Zapponianが10年以上もZapposに居続ける理由がここに - Zapposツアー体験記2024
こんにちは!もえやんです。だいぶ久しぶりのnoteになりました。
Every代表の松澤さんにお誘いいただき、Everyの受講生とともにHR Tech Conference 2024に参加してきました!ラスベガスを訪れるのは2度目ですが、10年ぶりくらいのラスベガスは照りつけるような暑さでした…!
HR Tech Conferenceそのものも大変インサイトに溢れたものだったのですが、松澤さんにおすすめしていただいたZapposのキャンパスツアーがあまりにも考えさせられることだらけでしたので、お読みいただけたみなさまとも一緒に考えたく、先にnoteに残してみます。
ここでEveryの宣伝:https://every-co.com/
回し者ではないですが、受講した講座のなかでもトップレベルにお金を払ってよかったもののひとつです。採用だけ好き や、労務だけやる というよりも経営目線で包括的に人事を捉えたい人におすすめ。毎年のことながら、HR Tech Conference速報セミナーをやるようです!
Deliver WOW! - Zapposとはどんな会社?
Zapposは、アメリカのオンライン小売業者で、特に靴の販売で知られています。1999年に創業し、当初は靴の通販を中心に展開していましたが、現在では衣類やアクセサリー、家庭用品など、幅広い商品を取り扱っています。2010年にはAmazonに買収されましたが、独自のブランドと企業文化を維持しています。(ChatGPTより)
日本には展開していませんが、創業者のトニー・シェイは彼の著書「ザッポス伝説」でも有名な方だと思います。Zapposのバリューについては日本でも広く知られており、”Deliver WOW Through Service”を参考にしてバリューを定めている企業もあるのではないでしょうか。
ちなみにこのZapposツアーに参加する方の国籍は日本人が最も多く、続いて韓国、国内の他州、南米(ブラジルだったかな?)と続くようです。ツアーを案内してくれたRyoさんは「Zapposは日本展開していないのにツアーに来てくれるのは日本人が多くて驚くよ〜」と言っていました。
今回のツアーは私、マブダチの @Iwami さん、そしてアリゾナ州からいらしていた(おそらく小売企業の)2名の合計4名でした。
Zapposのオフィスは「Zapposキャンパス」と呼ばれ、キャンパスに入るとIDの提示とNDAへのサインが求められます。携帯電話以外は持ち込み禁止とのことで、ロッカーに荷物を預けました。(お話してくれることは口外OKだが、執務室で話していた内容を聞いてしまった場合に口外しないというNDAです)
NDAへのサイン時に自分の社名を書くところがあるのですが、なんと自社名を入れたらサイネージに会社のロゴを入れて、日本語でお出迎えの表示を行ってくれました…!この短時間で!
“Wowを届ける”は、小さい喜びを与えることの積み重ねなのだなと思いました。
ツアーが開始前にRyoさんは「今日は最後にみなさんにWow!と言ってもらえるようにがんばります」と言っていてバリュー体現の鏡か?と思いました。笑
カスタマーサポートからファイナンスへ。キャリアパスもユニーク
Ryoさんはもともとスタバのバリスタで、Zapposにはザッポスオリジナルのカプチーノである”Zappochino”を作るために入社したそうです(マジか)。そこからカルチャーを伝導するZapponianになるべく、あらゆる研修を受けてZapponshipを獲得して、現在はCulture Maestroというタイトルで従事されているそうです。すでに12年も社内に居続けている戦士、すごいサクセスストーリー!
ここまででも”Zappos語”がたくさんでてきて、Googleもそうですが、こうやって帰属意識を醸成していくのだなぁと思いました。ワーディング大事。
まずはZapposの歴史ムービー、直近のイベントダイジェスト+社員への社内カルチャーにまつわるインタビューの動画2つを見せてもらいました。
Zapposはカスタマーサポートで大変有名で、1人のカスタマーあたり9時間対応したというレコードが破られ、10時間43分になった際にTVショーに取り上げてもらった動画を見せてもらいました。
社内でも「レコードが記録されました、おめでとうございます!」という全社メールが流され、祝福されるそうです(現在は10時間55分に更新されています)。
ちなみにこの新記録樹立をしたカスタマーは60代の方だったとのことで旅行の話や趣味の話で盛り上がったそうな…。イメージするカスタマーサポートの業務からは大きく逸脱しますね。これがカルチャーか。
ちなみにZapposはどんな職種でも全員まずはカスタマーサポートを経験するのだそうです。そして、カスタマーサポートとして入社した方が今は人事を担っていたり、ファイナンスへとキャリアチェンジしたりと、社内でのキャリアの作り方もかなりユニークだなと思いました。ジョブ型とは真逆を行っている。すごい。
"Build a positive team and family sprit" - Las VegasとZapposの関係
つづいてエントランスから売店についての説明がありました。
エントランスには写真のようなオブジェ(?)があり、ネクタイが並んでいます。Zapposにスーツで出社するようなメンバーはおらず、面接に来た方がスーツでビシッと決めているとエントランスでネクタイを切り取って展示するんだそうですw 最近ではマクドナルドのExecutiveがスーツでお越しになり、無事にネクタイを切り取られたとのこと…!写真の付箋が貼ってある上のピンクのやつだそうです。容赦ない。
つづいて売店。プレゼントのための装飾がたくさんあるなぁと思っていたのですが、これはZapponianがZapponianの誕生日や達成を祝うためのものだそうです。風船をふくらませるボンベもおいてありました。
こちらは売店の中に並んでいるのですが、ラスベガスの地域コミュニティとコンペティションをすることがあり、その受賞履歴だそうです。後にも出てきますがラスベガスというコミュニティに対してどうアプローチできるかも考えながらプレゼンスをあげているのは素晴らしいなと思いました。
ちなみにラスベガスに拠点を立てた理由は、「眠らない街」の名の通り24時間営業で、ゆえにホスピタリティも高い街であるという点がZapposにあっていたからだそうです。なるほどな…
オフィスにはビリヤード台や卓球台がありますが、目的はメンバー同士のコミュニケーション促進・対話増加のためだそうです。
アフターコロナではそれが従業員のためになるならとリモートワークが許可されているポジションも一部ありますが、オフィスに来たいと思ってもらうにはどうすればいいかを良く考えていると仰ってました。
続いてこのステージ。圧巻です、映画館か?
