ア・ゴースト・ストーリー/目覚めた時に、いつも扉が閉まる気配がする
デヴィッド・ロウリー監督のア・ゴースト・ストーリーを観てきた。
個人的に好きな女優ルーニー・マーラ(ドラゴンタトゥーやキャロル)の演技が素晴らしく、言葉少なに表情や仕草で全てを表現していて、特に長回しのパイを食べるシーンのキワキワな描き方がなんとも言えなかった。どこに行き着くのかわからない長回しの中、ひたすらパイを食べ続けながら涙するシーンはすごいとしか言いようがない。
この映画はとにかく音で表現されている部分が多くて、固定されたカットのカメラワークを補うように物音やサウンドトラックが叙情的に物語を語っている。ケイシー・アフレック演じる旦那Cが作曲した曲をヘッドホンで聴かされるシーンの雰囲気がたまらない。
時間軸も超えて、土地がもつ因縁をゴーストになりながらも側で眺め、時に近代的なビルの中、開拓時代の家族が家を建てる希望を持ちながらネイティブアメリカンに矢で殺された土地の果てに、夫婦が暮らした家がある。
ゴーストは一体何を見て何を感じたんだろう?
パーティの最中、地球と人類の滅亡を語るウィル・オールダムakaボニー・プリンス・ビリー演じる男の語り。
この映画は実は壮大なSF映画であり、冒頭引用されるヴァージニア・ウルフの小説のフレーズにあるアメリカンゴシックなストーリーだといえる。
夫婦の最期の時間を眺めながらその後手にする妻が残した紙切れに書かれたものは何だったのか?妻の言葉を受け止めたゴーストは何を思って消え去ったのか?
アメリカ映画の表現がこの数年奥深いものに変わってきている。明瞭で勧善懲悪な世界に対する欺瞞を否定するようなプロットを目にする。
配給と製作を行なっているA24(ムーンライトやレディバードに携わっている)の今後の活躍に期待したい。