お星さまと甘いお菓子
はじめに
この作品は、Twitter企画「コランダ地方で輝く君へ」の交流作品です。
不都合な部分は、パラレル扱いとしてください。
拙宅
メテオとコメット
・お星さまと甘いお菓子
お借りした流れはこちら
・ねがいぼしと黄色いキミ
・仲良くなれたらいいな
***
お星さまと甘いお菓子
エリューズシティで墓守をしているという男性、クラードと出会ったメテオ。
彼は、メテオと友人であるエーテルの知り合いらしい。
隣にいるエーテルとポケモンたちの方を見ると、とても穏やかな表情をしている。
その様子を見て、きっとクラードという人は良い人なのだろうと、メテオは感じていた。
「そうだ、君達お菓子は好きかな?」
クラードに差し出されたマカロンとポフレを見て、メテオは首を傾げながら尋ねる。
「お菓子は大好きだよ。ボク、もらっても良いのかしら?」
「もちろんだよ」
柔らかな笑顔で頷くクラードに、メテオの顔は、ぱあっと明るくなった。
「どうもありがとう。あっ、自己紹介がまだだった…ボクはメテオ。エーテルと同じ、聖歌隊なんだ。クラードさんが守ってる、エリューズのお墓って…ボクがよく行く、あのお墓かしら…」
メテオは、自分の両親が眠る墓のことを思い浮かべていた。
聖歌隊の活動がある日には、必ず墓に寄り、鎮魂歌を歌っている。
「クラードさんみたいな、お墓を守る人がいるから…パパもママも安心して眠っていられるんだね。だったら、そのことにもお礼を言わなくっちゃ」
メテオはクラードにぺこりと一礼をして、手渡されたお菓子を大切そうにしまった。
「お菓子、後で大切に食べるね。これから、ピザを作らないといけないの。クラードさんもエーテルも、絶対食べに来てね」
ピザ生地にトッピングを乗せるジェスチャーをしながら、メテオは二人に向かって言った。
休憩時間に、メテオとプリンのコメットが、クラードから貰ったお菓子を食べようとしていた時。
空から突然、流れ星が降ってきた。
正確に言えば、流れ星のような生き物が、である。
「これ、何てポケモン…?それとも宇宙人?」
丸っこくて少しとげとげした見た目のそれは、メテオが持つポフレを見つめていた。
「もしかして、お菓子食べたいの?」
メテオがそう聞いてみると、正解と言うようにキュルキュル音を立てて回りはじめる。
その様子を見たメテオは、その丸っこいポケモンにポフレを差し出した。
お菓子が大好きなコメットは、膨れながら抗議した。
『クラードは、オレとメテオにくれたのに!』
ポケモンの言葉は人間には伝わらないけれど、その抗議はメテオに何となく伝わったようだ。
「美味しいものは、みんなで食べた方が良いでしょう?意地悪しちゃダメだよ、コメット」
そう言ってメテオは、コメットの口にポフレを近付けた。
コメットは少しムッとしながらも、ポフレを食べ始めた。
丸っこい星のようなポケモンは、怒るコメットのことをあまり気にする様子もなく、ポフレをゆっくり味わっている。
メテオも、貰ったマカロンを口に運んだ。
さっくりとした食感と、優しい甘さが心地よい。
「これ、クラードさんが作ったんだって。すごいねぇ」
普段お菓子を作るメテオは、クラードの腕前がかなりのものだとわかった。
丸っこくて少しとげとげなポケモンは、ポフレの最後の一口をごくんと飲み込むと、ふわふわと何処かへ行ってしまった。
メテオは笑顔で手を振り、コメットはやはり少し怒った表情をしていた。
しばらくすると、先程のポケモンが、何かを持って戻ってきた。ゴツゴツとした石のようなものだった。
「もしかして、お菓子のお礼かしら?気にしなくて良いのに…でも、ありがとう」
メテオがにこりと笑って礼を述べると、丸っこいポケモンはくるくると回転して、飛んで行った。
それからそのポケモンは、時々メテオの前に現れるようになった。
***
ねがいぼしと流れ星のキミ
手伝いを申し出てくれた少女、ルリに「木の実を集めてきてほしい」と頼んだ。
木の実は料理の材料になるし、戦闘に出る人たちの携帯食にもちょうど良い。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。いっぱい集めてくれてありがとう…パチリスはそれ、何を持っているんだい?」
