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AIによるイラスト生成サービスについての雑感
・4300字強
・イラスト作画AIについて、現状は「アレはいいよね、コレはだめだよね」というラインを皆で話し合いながら決めている段階だと思うが、その議論は専ら「快不快」が論点になっているように思える。
・皆が節度と良識を持ってほどよくAIを使ってしまっては法整備がいつまでも整わないと思うので、一旦事件や問題が発生して法整備をデバッグしてくれた方が(絵で飯を食っているわけではない私からしたら)ありがたい話だと思う。
・現在発生しているイラスト作画AIの問題は、私の知っている限り3件ほどある。それに対して私が意見を述べるだけの回です。
1.「mimic」という他人の絵柄を学習して模倣するAIイラスト生成サービスにおいて、他人の絵を学習させて模倣するユーザが出現し、「自分の絵を模倣されたくない」という声がネットで増えるなど、風評が悪くなったため一時的にサービス停止した。
【mimicの今後の展開について】
— mimic(ミミック) (@illustmimic) September 14, 2022
先般はmimicベータ版へ多数のご意見を頂戴し、誠にありがとうございました。
皆様のご意見を踏まえた、mimicの今後の展開について説明させていただきます。長文となり恐縮ですが、ご一読くださいますようお願い申し上げます。 pic.twitter.com/aYwY0a5bRf
他人の絵を学習させて出力した絵をネットに上げる行為は、「mimicの利用規約に反している」という点において悪なのけど、その行為がネットで叩かれる際の論点はそこではなく、専ら「他人の絵柄の絵を出力するなんて盗作ではないか」という倫理的/法的な点にある。
利用規約には反しているけど、しかし著作権侵害ではないと個人的に思う。絵柄に著作権があったらたまったものではない。
法の話だけで言えば、四年以上前の法改正によって「AIの開発のための学習用データとして著作物をデータベースに記録する行為」等も権利者の許諾なく行えることになってるみたいです(専門の人間ではないので間違ったこと言ってたらごめんなんだけどネ)
実は日本の法律上、AI学習禁止ってできないんですよ
— U_Yawata/八幡P (@U_Yawata) August 29, 2022
権利制限規定、つまり”著作者の許諾なくやっていいこと”リストに”AIの開発を行うために学習用データとして収集して利用”が入ってまして
日本の法律上は他人の絵をAI学習させるのは合法なんです
文化庁のQ&Aにマジでそう書いてあるんで読んでみて↓ https://t.co/LYwnUjBj2W
日本の著作権法上での自動生成AIの扱いに関して、現在ネットで最も信頼のおける考察はこの法律事務所の出してる2つの記事だと個人的に思っているので、興味があったら読んでみて欲しい。
Midjourney、Stable Diffusion、mimicなどの画像自動生成AIと著作権
Midjourney、Stable Diffusion、mimicなどの画像自動生成AIと著作権(その2)
さすがに自動生成AIで裁判沙汰になった例はまだないよね? あったら知りたいけど
・人間は誰でも他人の絵柄を見て学習し、自分の絵柄に落とし込んで絵を描いている。オリジナルな絵というのは原始人が初めて描いた絵だけなのであって、それ以降の絵は全て他人の絵柄に大いに影響を受けて描かれている。他人の絵柄を一切見たことがない絵師だけがmimicに石を投げるとよい。
彼らがmimicに怒っている理由は単に、自分の長年の努力の結晶が、一瞬のうちに無機物に模倣されるという屈辱が気に入らないだけなのではないだろうか。
mimicと同じようなサイトが海外にできて、そのサービスが止まることなく動き続けたら日本の繊細な絵師たちはどう反応するのかは少し気になる所。
2.現在流行中の「Novel AI」の学習元データの中に「Danbooru」という無断転載画像の多いサイトからの画像も含まれているらしく、賛否の声が上がっている。
とりあえずNovel AIがイラストの無断転載サイトであるDanbooruを学習元データにしていることは今後めちゃくちゃ問題になるだろうな…
— フガクラ (@fugakura) October 3, 2022
いくら個人がAI学習を禁止しても、イラストを無断転載されたサイトから学習データを引っ張ってロンダリングが可能になっているのが現状#NovelAI#NovelAIDiffusion https://t.co/fNVAYhP4hj
