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なぜ福岡ソフトバンクホークスは儲かるのか?

◉さて、日本シリーズ進出の夢も立たれましたし、ホークスのネタを。昔はパ・リーグのチームは、親会社から広告費という名目で赤字を埋めるのが当たり前でした。何億もの赤字を出しても、NHKでさえ近鉄とか日本ハムとか、企業名を出してくれますし、オールスターゲームや日本シリーズで注目を浴びれば、それでいいという感じでした。誤解している人もいますが、福岡ソフトバンクホークスは親会社からの補填なしで、莫大な黒字を出し、それでチームの選手やスタッフに還元するという、理想的な状況です。

【プロ野球で断トツ320億円! なぜ、福岡ソフトバンクホークスは儲かっているのか】ITmedia

 プロ野球球団の中でも、断トツの収益力を誇るのが、パ・リーグの常勝軍団「福岡ソフトバンクホークス」(以下ソフトバンク)です。スタジアム内(野球の成績)でも、スタジアム外(スポーツビジネス=売上規模)でも、群を抜いています。

 コロナ前の2020年2月期決算での売上高は、324億9300万円。この金額は、日本どころかアジアのスポーツビジネス史上で最高益であり、ソフトバンクは“アジア最強のスポーツチーム”なのです。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2209/30/news239.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、福岡ドームの写真です。

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■健全な黒字を生み、成長する■

福岡ソフトバンクホークスの売上324億9300万円(=当時のレートで約2億3800万ユーロ)を、コロナ前に当てはめると、世界のサッカークラブの16位に匹敵しするんだそうで。思うに、世界的なプロスポーツと比較しても、悪くない数字。いや、世界的にも良い数字でしょう。孫正義オーナーの方針で、福岡で儲かったお金は、福岡に還元するという形ですから、地元との関係も良好です。孫オーナー自体が、佐賀と福岡で生まれ育った、九州の人間ですからね。チーム買収のときも、まっさきに福岡県知事に挨拶に行くなど、ファンあっての球団とわかっていますし。

・マッチデー収入(チケット、グッズ、飲食&ホスピタリティー):47%
・放映権:9%
・コマーシャル(スポンサーシップやライセンシングなど):44%

同上

ここらへんの情報も貴重です。思ったより、放映権料が少ないですね。昭和の時代は、テレビの放映権料が莫大で、一般に読売ジャイアンツの放映権料は1億円が相場と言われたものです(日本テレビが中継するホームゲームは美内価格で半額の5000万円)。120試合制度でも、1チーム24試合でホームが12試合ありますから、セ・リーグはそれだけで12億円の収益。南海ホークスがダイエーに身売りされた時は、球団自体が30億円で売られたわけですから、この利益は大きかったでしょうね、昭和の時代は。

■ビジネスモデルの転換=回帰■

ダイエーからSoftBankに売却された時は、200億円とも言われていました。その時点では、パ・リーグ随一の人気球団になっていましたからね。それが、今は年間300億円を稼ぐ子会社になったんですから、SoftBankに身売りされて、本当に良かったと思います。少なくとも、現時点では。未来はわかりませんが。今売りに出せば、4000億円ぐらいですかね。確かに、ダイエーが売り出した球場を870億円で買い戻すなど、親会社の出費は大きかったですが。その価値はあったわけで。

そして、放映権料に頼る昭和のビジネスモデルから、エキサイティングな試合をして、球場に客を呼び、その入場料と飲食物の売上、グッズの販売で利益を出すという、興行の基本に回帰したわけで。地元のローカル局の放映権料なんて、微々たるものですからね。当てにしてはいけません。その日の興行で客を集める。そうすると、じゃあ注目度の高いホークス戦に、広告を出そうかという地元企業も出てくるわけで。日銭が47%と言うのは、健全ですね。福岡ドームを大改修して、5万人はいるようにしたいですわ。

