冬の小川の川縁で
きゅっとにぎった指の間から放された、枯葉。
流れに任せて、浮かんだり沈んだり。
好奇心いっぱいの眼差しで、枯葉の行方を追う。
一歳10ヶ月。
岸にひっかかった枯葉を、不器用にしかし確実に棒でつっつき、流れに戻す。
満足するまで見届けたら、また次の枯葉を指の間から落とす。
しだいに、川の流れの速さが場所により異なることを知る。
幅狭で、石がぼこぼこ頭をだしているところめがけて枯葉を落とす。
うす茶色の枯葉は石にぶつかる水の勢いに任せて、するりするりとすり抜けていく。
「はやーい」
え?なんて言った?はやい?!
「…あーそうそう!そうだねーはやいねー!」
まさか流れの様子を表す言葉を発すると思わなかった私は、一瞬言葉につまってしまった。
溢れた喜びが表情や言葉になって伝わる。
はやいね。うれしいね。
君の気持ち、ちゃんと伝わってくるよ。
丁寧に丁寧に返したくなる。
何度も引っかかる葉。
沈んでなかなか浮いてこない葉。
うまくいかなくても、泣くわけでもなく、
助けを求めるでもなく、
ただひたすらに、枯葉に働きかけ続ける。
試行錯誤をしてみる。
熱のこもった瞬間を積み重ねている。
葉を流す。
ただそれだけの遊びの中に、
不確実な自然の面白さと、自然に対する自分の力量を彼は感じているようだった。
流した枯葉を追いかけて、岸に引っかかると腕を精一杯伸ばし、体全部でバランスをとりながら、ギリギリのところで耐えて捕まえる。
くしゃくしゃに濡れた枯葉を眺め、
「よし!」
と、つぶやいた。
え?!今、よし!って言った…?!
満足感と自信に満ち溢れた目の輝きが、まぶしくて仕方がなかった。