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ELLEGARDENとMy Hair is Bad ー RSR2019ライブレポート(19/08/17-18)
どうしてもライジングに行きたかったのは、マイヘアが「オレンジレンジでギターをはじめて、エルレでバンドをはじめました」とライブ中のMCで話していたから。
そして無事にチケットを確保できて、タイムテーブル発表の日。
胸が高鳴りました。エルレガーデンが一番大きなステージで、一番いい時間に出演したあと、マイヘアがつづいたのです。
マイヘアのライジングサンへの出演は今年で4年目。しかし、一番大きなサンステージでパフォーマンスするのは今年が初めてでした。
これは彼らにとって、いくつもの意味ある晴れ舞台だ。
ライジングのその日を思うと、わたしが緊張でかたくなってしまうようでした。
台風10号の襲来により、初日の公演は中止(ナンバーガールの復活を心待ちにしていた人を思うと胸が痛い…)されましたが17日の2日目の公演は無事に開催。
わたしも台風の影響で飛行機が2日遅れになりはしましたが、なんとか2日目のスタートに間に合いました。
友人と夕張メロンサワーで乾杯し、最高の1日がスタート!
HEY-SMITHでテンションをあげて、夕張メロンソフトクリームでメロン半玉ひとりで食べて、クリープハイプのラブホテルで夏を感じて、LiSaを聞きながらお昼寝……
WANIMAが始まるころにはすっかり日が落ちていました。
はじめてのWANIMA。あまりの熱狂ぶりに、ステージ前の前方中に開始時はいた体はどんどん押されて前方の中の最後方まで。熊本弁を織り交ぜた軽快なトークと、激しくかき鳴らされる音に、観客はもみくちゃ。
WANIMAのライブの熱さに、若干気圧されていたとき、彼らのヒットソングである「ともに」がはじまりました。
周りの人も大合唱。
わたしと同じく、大きな人のうねりの力に押されて、自然と体が後ろへ引っ張られて、小休憩状態になってしまっていた人たちも、くちずさむのは同じ歌詞。
これが、売れるってことか、と思いました。
WANIMAは、なんだかわたしのなかで普段フェスで好んで聞いている人たちとは異色な感じがしていて。だってauのCMソングに抜擢されるなんて、それはもう超売れっ子。
キャッチーな歌詞と、彼らの無邪気120%みたいな明るく歌う姿は、わたしが好む胸の奥をじくっと刺すような音楽とは違うように思えて。
売れるのはきっといいことなんだろうけれど、わたしが好きなのとは違うよな、というような気持ち。それはつまり、わたしがマイヘアに売れることを願っていない、というのとほぼ同義でした。
だけど、「ともに」の、あの、前を向いて、隣の人の腕までもひっぱって進むような力強い歌詞が、何万人という人の口から聞こえる光景は圧巻で、それを聞きながらわたしは「マイヘアにヒットソングを書いてほしい」と強く思いました。
年齢も性別も出身も超えて、みんながひとつの想いを口ずさむって、すごいことです。音楽以外になしえない偉業でしょう。
そんな偉業を、いつかマイヘアにもしてほしい。マイヘアの曲が、みんなの口からこぼれるのを見てみたい。
歌詞に思わず涙ぐみながら、わたしはそんなことを思っていました。
WANIMAが終了して、再び人の間をすり抜けてステージ前方まで進みました。WANIMAがはじまるまえのほうが「これからマイヘアがエルレの歌ったステージで歌うんだ」という緊張は強かったかもしれません。
エルレの出演待ちの時間になると、自然と落ち着いていました。
スタート5分前。
背中に大きくドオンと花火の音がなりました。ぱらぱらと真っ黒な空にはじける火花。落ち着いていた胸を、ふたたびどきどきさせようと叩くような音。しばらく見入った後、まだ鳴りやまないのに、視線は再びステージのほうへ。背中に花火と人のざわめきを聞きながら、じっとがらんとしたステージ上を眺めていました。
エルレガーデンが活動休止したのは、10年前。わたしがエルレを好きになって、10年。
15歳のわたしは、ピンクのガラケーで「エルレガーデン」と検索して、ついこの間活動休止してしまったことを知り、がっかりしていました。まさか25歳になって、この目で、見れる日がくるなんて。
21時。
歓声とともに、エルレガーデンがステージ上に姿を現しました。
人が、どっと前に流れてきます。流されないように必死になって足を踏ん張りながら、たくさんの人の頭の間から、細美さんを見ました。インターネット越しじゃない、いま、目の前にいる。
=====
1. Fire Cracker
2. Space Sonic
3. モンスター
4. 高架線
5. Supernova
6. Pepperoni Quattro
7. 風の日
8. The Autumn Song
9.金星
10. Red Hot
11. ジターバグ
12. Salamander
13. 虹
