近江汐莉、元々はヒトだった説【私を喰べたい、ひとでなし】
この記事は、「私を喰べたい、ひとでなし」好きによる汐莉の正体に関する推理(妄想)である。あと「私を喰べたい、ひとでなし」はタイトルが長いので、以下では「わたたべ」と呼ぶ。
「わたたべ」9巻までの時点で、メインキャラ3人の過去が描かれているが、近江汐莉に関しては未だ謎が多い。そもそも、汐莉自身が自分のルーツを知らない。以下は、本編からの抜粋である。
汐莉「私には親も兄弟もいません 気付いた時には波間に存在していました」(第6巻23話)
ところで、比名子の大親友である社美胡は、元は唯の野狐だったことが示されている(第8巻幕間)。また、バスケ部合宿先で比名子達が遭遇した千羽あやめは、元はヒトだったことが示されている(第5巻幕間)それから、比名子と汐莉が日帰り旅行先で目撃した無数の手は、海で非業の死を遂げた人間の未練や怨嗟の集合体だと、汐莉が解説している(第4巻14話)。
どうやら、「わたたべ」の世界には、生まれついての妖怪というのは存在せず、ヒトや動物が後天的に妖怪に変化するようだ(第1巻で汐莉が瞬殺した磯女や椿を含む化狸、有象無象の雑魚妖怪達のバックボーンは今のところ不明)
このことから、汐莉も元々はヒトだったと推測できる。もちろん、ヒトではなく、イルカとかアシカだった可能性もあるが、美胡及びあやめのケースを見るに、ヒト型の妖怪はヒト起源で動物型の妖怪は動物起源のようなので、汐莉(人魚)は元はヒトだったと考えるのが自然である。
そうすると、「じゃあ、親兄弟の記憶がないのは何故?」という疑問が湧いてくるが、これは単純に、記憶喪失が原因だろう。さらに「記憶喪失になった原因は?」という疑問も湧いてくるが、これについては、①単なる事故、②人魚に変化した際の副作用で記憶を失くした、③何者かの手によって記憶を消されたの3つの説が考えられる(他にもあるかもしれないが)。一つずつ検証していこう。
まず、単なる事故説から。強い衝撃を受けて記憶を失うというドラマで時々見かける筋書きだ。いかにも有り得そうな話だが、強靭な生命力をもつ汐莉が、強い衝撃を受けたくらいで記憶を失くすだろうか?実際、爆弾か何かで身体の半分以が吹き飛んだことを汐莉を覚えているのだから(第6巻23話)、この説は説得力に欠ける。
次に、人魚に変化した際の副作用説を検証する。とはいうものの、汐莉以外の人魚が一切出てきてないので、他の妖怪エピソードからの類推だが。美胡もあやめも、妖怪になる以前のことを記憶している。ならば、汐莉だって人魚以前の記憶を保持してると考えるのが自然だ。というわけで、副作用説も説得力に欠けると判断する。
最後に、記憶を消された説について。実は、妖怪が他人の記憶を操作できることは、本編で何度も説明されている。美胡は比名子の記憶を改竄して幼馴染だと思い込ませていたし(第3巻11話)、汐莉も、比名子の記憶の一部を消していた(第6巻24話)。なので、他の妖怪が汐莉の記憶を消した説は、それなりに説得力がある。
よって、消去法ではあるが、本記事では、記憶を消された説を採用する。
では、誰が、汐莉の記憶を消したのか?ここまでくると推理の手がかりは殆どない。ここから先は、私の純度100%の妄想だ。
汐莉の記憶を消した妖怪は、汐莉を人魚に変えた妖怪、つまり別の人魚である。人魚を生み出す方法は不明だが、少なくとも、人魚の肉を喰べた者が不老不死になることは明言されている(第6巻23話)。不老不死だけでも妖怪に片足っ込んだようなものだし、人魚の肉を喰べる+αで人魚に変化するのかもしれない。
おそらく、汐莉は自らの意思で人魚になったのでなく、半ば事故で人魚になってしまったのだろう。人魚の血肉のヒトへの影響が不安定であることは、汐莉の血液を飲んだ比名子が、事故後に体質が急速に変化したという汐莉の説明からも伺える(第5巻21話)。
ここまでの妄想から導き出されるシナリオは、こうだ。汐莉は人魚と接触した結果、偶発的に、自らも人魚になってしまった。望まずして妖怪になってしまった汐莉の精神的苦痛を和らげるため、その人魚は、汐莉の過去の一切の記憶を消した。だから、汐莉は親兄弟の記憶を一切持ってない。
以上が私の推理(妄想)だ。今後汐莉の過去が掘り下げられれば、私の推理が妥当だったか否かが判明するだろう。ただ、物語が佳境に入った感があるし、汐莉の過去エピソードはもう出てこない予感もある。出てくるとしたら、汐莉に自爆特攻した不老不死の少女の方か。汐莉とともに爆発四散した彼女だが、数十年の時を経て完全再生した可能性は十分ある。そして、汐莉に強い恨みを抱く彼女が、新たな復讐劇を繰り広げる……というのは、あり得ると思う。