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深セン活動報告まとめレポート

この記事ではTech Quest -Shenzhen-のアウトプットレポートとして、4日間で感じたことをまとめたいと思います。

1. 深センのイノベーションの変遷
2. QRコード決済について

深センについてのデータや情報などは、先に深センに行ってレポートを書いている方の記事が参考になるので、参照ください。
http://balius-1064.hatenablog.com/entry/2019/02/14/000617

簡単に基本的な深センの歴史について触れておくと、

- 1970年代までは小さな漁村で人口も30万人程度
- 1980年代に経済特別区に指定され、急速な発展
- 2008年に金融危機により、外資企業が撤退
=> 大衆による起業、万人によるイノベーションというスローガンが登場
=>  労働集約産業から、ハイテク産業への転換
という感じで今に至ります。

1. 深センのイノベーションの変遷

僕はこの四日間でハードウェアのシリコンバレーと言われる深センを過ごして、深センのイノベーションがものづくりから価値づくりに移行してきていると感じたので、そこについてまとめたいと思います。
ですが、深センでのイノベーションの前に、まずソフトウェアのイノベーションについて書きたいと思います。

ソフトウェアのイノベーション

ソフトウェアのイノベーションはインターネットによってもたらされます。
インターネットが登場する前は、サービスを立ち上げるために、ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアと多くのレイヤーに気を取られ、一つのプロダクトを作るのに多額の資金が必要でした。
資金を集めるために、MBAを持つ人が計画をたて、投資家からお金をもらって、エンジニアを雇ってプロダクトを作っていました。

一方インターネット登場後は、クラウドサービスの登場やコミュニケーションコストの低下、ムーアの法則によって、ソフトウェア業界においては新規事業を立ち上げるコストはほぼゼロになりました。
このことにより、アイデアを形にするまでのコストはほとんどなくなり、大企業から学生や起業家にイノベーションの場が移行したと言われています。

ハードウェアのイノベーション

そして深センという場で、ソフトウェアのイノベーションと同じことがハードウェアの世界でも起きました。オープンなIPシステムによって、ものはコピーされる前提で作られ、ハードウェアを作る初期コストがゼロに近づき、試作や流通、製造のコストが下がり、イノベーションの場がソフトウェア同様学生や起業家へと移行しました。

深センでは、1日目の記事で紹介した電気街にあるように、ウェブサイトを作るかようにスマホを作ります。とりあえず模倣して、あるいは本を読んで作って、露店で売り、他の人が作ったものをみて、また作り、売るといったことを繰り返します。まさにソフトウェアにおけるアジャイル開発が、深センではハードウェアの世界で起きています。

こうしてものづくりの街としての深センが出来上がってきたと思います。

ハードウェア✖︎ソフトウェア

今回の滞在で、僕は深センが単なるコピー都市、ものづくり、ハードウェアの街から変化し、価値づくりを行う都市になってきていると感じました。

ものを簡単にコピーできるということは、逆に簡単にコピーされるということでもあります。そして、簡単にコピーされるものでは長期的な利益は見込めません。例えば、スマホケースに自撮り棒がついたようなものはイスラエル人がデザインに一年かけ、やっとのことで市場に出しましたが、その数日後にはコピーされ、ネットで似たような商品が安く売られるということがありました。長期的な利益を得るためには、他社が真似できない差別化が求められるようになったのです。

そして近年DeepLearningやその周辺の盛んな研究によって、AIと呼ばれる領域が盛り上がっています。僕は今回の視察で、このソフトの技術とハードウェアのエコシステムの融合によって、深センのものづくりは次のフェーズに移行していると感じました。

AIという領域では研究ではアメリカが常に主導してきました。しかし、社会実装という面では、以下の理由で中国・深センが果たす役割、優位性というのは大きいと考えられます。

1. 市場規模の大きさから、十分すぎるデータ量が得られる
2. プライバシーの観点から欧米諸国はデータの利用に制限がかかる
3. ハードウェアのエコシステムから社会実装が早い
4. エンジニアの豊富な労働時間(997という9時から9時まで週7日間という言葉があるくらい)