ビジネスモデルの転換に興味がある方は、コチラのnoteもどうぞm(_ _)m

■経営陣の陣頭指揮とスタッフ■

しかも、経営陣が素晴らしい。プロ野球は昭和の時代、親会社から出向した球団社長が仕事をしていましたが、元々野球が好きなわけでもないので、ルーティンワークをこなすだけ。ところが福岡ソフトバンクホークスの後藤芳光社長は、SoftBankグループのCFO(最高財務責任者)でもある、経営のプロです。そして、そのトップの下に集う営業担当者数は、約50人という大所帯。単に数が多いのではなく、バンバン稼いでるので、人手が足りず、補充していってこの大所帯に。

営業周りと言っても、単にスポンサーを探して動き回り、頭を下げるのではなく。ホークスは鷹の祭典とか、乳癌のマンモグラフィー検査を推進するピンクリボン運動と提携したタカガールデーとか、仕掛けもしていくんですよね。みうらじゅん先生の著書に『「ない仕事」の作り方』があります。それまで世の中に「なかった仕事」を、企画・営業・接待も全部自分でやる「一人電通」という手法で、作ってきたわけで。それと同じで、興行の原点回帰しながら、同時に新しいビジネスも切り開く。こういう視点って、大事ですよね。

■PLMの深謀遠慮と共存共栄■

ない仕事を作る、という意味では、パシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)も、良い仕事をしていると思うんですよね。これは、福岡ソフトバンクホークスが音頭を取って設立された会社で、球団単体ではできないけれど、パ・リーグ全体でやれるコラボレーション企画などの仕事を見つけてきて、収益をあげようという会社です。パ・リーグTVの配信事業や、ホームページの一元的な製作など、実に頑張っています。これが将来的に100億とか200億とか儲かれば、面白いんですけどね。パ・リーグ8球団制度も、できちゃうかも。

興味深いのは、PLMはまずホークスが実験的にやってみて、これはいけると地均ししてから、PLMに参入してもらうんですよね。儲かるかわからない企画は、失敗のリスクを引き受ける。そして、成功しそうなら利益を他球団と共有する。こんなこと、過去にはできませんでした。昭和の時代、何かあるとリーグ脱退をちらつかせて、別所引き抜き事件や空白の一日事件など、無理難題を言う某球団が球界の盟主気取りでしたが。盟主を気取るなら共存共栄を目指すべきではないでしょうかね。

さらにPLMは、スポーツ業界に特化した人材紹介エージェントサービスも、やっていますね。ホークスをクビになった選手だけでなく、アビスパ福岡やバスケットリーグなど、他のプロスポーツも視野に入れており、偏狭なセクト主義がないんですよね。こういう部分が、IT系の企業の合理性というか。昔取材したある企業も、日本の企業の悪しき部分を1つずつ潰していて、しかも社内にゲーム機と大画面液晶テレビのあるゴラクルームもあれば、バーカウンターさえあるという。そういうレクリエーションも含め、合理的なんですよ。

■心の機微を大事にする経営を■

南海ホークスを追放され、長らく確執があった野村克也監督が、東北楽天ゴールデンイーグルスでの監督通算1500勝を達成したとき、孫正義オーナーから祝電が贈られました。ヤクルトスワローズでも優勝と日本一を何度も達成し、阪神タイガースでも監督したのに、どこのオーナーも祝電なんか送ってくれなかったのに。選手・監督として直接のつながりがないはずの福岡ソフトバンクホークスが、偉大なOBとして偉業を称える。ノムさんは感激し、それ以降はホークス主催のイベントにも、よく出席されるようになりました。

ノムさんは孫正義オーナーを評して、この人はもっと大きなところを見ていると、感服されたとか。ホークス買収のときも、本拠地移転するのではと不安な福岡のファンの気持を真っ先に考え、福岡県知事に挨拶に出向いたのは前述のとおり。また、王監督に続投を依頼する初の対面の時は、座布団を外し手をつき、続投をお願いしたとか。どっかのオーナーの名言「たかが選手が」ってのが、オーナーの本音でしょう。でも、相手の心の機微をわかっているからこそ。オーナー自体は胡散臭い部分もありますが、やはり傑物は傑物。

ホークスの手法を他球団も取り入れ、黒字化する球団も増えましたし。この感じで、パ・リーグ8球団制、目指してほしいですね。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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喜多野土竜
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