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闇夜の少女を救う夫の話
水曜日は家族や夫婦についてのエッセイを書いています。
今日は、夫に救われた話。
私たち夫婦は時々、好きなアーティストや今どんな音楽を聴いているかを熱烈に話すことがあります。
保守的な私達は10代から20代前半の頃の音楽の話が中心。
夫がしみじみと「昔聴いていた曲を改めて歌ってみると難しいんだよ」と言い出しまして
例として挙げたのがSOPHIAの『街』
懐かしくてつい口ずさんだのですが、それを聴いた夫が
「聴き込んだ人の歌い方だな!ボーカルの癖をマスターしてるじゃないか!」
と絶賛してくれたのです。
私はSOPHIAやL'Arc〜en〜Cielが青春ど真ん中で、お小遣いやお年玉をCDにつぎ込んでは好きな曲を延々聴き込む思春期を過ごしていました。
友達と遊んでも、すぐ疲れてしまったり変なイザコザに巻き込まれていると感じることが多かった学生時代。
できることなら早いとこ自分の部屋で好きな音楽をずっと聴いていたかったのです。
自分の部屋には、人付き合いの難しさや恋愛のめんどくささはなくて
寝るのも惜しいくらいに聴いて、登下校は頭の中でリピート再生。
正直、あの夜に窓の外を見ながら音楽を聴く時間は幸せだったけど
救いはそこにしかないことを実感すると虚しくなる時間でもありました。
それは思春期独特のもので
自分のことをよく知らないから「どうしてうまくできないんだろう」と思うばかりだったのかもしれません。
要はただのコミュ障。
自分の世界を大事にしたいだけだったのに。
それを認識することができなかったあの頃の私は、窓から飛び降りて楽になりたいと思うこともありました。
私はきっと長生きしない。
きっと結婚せず友達もろくにできないまま、こうして夜に歌うんだろう。
根拠のない漠然とした不安。その不安を忘れたくて歌う。
聴き込みすぎてCDが割れたこともありました。…念?
以前、友達の前で本気で歌った時に
「そこまで真似しなくても…」
と言わて、自分がやっぱり人と違う時間を過ごしたんだと実感して恥ずかしくて悲しくなったことがあります。
それからはほとんど1人車の中で歌うくらいだったのに、夫の前でついつい気が緩んでしまったのです。
そんな私を物凄い勢いで褒める夫。
16歳、闇夜に一人ぼっちだった私が救われた瞬間でした。
ニコニコする夫を見ながら
幸せとは『許容』なのかもしれないと思いました。
自分が隠してきた事、恥ずかしいと思ってきたことを許容してもらえることで幸せを感じられる。
それは何もかも許容してほしいということではなくて、自分が1人で大事に持ってきた気持ちをほんの少し褒めてもらえるだけでいいのです。
1人の人生を共有しながら生きていくのが結婚なのかもしれません。
先日、同じように音楽を聴いていて
Lisaの『炎』を歌ったのですが
「お前はそんなもんじゃない。もっと聴き込め」
といきなりスパルタコーチみたいなことを言い出しました。
どうすればいいんだコレ…
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