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今週の日記|昔のインターネットは
5月31日 刈る人
昔のインターネットはよかった。遠い目になって、ときどき思う。ここでぼくが「昔」というのはインターネット黎明期、2000年前後の頃のことだ。
そこでは、個人が思い思いに自分の好きなものについての情報を発信しているのがなんといっても楽しかった。ぼくは自分から発信することはなかった(発信するための技術が足りなかった)が、日々そういった「ホームページ」との出会いにいちいち興奮していたように思う。
この世界には、こんなにも自分とよく似た趣味のひとがいるのか! と新鮮な驚きを感じたり、こんなひとと仲良くなりたいと思うような憧れの存在もあった。当時フィンランド在住で、その後カフェをつくる際に設計でお世話になった建築家の関本竜太さんとの出会いも、まさに彼がプライベートで運営していたホームページを通じてだった。
ほかにも、アキ・カウリスマキのファンサイトを運営していたkyokoさんとか、「東京カフェマニア」の川口葉子さんとか、ホームページをきっかけに出会い、いまもささやかながらつながっている「縁」の多くがインターネットから生まれた。
そう、昔のインターネットといえば、サイトの訪問者が主宰者と、また訪問者同士で交流できる「掲示板」、いわゆるBBSがセットになってるのがふつうで、もちろん関本さんのホームページにも、またkyokoさんや川口さんのホームページにも掲示板はあった。そして、そこでは夜な夜なさまざまな人たちが集まってきてはにぎやかに情報交換をしていた。
もちろん、ときには空気を読めない訪問者や悪意ある訪問者によって「荒れる」こともないわけではなかったが、いまのSNSとくらべればずっと長閑だったように思う。
じつは、先日公開したぼくらのウェブサイト「フィンランドをもっと好きになる|moicafe.com」をつくるにあたって、ぼくの脳裏につねにあったのもまた「昔のインターネット」が醸し出すあの感じであった。
noteのサークルでやっている「nuotio|takibi」は、まさに「掲示板」という位置づけだし、訪問者が自分の撮ったフィンランドの写真を投稿し、シェアできるコンテンツ「puisto|hiroba」もつくった。記事を書くときでも、正確を期すことはもちろん重要だが、なにより北欧やフィンランドが大好きという自身の「出自」を見失わないよう心がけている。魂までは売らない、というか。
要するに、昔のインターネットを知っているひとにはなつかしく、知らないひとにとっては「こんなにぬくぬくとした場所があったのか」となんだかうれしくなってしまう、「フィンランドをもっと好きになる|moicafe.com」がめざしているのはそんなウェブサイトなのである。
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