また、NovelAIはDanbooruに掲載されていない絵であっても、PixivやTwitterからもイラストを収集している可能性が高いと言及。ベースとなったAIモデル「Stable Diffusion」についても「50億枚の絵をReddit、Pinterest、Facebook、Google画像検索などからも学習データとして収集している」と説明。
とあるAI(あるいはとある人間)の学習元が違法サイトの画像だったとしても、出力される絵からはそれを推測できないし、出力された絵が学習元の絵と十分に意匠が違えば、著作権法違反だと主張するのは難しい。
とあるAI(あるいはとある人間)が絵を描く際の学習元が違法サイトだと知れれば嫌悪感を催すのはわかるが、それをどうにか著作権法と結びつけようとするのには無理があると思う。
どうやらNovelAIのサーバがハッキングされてモデルやら何もかもリークされてばら撒かれたらしい。ハイ、何かもう、終わりましたね。全部が
— 海行プログラム (@kaigyoPG) October 7, 2022
モデルはbittorrentで広がってて、4chanでWeb版と比較して試してる人たしかにいるっぽい #NovelAI
— クリプト料理長🍙 (@cryptocoinchef) October 7, 2022
prunedされたモデルだから、正式版とは結果が違うって言ってる人がいる pic.twitter.com/88LRkV6Vvk
・そのNovel AIのモデルがリークされ、Novel AIを再現し始める人が多々出現しているらしく、”幕開けてんねぇ” と思った。
3.DLsiteにて、AIに描かせたと思われる大量のスケベ絵をまとめてCG集として販売するサークルが出現する。否定の声が多い。
DLsiteのCG集を発売日順に並べるとAIで作ったCG集を大量に売る地獄のようなものが見れる pic.twitter.com/dO828YspDm
— しめじろう (@shimeji12171) October 6, 2022
〝イラスト毎に目の色が違う・差分はないのに基本CG枚数はやたら多い・サンプルだけでも一枚一枚のイラストの雰囲気が違いすぎる・サークル運営開始がここ数日以内〟
— 蟹紅茶 (@kanikoucha) October 6, 2022
イラストAI発表からたった数日でそんな感じのCG集がDLsiteに乱立してるので、もうマジで終わりだよ。 pic.twitter.com/SygeHhIkx7
地獄/終わりなどと言われ嫌悪されているようだけど、一体なぜ地獄/終わりだと思うのか? と問われれば言語化は難しいと思う。
絵を描く努力してこなかった者が、絵を描く努力をしてきた人間と同じシノギを得て、シマを荒らしている点が問題だが、これはAIの出現に伴う成長痛なのであって、時間が解決するようにも思える。
現在ではエロCG集は千円前後するのが普通だが(もちろんピンからキリまであるけど)、そこが需要と供給の釣り合う現在のラインなのだろう。しかし誰でも気軽にエロCGを量産できるとなると、供給が増え、価格は数十円レベルにまで落ちるのではないだろうか。
漫画やCG集を一作品描くのに数週間かかるような時代は去り、それらは秒で作って大量に売られるものになるかもしれない。その中で優秀な作品以外は淘汰されていくから、絵師に代わって呪文師が、AIの出力画面と格闘しながら秀逸なエロ画像の生成に勤めるかもしれない。
これを感情論で批判するのは「Excelでマクロを使うな。俺らはちゃんと電卓で計算してるんだぞ」と言っているオッサンと同じくらい時代遅れだ。遅かれ早かれ、絵師たちの努力の結晶がいつか技術に敗北するのは仕方がない。
絵が全く描けない知り合いがAIを使って絵師デビューしたんだけど、僕がペンで描いたイラストより上手いんだよなぁ
— VEA@ケモ耳絵描き🎨 (@vea) October 7, 2022
そんなの絵師とは認めたくないんだけど彼曰く
「画材の違いだよ。昔の人は筆、君はペン、僕はAIという別の画材を使っただけで同じ絵師さ」
そういうもんなのか?
・これのリプ欄や引リツはAIに嫌悪感を催す方々が集まり、様々な論点からAIで絵を描く人間を否定している。
絵の価値というのは観る人間が決めるのであって、その絵がどれだけ苦労して描かれて描かれたのかはその絵の価値の高さとは関係がない。
AIに対する倫理的な議論が(未来に比べて)未熟な現代だから、このようなExcelマクロ叩き問題が発生するのも仕方ないことなのだと思う。世代交代するほどの時間が流れれば、mimicが叩かれていた風潮なども、男尊女卑や黒人差別のように過去の倫理問題とされていることを願う。
・Dlsiteでは今のところAIに対する対応はないみたいだけど、Fanza(アダルトコンテンツの販売サイト)ではもうAIへの対応をしているらしい。
FanzaがAI作品への対応。はやい!
