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キラキラとは程遠い。6
早退をした次の日。私はいつもと変わらない時間に起きて、歯を磨き、顔を洗って、朝ごはんを食べた。そしてきちんと学校に行った。
休んだらナツミに負けるような気がして、それだけは絶対に嫌だった。
緊張で指先がぴりぴりと痺れていたけれど、その手でドアを開け教室に入る。一緒に行動している友達たちは私の体を気遣いながらも、何事もなかったような変わらない態度で接してくれた。彼女達からは、私が昨日帰ったあと数件メールが入っていた。体の心配と、あとはタケオと同じように何もできなくてごめんね。という内容だった。
学校で居場所がある。それだけで、自分の存在を許されているような気がした。何に許されるのかはわからないけれど、確実に存在する何かに。
私が毅然とした態度で生活に溶け込んでいるのを見て、ナツミとその仲良しグループはほんの少し面食らったようだった。時折不満そうな視線を私に投げかけてはくるものの、直接つっかかってくることはない。
私のことが心配で、目が覚めるまでずっと待ってくれていたタケオは、相変わらず教室の隅で影のようにひっそりとしている。
ナツミと対峙していた時、私は紛れもなく孤独だった。人は沢山居たはずなのに、誰も助けてくれない。味方なんていないと思っていた。真夏の教室で、凍りつくような恐怖に心がへし折られかけていた。そんな私をタケオが強く引き上げてくれた。あの保健室で、不器用ながらも。
私は彼のことをもっと理解する必要がある。それは「私にしかわからない魅力」を知るための第一歩だと思った。
放課後、教室を出ていこうとするタケオに声をかけた。
「今から部活?」
タケオはひどく驚いた顔をしながらも足を止めた。私が教室で彼に話しかけたのは初めてかもしれない。
「うん。ごめん部活。あ、ユメちゃん体調大丈夫?」
「へーき、貧血慣れてるから。別にどうってことないよ」
「そっか。良かった」
そこで会話が途切れた。クラスメイトが遠巻きに私たちを見ている。とりわけナツミは軽蔑するような視線を私に投げかけていた。でも、別にどうでも良い。この教室で私を救ってくれたのは彼だけだもの。
「ところでさ、部活で何の絵描いてるの?」
間をつなぐだけの質問だったのに、タケオは露骨に表情を曇らせた。
「いや、そんな、別に言えるほどのものは・・・。書いて、ない、です」
歯切れの悪い返答に私の好奇心はこそばゆくくすぐられた。彼は一体どんな絵を描くのだろう。
「見せてよ」
身を乗り出すと、タケオは間を取るように身を引いた。
「あっ、えっと・・・」
「言えないの?」
「いや。その・・・ごめん!!」
タケオはそう言うと駆け出していった。走る。という言葉が到底似合わない、へんてこな走り方だった。
開け放たれた教室の窓から、夏の匂いが入り込んでくる。放課後のざわめきを埋めるように蝉の鳴き声がうるさかった。体を動かすなんて大嫌いなのに、足が動き出す。私は駆け出した、タケオの後を追って。