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話を磨いて尖らせるには「場数」が必要だという話。

友達と年始に集まった話を前回書いたが、その時に「同じエピソードを何回も話すと磨かれる」という話題が出た。

大半は最近あった話や年末年始のテレビなどとりとめのない話をしていたので、別に全員でエピソードを披露したりはまったくしていないのだが「俺たちもおっさんなので同じ話をすぐしてしまうよね」ということから、「でもそのぶん鉄板エピソードってしゃべるのが上手くなってくる」という結論になった。

自分を例に挙げると、次のようなものだ。

以前交通事故に遭ったことがあり、しばらく左手に痛みが残っていた。ハンドルを握っていた手に衝撃がかなりあったためだ。相手方に非がある事故だったので治療費は保険で賄われるのだが、何回通院してもなかなか回復の兆しが見えず、「いつまでかかるのかな」という気分で当時けっこううんざりしていた記憶がある。しかも保険会社からは定期的に「そろそろどうでしょうか」という電話があるし。別にこっちも無駄に引っ張りたいわけではないのだが、痛みが残るのに「もう治療いいです」とも言いづらいという状況。ま、ちょっと長いがこういう前提として読んでください。

そして問題は病院にもあった。現院長の親(大先生と呼ばれていた)であるじいちゃん医師が担当になっていたのだが、これがとにかく話が長いし、自分の話ばっかりするのである。
「このまえ医師会のテニス大会に出て決勝に行った」とか
「ペアを組んだ先生が学生時代にインターハイでいいところまでいったことがある」とか「マスターズ部門ではいつもいい成績なんだ」とか

改めて振り返るとほとんどテニスの話を聞かされていたような気がする。大先生と呼ばれる人を前になかなか文句も言いづらく、毎回長い話を聞いていたのだが、ある時さすがにたまりかねて尋ねた。
「あの、こういうのどれくらいで治るものなんですかね。何回も保険会社からかかってくるし、時期が見えたらとは思うんですが」
すると大先生は、急に雰囲気が変わりおもむろにレントゲンを取り出した。
「これ、この部分わかる?骨の形が変形してるでしょう」
「は、はい…(これ最初に撮ったレントゲンか?)」
「ずっと変な力がかかったりすると、組織が癒着したりするんですよ」
「は、はあ…(そんなに重い症状だったのか?)」
「ちなみにこれは私の手なんだけど」
「(お前のかい!!)」

これ、あまりに振りがきいていてわざとらしいがホントの話である。大先生はその後しばらく自分の手の症状を語ったのち、こっちの症状については結局人によるのでわからないみたいな話だった。なんじゃそら。

上記の話をすると、友達からは
「仕上がってるねぇ~」
と言われたが、まあ何回も話してるからどんどんスムーズになってるのも事実。

芸人はエピソードトークが豊富で話すのも上手だ、という印象があるが、やはりそれらも何回も話してるうちに磨かれたものがあるだろう。相手の反応を見て削ったり、わかりやすくするために多少入れ替えたりとかもあるかもしれない。

もちろん元々の話のうまさもあるだろうが、それも何度もエピソードトークを披露してウケる勘所がわかってくるからではないだろうか。結局のところ場数である。

一般人だと普段エピソードトークを求められることなどないし、自分から「面白い話があるから聞いてくれ」というのはハードルを上げすぎる。そうやって経験の差が生まれてくるわけだ。

「芸人は面白いことばかり起こる」わけではなく、「面白くとらえたり話したりする能力が磨かれていく」ものなのだと思う。逆にそれができないと芸人って厳しいだろうな。オードリー春日みたいなのもいるけど。しかし最近、というか結婚後から春日のトークの腕が上がってきている気がする。会話が増えたからだろうか?

ちなみに自分のほかの鉄板エピソードは「息子が生まれたら血液型が違った話」と「自動車学校合宿から最終日に帰れなかった話」である。これはほんとに磨かれていると思う。

以前noteにも書いているはずだがどれかわからぬ。「自分の記事検索機能」があればいいのだが。

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かわさき(土竜)
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