今年もジャズを聴きたくなってしまった
「ジャズをやっているからには、普段からジャズばかり聴いているんでしょう?」とたまに聞かれるけどそんなことはない。
むしろ、そこらのジャズ好きと比べたら遥かに聴く頻度は少ないと思う。
他にも理由はあるが、デカいのは「ジャズ(特に自分がやっているニューオリンズジャズ)を聴くと、分析的に聴いてしまって他のことがそっちのけになってしまう」というのがある。
作業BGMとして聴くということがなかなかできないし、まして音楽を控えめにしている現状で聴こうものなら、演奏欲がたちまち暴走して大変に悶々としてしまう。
だから今年は特にジャズを聴いていない。
のだが、秋という季節を感じると、ジャズを聴かなければならないという衝動に駆られてしまう。
今年もそんな季節がやってきてしまった。
始まりの季節である春や、うだるような暑さの中でパーリー感のある夏という季節にジャズは似合わないと思う。
ポジティブめ、あるいは爽やかな音楽に身体を委ねて1年の前半期を楽しんでやろうぜという気持ちになりたい。
でもこれが秋になった途端、「間も無く年が暮れて、夜が長い日々がやってくる」というセンチな気持ちに寄り添ってくれる枯れた音楽が聴きたくなる。
(気障だのロマンチストだの言われても返す言葉はない)
もっといえば、秋から冬にかけてはジャズに関する思い出が多すぎる。
1番ジャズに触れていた学生時代を思い起こすと、学園祭があり、年1で行われる大きめなジャズフェスがあり、リサイタルがあって。
秋になると早稲田通りを歩きたくなって、源兵衛の焼売を頬張り熱燗を飲みたくなるのは、その頃の思い出がベースにあるからだ。
結論として、この時期のジャズを聴きたい欲は本能的付き合ってくしかないということになります。言い訳のように能書を垂れましたが潔く受け入れます。
そして思い切ってジャズを受け入れた今日、
何気なく初めて聴いたアルバムがとても良かった。
今日記事を書いた理由はこれだ。
外山喜雄さんは僕が所属していたサークルの大先輩で、そのリーダーバンド「デキシーセインツ」はその名の通りデキシーランドジャズをやるバンドだ。
したがって、ショーマンシップというか、一種のコミカルさをはらんだパフォーマンスが本来だが、このアルバムは違う。
ルイ・アームストロングを思わせるボーカル曲は1つもないどころか、どちらかといえばメロウな曲が並ぶトラックリストなっていて、それが自分にはとても新鮮だ。
奥様の恵子さんは普段バンジョーかピアノを弾くわけだけど、このアルバムでは終始4弦ギターを担当している。目新しいだけに留まらず、シンプルにめっちゃかっこいい。
いつもと違う渋いデキシーセインツのサウンドの主体になってるように思う。
そして何より、僕の大好きなトロンボーンプレイヤーである粉川忠範さんがフィーチャーされている曲があるのがとてもうれしい。
音数は最小限、アドリブもテクニックを見せつけるというよりはメロディーに寄り添ったシンプルなフレーズが多い中での説得力。
10曲目のIn a Sentimental Moodの境地に願わくばいつか辿り着けるといいなと思う。
1周して気づいたが、曲の多くをVic DickensonのShowcaseから引っ張ってきているようでアレンジも似ている。
知らなかったけど本家ShowcaseのpfがSir Charles Thompsonらしいので、そういう企画なのでしょう。
トランペットリーダーのバンドの作品でトロンボーンフィーチャーが複数あるのもだからこそだ。
カバーってある種バトルの側面があると思っているけど、このアルバムは本家に全然負けてない。
2024年の秋はこの聴き比べで始まりましたよという報告でした。
【告知】
今月のミントンハウスでのライブにも出演します。
CHBは結成当初トロンボーンとクラリネットの2管編成だったのですが、今月は久々にそんな2管編成でお送りします。
今回の記事で取り上げたアルバムの曲はやりませんが、自分なりに枯れ感を覚える曲をチョイスしたつもりです。
演奏を聴いた後に日暮れの早くなった西荻の街に繰り出すのも感傷に浸れてきっとよろしいものです。お待ちしております。
10/20(日)
14:00〜16:00
@西荻窪ミントンハウス
チャージ:¥2,500(ワンドリンク込)