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《A版》勇気の証

【モグゆくA版 (2007.12 - 2010.12)】
【Ameba Blogにて投稿のブログより】


その日は、おばあちゃんの為に親戚の家へみんなが集まった。
僕が3歳だった年の“母の日”。みんなでワイワイ食事。
その後、集まった家の高校生のお兄さんが塾に行くため家を出た。

ドボンッ。
自転車で出ようとしたお兄さんは川に何かが落ちた音を聞いた。
この家は崖っぷちにあって、駐車場から下へ続く階段があり、川に降りられる。ただ川から駐車場までの高さは建物4階分くらいあった。

お兄さんは今の物音が気になったけれど塾に遅れては困るので出発。数分後、塾の前に着いたお兄さんはやっぱり出発前の物音が気になってしまっていた。

お兄さんは塾に入らず、来た道を戻った。
家に着き、上から川を覗きこむそして急いで川へ降りた。デカい岩に頭をぶつけながら流されまいと必死に泳ぎ続ける少年がいた。

前日の大雨で荒れる川を泳ぎ、お兄さんは少年を助ける。
玄関にみんなが集まった。一瞬、みんなは少年が誰なのかわからなかった。少年は何カ所も傷をつくり。誰かわからないほど真っ赤に顔を血で染めていた。

そして、やっとみんな気づいたんだ。
その少年が、さっきまでみんなの中で、笑顔で食事していた3才の子だという事を。

歳を重ねれば重ねるほど、あの時の事を深く考えるようになってきている。
3才だよ、3才。4階の高さからだよ?
もう辺りは真っ暗だよ?荒れ狂う川で10分以上だよ?

すごいな。あの少年にはそれができたんだよ。
あの少年は決して生きるという事を諦めなかったんだよ。

そして、あの少年は幸運なんだと思う。
4階の高さから落ちた先が岩場でなく川だったから。
デカい岩があったおかげで流されなかったから。
助けに来てくれる人がいたから。
ぐったりしてるその体を抱きかかえてくれる人がいたから。
抱えられてる、その姿を心配し、そばにいてくれる人達がいたから。

負けちゃいけない。
あんな小さな少年に負けるなんて、大人として恥ずかしいじゃないか。

そう感じるから、どんな事だってやっていける。
どんな事だって挑戦していける。

大丈夫、心配いらない。ちゃんと、やっていける。
僕はきっと、あの少年と同じくらい幸運だろうから。


【Writone】
“勇気の証”をオーディオブックでどうぞ。

アクター:小宮千明

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