All Handsと呼ばれる全社会が1年に3度ほど開かれるそうで、その会場がここになるようです。ちゃんとドリンクホルダーとUSBポートも用意してるよ〜と言ってました。細かい気づかい。
All Handsの内容はどこもざっくり似ていると思いますが、会社の次期目標やファイナンス観点からの振り返りなど、従業員が何時間も聞くには退屈してしまう内容ばかりです。それをなんとかしようとアンケートを取って、過去にはCFOがバービー人形の格好をして登場したりする工夫もあるとか…(当時はバービーの映画が流行っていたそうです)。
やたら盛り上がるので終わったあとは会場がめっちゃ汚いらしいです。アメリカっぽい。笑
採用はあせらない。”I do the right thing”と思えるかどうか
ここで採用の話もしてくれましたが、選考では「自分のやっていることが好きかどうか?」を重視しているそうです。カスタマーサポートの話でもそうですが、売上や効率性を重視していたら10時間もCSできないわけで、”I do the right thing”と思えることを大事にしていると仰っていました。これはシンプルに素敵ですよね。自身のやっていることを疑われず、信じられるカルチャーづくりをやっていきたいなと思いました。
ちなみに採用はとくにこだわっているポイントだそうで、「ザッポス伝説」にも書かれていましたが、入社後の2-3週間の研修を経て、カルチャーに合わないと辞退を申し出た方には現在はなんと5,000ドルを贈呈して入社を辞めてもらっているとのこと。この入社を辞めてもらった人たちは「Graduation Party」に呼ばれてパーティーを行うそうです。なんならめっちゃ盛り上がるとか。どういうこと…
ここが舞台裏ですが、壁に書かれている絵は従業員が書いたものだそうです。すごい。誰かをHireして書いてもらうのではなく、メンバーに書いてもらうことで”Create Fun and A Little Weirdness”を体現しているということでしょうか。
これって誰々が書いたんだよ、というコミュニケーションが行われて、どこかで描いた方を見かけたらその話題でコミュニケーションが行われる画が浮かびますね。すごいなぁ。
つづいてこちらのキャンパスホール。各時期には従業員の家族を巻き込んだイベントを行うそうで、リアルマリオカートやったときの写真も見せてもらいました。笑
驚いたのは地元の高校生に対して”Prom Closet”なるイベントを開催しているそうで、ダンスの仕方を教え、そこで履いた靴はプレゼントされるとか…そんなことある…あとイベントネーミングいいな…
※Promは高校で卒業前に開かれるフォーマルなダンスパーティのこと
続いて新しい塔。なんと仮眠室があります。水族館の中?を覗けるタイプと、深く眠るタイプ、ソファーの3種類の仮眠スタイルがありました。
この後に執務室にも案内してくれました。数名メンバーの方がいたのですがバックグラウンドはバラバラで、以前は結婚式場に勤めていた方が現在は動画やバナーデザインを制作しているなど、なんかめっちゃDE&Iでした(?)。
その方は社内外で「〜〜してすごいね!」と声をかけられると必ず、”I didn’t, we did!”と返してくれるそうです。こういうところもカルチャーですよね。素敵。
この執務室はダイナソーな作りになっていて、作ったチームの写真も展示されていました。
全然関係ないですが、靴や段ボールも多く置いてあり、雑多なのに汚く見えない作りがなんかすごいなと思いました。
Random callにも応対できる”Ability”を持つことが誇り
そして写真の通り看板が3つ並んでおり、「Most Random Calls」なるものが書いてあるのですが、Zapposに電話をくれる理由のうち、最も多いrandom callの一覧なのだそうです。
最近の事例では、「飛行機の離陸までもう少しなんだけど離陸ゲートがわからないの」。航空会社はなかなか電話に出てくれないからZapposにかけてきたのでしょうか…ZapposのCSは調べてゲートをご案内したとのことでした。コロナ禍ではパルスオキシメーターが1,000個ほしいという電話があり、社内で連絡しまくって600個くらいかき集められたそうです。どないやねん。
「それってZapposが必ず対応してくれるってわかってるから電話してくるの?」という質問には「そうでしょうね」とも仰っていました。Ryoさんは、「なんでも回答するということが褒められたことではないかもしれないけれど、random callにでも回答できるという能力と選択肢があるということを誇りに思っている」と仰っていました。ぐぅ…なんというか本当に”I do the right thing”と思わないとできないことですよね。
