常連になってしまった、愛着のあるお店だ。

席につくと、唐揚げとウーロンハイを頼む。この2点があればそれで十分。ふたりで切り盛りしているから出てくるまでの時間はゆっくりだが、その時間は日頃思わない事に思索を巡らせたり、暫く連絡を取っていなかった仲間にメッセージを送ったりして、贅沢な時間を過ごす。

適度に空いた間に滑り込んでくるのが、大ぶりの唐揚げが5個。濃いめの醤油味で、カタめに揚げておりパリパリだ。これに七味と、檸檬を軽く絞って食べる。

程よくぶつかる醤油と薬味類の刺激を受け止める鶏肉に、これまた濃い目のウーロンハイのアルコールが合わって、合法的にトリップすることが可能な逸品だ。後はひたすら味覚に身を任せるのみ。

食べる食べる食べる。

「ごちそうさまでした」「また来てね」「もちろん!」

無償に唐揚げが食べたくなる時がある。そんな時は、決まって深夜なのだ。

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