我が家の小咄シリーズ「不倫」
妻から相談があった。
「飲み会を断りたいのだが、なにかいい理由はないか」
というのだ。行かない理由としては別にメンバーがイヤだからとかではなく、単純に「1年間、外に遊びに行くのをやめてみる」という軽い願掛けのようなものをしている最中だからだ。しかしそれを主張したくはないという。まあそこまで深刻な事情というわけでもないので、細かく背景など聞かれても困るというのもあるだろう。
体調がすぐれない、という王道の理由を使いたいが、飲み会予定の少し前の日にそのうちのメンバー一人と会う予定があり(これは学校関連の用事であり、遊びにいくわけでないのでセーフ)、この前元気だったのにどうした?という話になりそうだ、ということで別の理由を考えてみようとなった。
「外に出るのが全部ダメなわけではなく、飲み会がダメということになるから、禁酒しているというのは?」
「それだとなんで禁酒?って理由聞かれない?」
「う~ん、以前飲んだときにうっかり不倫してしまったからというのでどうだ」
「なんでよ(笑)しかもうっかりって」
「何となく韻を踏んでる感じもして響きがいいな、うっかり不倫」
当然最終的には却下となった。夫が架空の不倫を提案する珍しいパターンだったと思うのだが…。
「あっ、食べれないっていう理由は?」
「確かに最近小食だけど、ちょっと前に一緒に食事してるんよね…」
「最近胃の調子が悪くてカスミしか食ってないとか」
「仙人か」
こちらも却下。
このあたりで妻も、こちらに頼ってもろくな理由が出てこないなと見切りをつけ始めている雰囲気。
「更年期でツライというのがやっぱり一番角が立たない気がするからそれにしようかな」「あ~なるほどね。まあ見た目は元気だけどね」
「まあ元気だけど更年期ではあるから」
「それ更年期か?」
結局更年期で食欲がどうこう、といった感じで断ったようだ。
にわかに我が家内で「うっかり不倫」というワードが流行ったのだが、子供たちはやめてほしいらしい。