出来ることをしよう
はじめに
この作品は、Twitter企画「コランダ地方で輝く君へ」の交流作品です。
不都合な部分は、パラレル扱いとしてください。
お借りした方:カキョウさん
(お名前のみ)ビビちゃん
出来ることをしよう
ハートが「戦いたい」と告げた時、カキョウは一瞬戸惑いを見せた。
恐らく彼は『ハートは、さっきまで毒に侵されていたのだから、休んでいた方が良い』と考えているのだろう。
当たり前だ、下手をすれば命が危なかったかもしれないのだから。
ゆっくりと休んで、暴れているポケモンには近付かない方が良いに決まっている。
…それは、そうよね。
でも今は、休むより出来ることをしたい。
ベッドから手を伸ばして、ハートはカキョウを抱き寄せた。
「ねぇ、カーくん。わたし、ちゃんとここにいるよ」
動けるようになった温かい身体で、わたしはあなたのそばにいる。
生きているから、何だって出来るわ。
「おねがい、一緒にいきたいの…」
そう言って、ハートはカキョウを解放した。そして、彼からの返事を待つ。
その返事を待つ時間が、やけに長く感じられた。
「………………ったく、仕方ねえな、ハーちゃんは」
久しぶりにカキョウから「ハーちゃん」と呼ばれ、ハートは目を丸くした。
そしてその呼び名を聞いて、彼に昔、色々な場所に連れて行ってもらった思い出がよみがえる。
(良かった、また連れて行ってくれるのね)
心配をかけたことが申し訳なくて、一緒にいてくれることが嬉しくて。
そんな気持ちが混ざって、ハートの心はマーブル模様になった。
複雑な気持ちだけど、今はこのまま進んで行くことにする。
「っし、じゃあ行こうぜ!けど、なるべく俺から離れんな。なんかあったら、身体がおかしいとか、まずは自分を優先してくれよ」
カキョウの言葉に、エンブオーのアグニもチルタリスのトートも頷いている。
幼馴染とポケモンたちの思いが、ハートの胸に染み渡った。
「あーそれと、前にジムに来たあいつ、ビビって言ったか?あいつも来てたぜ」
「ビビちゃんが?」
ビビの名前を聞いて、ハートの瞳が揺れ動く。
カキョウに敗北して、修行中の彼女だ。
修行をしているのだから、強くはなっているのだろう。
けれど、今回は相手が悪すぎる。
ハートが不安に思っていると、カキョウが言葉を続けた。
「ハートが寝てる間にどっか行ったけどな。…あいつも、自分の出来ることをしたいらしい」
「…そっか」
自分に出来ることを探して、精一杯やる。
(わたしとビビちゃん、少し似ている気がする)
ハートは、どこかで頑張っているであろう少女に思いを馳せた。
「まだそこら辺で戦ってるかもしれねぇ。元気になった姿、見せてやろうぜ」
「そうね。心配かけちゃったこと、謝りたいし…合流出来ると良いなぁ」
ほどけた髪を、もう一度ポニーテールにして、ハートはベッドから下りた。
間仕切り用のカーテンを勢いよく開けて、ハートはカキョウとポケモンたちと共に、戦いの場へと向かった。