東工大が低温アンモニア合成に成功
◉東工大の服部真史特任助教と原亨和教授らが、安価な鉄触媒と200度以下の低温で、アンモニアを合成することに成功したとのこと。アンモニアの合成には、鉄主体とした触媒上で水素と窒素を400〜600度の状態で直接反応させる、ハーバー・ボッシュ法が画期的で、現在でもコレが主流なんですが。半分以下の温度で可能となると、これはさらに画期的です。次世代の発電は、核融合発電でも再生可能エネルギーでもなく、アンモニアが握っているのかも知れませんね。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、アンモニア水のパッケージです。
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■なぜアンモニアなのか?■
以前からアンモニアの話題は、何度かエネルギー関連のnoteで取り上げていますが。化学肥料の原料というイメージが強い アンモニアですが、実際には燃料として利用できます。ただそれほど、可燃性性が高いわけではありません。なので、現在は火力発電で別の燃料と一緒に混ぜて燃やす、混焼の研究が進んでいます。また、アンモニアは1個の窒素原子と3個の水素原子が結合しているので、水素を安全な形で運ぶ物質として期待されています。
水素は、飛行船ヒンデンブルグ号の火災事故でも知られているように燃えやすく、また気体では体積が大きくなり、液体にするためには 超低温にする必要があります。何しろ融点がマイナス259.14度と、かなりの超低温にしないといけません。絶対零度から14度しか違いませんからね。ところが アンモニア だと、マイナス33度で液体ですから。それこそ、古代エジプトの時代から知られていますから、保存や運搬の方法もかなりのノウハウが蓄積されています。
もちろん、アンモニア自体は刺激臭もあり、取り扱いはそれなりに注意が必要ですが。しかし、水が2個の水素原子と1個の酸素原子からできていることを考えると、3個の水素原子を持つアンモニアは、とても便利。ハーバー・ボッシュ法によって、ハーモニアが安価に大量生産できるようになり、化学肥料の生産量が飛躍的に増えて。間接的に人類の飢餓を救った面もあります。自分らがガキの頃は、人類は近い将来、食糧危機に見舞われる……なんて言説が、当たり前のように語られていましたが。
■混焼で二酸化炭素を削減■
ここら辺の、食糧危機に対する恐怖は、川内康範先生原作の『コンドールマン』や、永井豪先生の『デビルマン』にも、顕著に現れています。実際には、作物の品種改良や、化学肥料の発達と大量供給、省人力化で、昔とは比べられないほどの高効率で食料生産ができるようになっています。もし、アンモニアがエネルギー問題も解決するならば、アンモニア様々ですね。アンモニアに関しては、こちらの混焼の研究の話題も、ちょうど出てきています。
日本の石炭火力発電は、かなり高効率で燃費が良く、さらに二酸化炭素や硫化硫黄などを出しづらい・出しても回収する技術が、とても進んでいます。ですから、石炭とアンモニアを混焼させる技術開発は、二重に意味があることです。現在の火力発電は天然ガス・石油・石炭が主な燃料ですが。天然ガスはロシア連邦軍によるウクライナ侵攻によって、供給が不安定になり。ヨーロッパを始め世界中で、電気料金の値上がりにつながっています。もちろん日本も。
■石炭とアンモニアと水素■
自分たちが小学生の頃から、石油はあと30年でなくなると言われ続けて……半世紀 近く。いい加減、インチキ臭いことはばれていますが。それでも 石炭の方が 埋蔵量が石油よりも大きいのは、多くの科学者が認めるところです。自分は、地球の表面の30%ほどにすぎない 陸地の、さらに限られた場所にしか形成されない森林由来の石炭が、70%を占める海洋で形成されたであろう石油よりも、多いとは思わないのですが。それでも 石炭の有効活用は大事。
核融合発電が10年以内に実現したとしても、向こう100年は 水力発電や 火力発電も重要な発電方法であり続けるでしょう。いろんな発電方法で、リスクを分散させておくに越したことはありませんからね。石炭はその点で、品質にばらつきはありますが、石油ほど算出される地域が偏っていませんから。安定した輸入という面から考えても、かなり重要な燃料だと思います。さらに、安全性が高い第4世代原子炉である、高温ガス炉との絡みもあります。
高温ガス炉はその名の通り、超高温が出せるので、それを利用した原子力製鉄さえ、可能なのですが。その超高温を利用した水素生成や、石炭の液化も期待されています。そう、アンモニアの生成や混焼は、高温ガス炉と非常に相性がいいのです。接近戦が得意な八極拳と、遠距離戦を得意とする劈掛拳を併修すると、相補的で良いように。2030年代に実用化される高温ガス炉とアンモニア・水素・石炭の複合的な利用は、エネルギー問題の大きいな解決策になりそうな気がします。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