そして実際に今回の視察でその傾向は節々で感じることができました。
南方科技大学の学生もソフトウェアへの興味関心はいまやハードウェア以上でした。
また、ニコ技深圳コミュニティの管理人の高須さん曰く、深センの本屋もほんの数年前までは2, 3日後にはお金になるiphoneの直し方の本が多かったのに対し、現在では2, 3年後にお金になるようなレベルの高い技術の本が中心に置かれるようになったそうです。
また、PCBGogoに行った際も、ハードウェアの製造においても、設計書から実際の配線を決める部分を画像認識を用いて他社と差別化しようとしているという企業のお話も聞きました。

深センでは、いたるところ自動販売機に顔認識で購入する機能が実装されていましたが、これもまさにソフトウェアと、ハードウェアのエコシステムによって素早く社会実装された例かもしれません。

SIMMに行った際も各社、AIを用いて他社と差別化していることが伺えます。

DJIのドローンはまさにソフトウェアとハードウェア両方においてうまく差別化をはかっているものかもしれません。こちらのドローンは手をかざして、ドローンを操作するというものでした。

このように、今後はさらにソフトウェアとハードウェアのエコシステムを生かして、素早く社会実装し、さらに社会からのフィードバックを得ながら、他の企業に真似できないような価値をもったサービスや製品がどんどん生まれてくるのかなと感じました。

2. QRコード決済について

深センにきて、QRコード決済については少し感じることがあったので 、この話題についても触れようと思います。

まず、噂通り深センではQRコード決済(送金)が主流で本当に現金が使われなくなっていました。深センに住んでいる人、本当に財布持ち歩いていません。今回僕は中国の銀行口座がなく、wechat pay が使えなかったので、現金生活を送りましたが、本当に至る所でまじか。という顔をされました。
わざわざ裏から現金の入った箱を取ってきた店までありました。

日本のQR決済と深センのQR体験

僕は個人的には今日本で特にQR決済をする人間ではありません。基本的にはSuicaやIDなど、ApplePayを使います。

なぜかというと、QRコード決済はアプリの奥にあり、「スマホのロックを解除して、たくさんあるアプリの中から、決済アプリを選んで、QRコードを表示する」のがめんどくさいからです。ApplePayはかざすだけです。

しかし、深センにきた時、僕はもし深センでApplePayが使えたとしても、深センではQRコードを使うかなと感じました。
なぜかというと、深センではQRコードはただの決済手段ではなく、一連のサービス体験を提供するものに決済もついてるという形になっていたからです。
そしてこの体験の提供はApplePayでは不可能で、QRだからこそできることが多いからです。

例えば、とあるレストランでは、テーブルに置かれたQRコードを読み取ると、メニューが表示され、そのまま選んで決済までできるそうです。
これができると、

1. みんなでメニューの取り合いをしなくていい
2. 最後に別々でお会計できますか?とか聞かなくていい

といったメリットがあります。

つまり、決済の場面だけを見るとApplePayなどの方が早いかもしれませんが、前後の体験を充実させようと思うと、QRの強みが活かせると思います。

今はそもそもQRコード決済そのものを広めるために各社頑張っていますが、その傍ら、QR体験に関するサービスをレストランやホテルで考えておくと面白いうのかなと感じました。

そして、中国のキャッシュレスはQRの先に行こうとしてすらいました。

上でも紹介しましたが、もうすでに顔認証決済が至る所にありました。コンビニから自動販売機まで。
自動販売機にもうすでに実装されているところはさすが深センと感じるところです。

こういった体験を提供する必要のないコンビニや自動販売機、素早い決済だけを必要とする部分では顔認証を用いるという考えなのでしょうか。

日本で顔認証の決済をやろうと思ったら、すごい議論が起こりそうな気がしますが、深センは社会実装がさすがに早いです。

最後に

今回の深セン視察は株式会社ジースタイラス様の企画で参加させていただきましたが、本当に貴重な体験が多くできました。

帰国後は5日間熱で倒れるなど、いろいろ大変なこともありましたが、総じて貴重な体験ができたと感じています。

現地でもテンセントの社員の方や、ニコ技深圳コミュニティの方、南方科技大学の学生など多くの方にお世話になりました。
ありがとうございました。

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