14. Make A Wish
15. スターフィッシュ
=====
まだ田舎フリーランス養成講座の受講生だったころ、先輩みたいなおにいちゃんみたいなみんなの後にくっついていった金谷の海岸。
みんなで寝そべりながら、「金星」を聞いた。
大事な人を亡くしてしまって毎日毎日泣いていたとき。ひとりになりたいけど、なりたくなくて、よく海岸へ行っていた。ぼろぼろ泣きながら聞いた「風の日」。
いまのわたしにぴったりな「ジターバグ」。
そして、全部の曲が、16歳だった頃にわたしを引き戻した。
USBにつまっていたエルレの曲。放課後の教室。曲の感想。好きな曲の羅列。赤い自転車と通学路。ブックオフで手に取ったCD。
高校生だったわたしは、英語の歌詞の意味なんてちっとも分からなかった。それはいまも変わらない。なんて歌っているのか知らないのに、口から自然ともれてくる。
全部の曲が、体に染みついていたんだと気付いた。
わたしが好きだった人にエルレを教えてもらってよく聞くようになったとき、彼らはすでに活動休止していた。残念だな、くらいにしか思わなかった。だって、その先の10年でこんなにずっとエルレの音楽と一緒に過ごすなんて思わなかったから。
10年後、25歳になって、彼らを目の前にして、大合唱ができるなんて誰が予想できるだろうか。
「こんな星の夜は すべてを投げ出したって どうしても君に会いたいと思った」
あの頃と、この歌詞を耳にして思い浮かぶ人が変わっても、曲の尊さはひとつも変わらない。
ぎゅうぎゅうの人たちに押しつぶされそうになりながら、目の淵にたまった涙をわざと振り落とすように上を向いた。
スタッフ用の機材テントから、ステージに向かって真っすぐに伸びるスポットライトの光。
ちいさな虫がその間を通る姿は、まるでいつかの夜に必死で探した流れ星みたいだった。
エルレガーデンを聞き終えてステージから離れる人をかき分けて、最前列までやってきた。はじめての最前列。だけど、巨大なセットからここはずいぶん距離があって、横浜アリーナより、森道市場のステージよりもずっと遠くに感じた。
エルレガーデンを見れた感動に、胸はばくばくいっていた。
この感動をくれたのは間違いなくマイヘアだ。マイヘアを好きにならなかったら、台風のなかわざわざ北海道に来たりしていなかった。
彼らのために、ステージをリセットさせるように、ほかのアーティスト間よりも長い時間がとられていた。エルレガーデンの熱がじわじわとサンステージから引いていく。
しばらくして、リハーサルがはじまった。
(わたしが行っているここ1年のフェスでは、リハーサルをするのは珍しいことだった)
2曲ほど演奏して調整して、頭を下げて袖にさがる。
いまどんな気持ちなんだろう。
憧れだったロックスターのライブを目の当たりにしたあとに、そのステージに立つ。想像力が及ばないほどのプレッシャーなんだろうか。思わず祈るように指を絡めた。
23:20、もうすぐ最高の1日が終わろうとしているとき、ついにMy Hair is Bad のステージが始まった。
「新潟県上越市から来ました、My Hair is Bad はじめます」
いつものようにドラムスティックが弾ける音が4回鳴って、「アフターアワー」からはじまった。
続けて「ドラマみたいだ」。フェスでの定番の流れ。いつも通り。どんな気持ちなんだろうと、わたしのほうがずっと緊張していたようだった。
あのときの彼らは、落ち着いていた、という言葉が似あっていて、わたしはそこから、覚悟を感じた、と思った。
ライブで見せる爆発力、殴りにかかるようなでたらめに動き回るからだ、吹っ飛ばされるマイクスダンド、そういったパフォーマンスはなくて、わかりやすく形容すると、落ち着いていた。
正直、不安だった。
エルレガーデンという、もはや伝説的なバンドを前にして、どんなパフォーマンスをするのか。気持ちが高ぶりすぎて、きっといつも以上に暴れまわるに違いない。
が、予想は見事に裏切られた。
最初のMC。
とても短かった。言ったのは、「エルレの後、横は銀杏。ブルーハーブ。…悪くない」だけ。それだけ。
ステージのライトを背に、逆光によってシルエットが浮かび上がる。最前列にいても、いままでより遠くに感じる位置だけど、なにも遮るものがないから鼻先も唇の先も、黒いラインを視線でなぞることができた。
ワンマンライブのステージ上で、弱さをさらけ出す彼にどうしようもなくこころを乱されていた。でも、いま、笑ったような気がした。
エルレに対しての想いを多く語らないまま、ライブは続いていく。「フロムナウオン」。喉の奥から、すり潰された言葉の残骸のような音が鳴る。マイクを通して、何万人という人の耳に。
いつもそれは錆びついたナイフみたいな曲だった。
いままでわたしが目にしてきた「フロムナウオン」は、怒りとか社会の不穏さとか自分の不安とか疑心とかそういうどろっとした見たくない感情をぶつけるための曲のように思われた。