— はるきち haruhisky (@haruhisky1) October 7, 2022
・【AI生成】タグの付与の必須化
・作品説明へのAIサービスの利用、使用しているAIサービス名の記載の必須化
妥当な落としどころだと思う
Pixivとか、他のサービスもこの方向で行くのかな?
(なおSkebはAI使用したイラストの納品自体が規約違反) pic.twitter.com/V8vRzua3IY
・Skeb(イラストの有償依頼サービス)はAIの作成したイラストの投稿を禁止している
・Skebにファイルを納品する際も「この作品はAIが生成した画像やそれらに加筆したものではないことを保証します」という確認をされるらしい。
・FANZAもSkebも、「AI」と表記しているけど、AIとはどこまでがAIなのだろう。
ペイントソフト内蔵のツールで加工された絵や、あるいは線画抽出でアナログ絵から作られたデジタル絵なども「AIが生成した画像」ということになる。今も昔も「AI」の明確な定義はないため、「AI」という表現でなく「ディープラーニングによるAI」などの表現に置き換えた方がよいように思う
・「AIの描いた絵はこう扱ってね」という取り決めを作った所で、AIの絵と人間の絵は見分けがつかないのであって、取り決めが守られるかどうかは利用者の良心に委ねられるとしか言えないだろう。
・絵を買う客としては ”抜ける絵” でさえあればそれを描いたのが人間かAIかなどはさしたる問題ではない。現状、アダルトコンテンツ販売サイトにAIが蔓延ることによる問題らしい問題と言えば、現クリエイターの収入が減る問題くらいなように思える。
以降はただのSF的な妄想に過ぎない。
考えられる未来A:
無料の作画AIを使った絵を販売しても人気が出ず、ネットの海に流れていくもんだから、ガチの呪文師は有料のAIを買う。それも、ネットサービス上のAIを使うと遅いので、プロの呪文師は自前のマシンでAIを動かしながら試行錯誤することとなり、やはり趣味でAIイラスト作画をしている人間と職業でAIイラスト作画をしている人間では作品の出来が大幅に違う。
考えられる未来B:
誰でも同じ画力を持てる未来になった場合、妄想の解像度勝負になる。現在では「エロ漫画の構成を考える能力は高いが、作画能力がない人間」が日の目を見ることはないが、未来ではそういう人間も人気作家になり、脚光を浴びることもある。
考えられる未来C:
SNSの住民が呪文師をフォローする主な理由は「その人ならではの呪文からしか得られない美しい絵があるから」になる。呪文師は呪文を練る際に「ドレスを着たロシア人25歳女性が昼下がりの自宅のコテージで躍っている。ドレスのカラーコードは#459327で、右奥ではレースのカーテンが波打って風が射している。上から青のオーバーレイをかけ、古びた絵のようなノイズを入れる。右手はその人から見て右斜め上47度に曲げ、そこから肘を87度に曲げ、そして親指は……」などと詳細に練ると時間がかかるため、結果として絵師が同じ時間を費やして絵を描いても同等のフォロワーはついてきて、同等の金銭を落としていくことになる。
考えられる未来D:
ディープラーニングを用いたAIを誰でも作れるような統合開発環境が普及し、著作権フリーの学習データも気軽に手に入る環境になり、高校生でも50人に1人くらいは「AI師」として、自分なりの学習データと学習方法で画像生成AIを作れるような世の中になる。
例えば「汚れた部屋」と「キレイな部屋」の二枚一組の画像が膨大な量あれば、それを学習させて「あなたの汚れた部屋を綺麗にしたらこうなります」と提示するAIや「あなたの綺麗な部屋を汚すとこうなります」と提示するAIも作れる。そういった二枚セットの画像を募るサイトもできる。
自分の顔写真を見せるだけで血液型や生年月日などをピタリと当てて来るAIができて、当然それに他人の顔写真を見せるユーザも出現してmimicと同じくらいの騒ぎになったりする。
他人の写真や動画を入力すると、その衣服が取っ払われた写真や動画を出力する「剥ぎコラAI」ができて、これは法規制したい所だが、規制した所で、ローカル環境で個々人が同じAIを作れるので規制しようがない。ネット上には著名人が剥かれた写真や動画が跳梁跋扈する←これに関してはそんなにSF的な妄想でもなく、一年以内には実現するのではと思っている
・おわり