このあと @Iwami さんとも話していましたが、電話をかけようとするときに想起される存在であるというのはそれはそれでブランディングとして強いよねと仰ってまして、そのとおりだなぁと。突き抜けるというのはそういうことか。
ちなみに10時間55分の新記録樹立時のエピソードで、4時間ほど話したCSが「すみません、トイレに行きたくなってしまって…」と伝えたら電話口の方が「あら、じゃあ切らずに待ってるわよ!」といって切らずにずっとお話してたとか。待ってでも話したくなってしまうCSすごい。
続いてはカフェテリア。地味に驚いたのはITヘルプデスクがカフェテリアにあること!たしかにご飯のついでに行くか、ともなりますし、待っている間にご飯頼んでくることもできますよね。ちょっとしたトラブルでも生産性やエネルギーの阻害要因になるようなことと捉えて、すぐに相談できるような作りになっているのかなと想像しました。
外に出るとパターゴルフ場が…!これは社員が「ここになんもないし、ゴルフ場作ろうぜ」といって作ったらしいです(どういうこと!?)。さすがに照りつけすぎて暑いのでプレーしている人はいませんでした。
Unfolding venture; 終わらないWowの追求
最後は福利厚生周りについて。ジムも併設されていて、パーソナルトレーナーの来社日程なんかも掲示されていました。
また、6つの社内固有の福利厚生が展示されており、これはすべてZapposの社内アプリからアクセスができるんだそうです。
なかでも「Wishez」というプログラムを紹介してくれました。これは欲しいものをアプリで掲示することで誰かから募金を募ることができるようなシステムのようです。
RyoさんはZapposに入社したとき、かなり稼ぎがタイトで、部屋に家具を買うことができずしばらく広い部屋の一部しか使っていなかったとのこと。そんなことを周りに言うはずも、恥ずかしくて言えもしなかったなかったとのことで、「Wishez」がRyoさんが最も好きなプログラムだそう。
また、Zapposは医療費を100%カバーしているそうで、Ryoさんが「日本ではどうかわからないけど、アメリカでは医療保障制度のこともあって、こういう福利厚生って地味に重要なんだよね」と言っていました。日本でも100%はなかなかないぞ…
ツアーも終わりに差し掛かり、「Ryoさんが10年もZapposにいる理由ってなんですか?」と聞いてみたところ、「とってもいい質問です」と言ってかえってきた回答は、”No.1, Zappos is an unfolding venture”。そして”No.2, its energy”。成長そのものを楽しみながら、そこに充満するエネルギーが好きだと仰っていました。最高の回答ですね。
ちなみにHR Tech ConferenceはかなりAIを言っていたので、「AIばかり言っているConferenceとは対局にありますね」と伝えたら「本当ですね、どうやってZappos業務をAIで効率化できるって言うんでしょうね!」と言ってました。たしかにね。。
全員がどこかでWow!というような体験ができ、Ryoさんは本当にZapposのカルチャーを体現しているなぁと思いました。自分もCulture Maestroと言えるような日常を送りたいです。
まとめ
実はこのツアーをおすすめされたとき、「実際にオフィス訪問してみてなにがわかるのかしら…」とちょっとうがった見方をしていましたが、行って感じ考えることがたくさんできたキャンパス訪問でした。
なんといってもオフィスの雰囲気。Ryoさんはツアー中すれ違ったメンバーにはほぼ全員に声をかけていて、ハグしたり握手したり肩を抱いたりと、お互いを信頼している雰囲気がとっても素敵でした。
出会った方に1人も暗い方はおらず、全員がめちゃくちゃ明るい。見方を変えるとこういう環境があまり好きではない、ちょっとウッとなってしまうという方もいるのかなと思っていまして、これがカルチャーフィット or Notなのかなぁと思いました。行かなければ気づけなかったことだったな、と思います。
このホスピタリティに溢れた気持ちを毎日忘れないように卓上カレンダーと、セールになっていた、Zapposのメンバーがカルチャーについて話した本(日本語未翻訳)を購入しました!本を読むのも楽しみです。