収まりきれない感情が、音にならない声に、頭を掻きむしる指の動きになって、その揺らぎでそのまま弦をはじいているようなーー、
でも、今日の「フロムナウオン」は、"そういうもの"がなかった。
社会のことは関係ない、自分のカッコ悪いとこも置いといて、真っすぐで、信頼に足る言葉だった。
「ロックンロールは一瞬だ」「時間を減らしてやっているんだよ」
My Hair is Badは「365日中200日ライブしている」と言われている。
数えたことはないけれど、わたしは大阪で4日後にまた彼らのライブの予定がはいっているが、その間にまた別のところでライブに行っていることは知っている。
先日、ヒルクライムの10周年記念ライブのゲストアクトとしてステージに立ったとき、やはり「フロムナウオン」で椎木さんはこう叫んでいた。
「覚悟あんのか」「自分で選ぶんだよ」「これが俺の趣味で好きなことで仕事で生き様で、ずっと続けることなんだよ」って。
365日中、200日ライブしていたら、残るは165日。それと同時進行で曲を作りアルバムをリリースし、椎木さんはソロ活動も行なっている。
4月のソロライブで「やっと東京に家借りたんだよ」って話していたけれど、一体どれほどそこに帰る機会があるんだろう。
彼は高校2年生のとき描いた夢で、音楽で食べてる。
「時間を減らしてやっている」
覚悟、本気、実直、誠実。この言葉がこんなに真に迫る人を、ほかに知らない。
東京のライブハウスと、札幌の星空の下の野外ステージがつながった。
エルレガーデンの後のステージとか、最大のサンステージだとか、そういうの、なかった。彼は彼らのライブを、全力でやっている。
彼らは年間200本ものライブをしている。このステージは200分の1にすぎない。
ラストに差し掛かったMCでようやく、椎木さんが思い出話でもするかのようにエルレのことを語りだした。
「僕たち、新潟県上越市っていうなにもない田舎で生まれて」
「1年3組、教室で俺の携帯がエルレの着メロでやまじゅんと話した。バンドやりたいと言っていたバヤリースと3人で組んで」
「高2ではじめて上越アースでライブ。エルレのコピバンだった」
「店長が…女の人なんですけど、いつか椎木がエルレみたいになったらどうする?と聞いたことがあったんですよ。なにを言ってんだと思った」
「エルレみたいになれているとは思わないけど、16歳の自分に自慢してやりたい」
かつて、「森、道、市場」のステージで「ORANGE RANGEでギターをはじめて、ELLEGARDENでバンドをはじめた」と語っていた椎木さん。わたしが鹿児島の中学校、高校で、緑色のiPodにいっぱいにつめこんできいていた音楽たちと同じものを聞いて育った少年3人が、今日、ステージ上で憧れの人の背中を見た。
どんなドラマよりもドラマチックだと思った。
ラスト2曲は、最新アルバムから。
「もしも人生が1本の映画だったとして、」という語りから始まる「芝居」。
これは通過点に過ぎない。
一瞬を駆け抜ける覚悟は変らない。そう言っているみたいだった。
2014年に発売した1stフルアルバム「narimi」収録曲、そしてこのステージのオープニングを飾ったアフターアワーで「僕ら最高速でいつだって 走れるわけじゃないんだって いつかは止まってしまう日が来る それでも僕は良しとして 靴紐を硬く結ぶ 前を見たあの日」と歌っていた彼らが、
芝居では「今の僕が予告編になるような 長い映画を撮ることに決めたんだ」と歌ってくれた。
エルレガーデンと同じステージに立つ、ということに、発表されたときからめちゃくちゃ期待していた。「エルレと同じステージに立つなんてまるで彼らのフィナーレみたい」たとえ、彼らのラストステージになったとしても、なんてすばらしい物語だろう。
だってエルレはロック好きにとっても、きっと彼らにとってもとんでもなく大きな存在だから。
だけど、16歳からずっと走り続けてきた彼らにとっては、ひとつの通過点だった。200分の1。そして、長い長いバンド人生の、まだ、10年。
同じく最新アルバム「boys」から、「君が海」で彼らのステージは終わった。
これまでじゃなくてまだ先があるんだって、まだみぬバンドになっていくんだって。わたしたちの胸にぞくっとするような期待を落とし込んで去って行った。
憧れのロックスターの背中をとらえたこの瞬間は、彼らにとって、ほんの予告編の一部に過ぎない。
まるで彼らのライブの代名詞のような「フロムナウオン」になぞるような物語。誰も予想できない、"いま、ここから"始まる長い物語。
新しい1日がはじまった、もうすぐ日が昇る。
My Hair is Bad RSR2019 セットリスト
1 アフターアワー
2 ドラマみたいだ
3 真赤
4 悪い癖
5 告白
6 クリサンセマム
7 ディアウェンディ
8フロムナウオン
9 戦争を知らない大人たち
10 芝居
11 君が海
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