
【映画】ブリーディング・ラブ はじまりの旅 Bleeding Love/エマ・ウェステンバーグ

タイトル:ブリーディング・ラブ はじまりの旅 Bleeding Love 2024年
監督:エマ・ウェステンバーグ
オンライン試写で鑑賞。
離婚によって娘が五歳の時に離別してしまった過去とその間の空白を埋めるかのように、父と娘が向き合うロードムービー。アメリカ南部の荒野をひたすら運転しながら、何を抱えてきたのか、その想いが旅をしながら徐々に明らかになってくる。
五歳の娘を持つ自分にとっては、大人になった姿は想像するしかないのだけれど、もし自分や娘が今このタイミングで家族が破綻して離れ離れになる事を思うと中々に辛い。映画はユアン・マクレガーが2017年に離婚した事について、娘のクララが脚本として送った事が始まりとなったようだ。現実にはクララが成人してからの離婚だったため、映画のような大きな空白はなかったが、ふたりとも心のうちに抱えているものがあった事が起因になったのではないかと思われる。
淡々としていて、地味というよりも滋味な後味があり、ビターな感情が残った。この映画は人生の経験のあるなしも大きい。離婚して再婚相手との子供やその生活の話も、周りでよく耳にする。本作の魅力は国や人種関係なく、身近で起こり得る出来事が描かれている事だと思う。危うい行動を起こす娘と、それに振り回される父(まあ娘も振り回されてるのだけど)のやり取りは、シンプルながら淡々と物語を醸成していく。
去られる事への不安や悲しみがラストでしっかりと描かれていて、中々に味わい深い作品だった。
荒野を映し出した映像も美しく、夕暮れの線路脇の場面や、夜の遠くで光る街の灯りをバックに娼婦が踊るシーンは唐突なイメージ場面ながらも、幻想的で印象に残る。