戻ってきたルリは、箱に大量の木の実を詰めて持ってきてくれた。
彼女のパチリスは、何故か木の実ではなく、石のようなものを持っていた。
先程、メテオがお菓子のお礼にポケモンに渡されたものに似ている。
「これ、何なんでしょうね。メテオさんもご存知ではないですか」
「うん…でも、わかりそうな人なら知ってるんだ。行こう!」
後で聞こうと思っていたけど、せっかくだから一緒に聞けば良いや。
メテオはルリの手を取って、ある人の元へと急いだ。
「ファタさん!聞きたいこと、あるんだけど…」
「やぁ、メテオくん。何かな?」
「ファタさん」と呼ばれた、背の高い男性が振り向く。
コランダ地方の四天王であり考古学者でもあるファタであれば、この謎の石のこともわかるかもしれない。
ファタの顔を見たルリが「Tシャツの…」と呟いたが、メテオには何のことか分からなかった。
「これは、ねがいぼしといってね。不思議なパワーを秘めている石なんだ。拾うと、願いが叶うと言われているんだよ」
そんなにすごいものだったとは知らなかったメテオとコメットは、キラキラと目を輝かせた。
「これは、二人共どこで拾ったのかな?」
「パッチが森の中で見つけて…」
「丸くてちょっととげとげなポケモンに、お菓子をあげたらお礼にくれたんだ」
メテオの「丸くてちょっととげとげなポケモン」という言葉を聞いたファタは「それって、あの子かい?」と、茂みの方を指差した。
あのポケモンが、またメテオの近くに現れたのだ。
「そう。ファタさん、あの子何ていうポケモン?それとも、宇宙人だったりする?」
「あれは、メテノっていうポケモンだよ」
「何だか、メテオさんとお名前似てますね」
メテオとメテノ、なんて。
ルリの言葉を聞いて、メテオはこくりと頷く。
「メテノっていうんだね。おいで」
メテオは、そっとメテノに手を伸ばしてみた。
するとメテノは、ふわふわと手に近付いてきた。
「キミがくれたもの、すごいものなんだってさ。ありがとう」
お礼を言われたメテノは、心なしか少し嬉しそうに見えた。
***
仲良くなれたらいいな
「ピザ、美味しかったよ。ありがとう…」
ピチューのイリスを連れた青年、アルスに礼を言われて、メテオはとても幸せな気持ちになった。
自分が関わって出来た食事を「美味しかった」と言われるのは、何て素晴らしいことだろう。
「良かったら、キミの名前教えてくれるかな?」
「ボク、メテオ。こっちはパートナーのコメット。ピザ、美味しかったって言ってくれてありがとう」
きっと、一緒にピザを作ったコムギさんも喜ぶだろうなぁと、メテオはにこにこ笑う。
「イリスは、アルスお兄さんにピザを食べさせたかったんだね。きっとイリスは、アルスお兄さんが大好きなんだね」
焼きたてのピザを、トレーナーに届けた小さなピチュー。
メテオは、二人にトレーナーとポケモンの絆のようなものを感じて、少しほっこりしてしまった。
「そうだと嬉しいな。コメットくんも、メテオくんが大好きなんじゃない?とても仲良しに見えるけど…」
メテオの腕の中にいるコメットを見て、アルスが微笑んだ。
「そうだね、時々ケンカもするけど…基本仲は良いんだ。…ああ、イリスとコメットも、仲良しになれそうだね」
イリスとコメットが、お互い手を上げて挨拶をしているのを見て、メテオはコメットに新しい友だちが出来たのだなぁと思った。
「ふふ…あれ、あのポケモンは…?」
アルスの視線の先には、回転するメテノがいた。
イリスとコメットのそばにふわりと近付くメテノは、まるで「仲間に入れてほしい」と言っているようだ。
「キミ、もしかしてこのキャンプが終わるまで、ずっとついてくるつもりかい?」
「…もしかして、メテオくんたちと仲良くなりたいのかな?」
アルスの言葉の後、メテノはメテオの周りをぐるぐると回った。
メテオは「うーん」と顎に手を当てて、少し考える。
「だったら、一緒に来るかい…?」
ポケットからモンスターボールを取り出し、メテノの前に差し出すと、待ってましたと言うように素早くボールに入ってしまった。
「名前は、後で決めてあげるね」
メテノの入ったボールを撫でて、メテオはアルスのポケモンたちの方を向く。
「良かったら、この子とも仲良くなってくれたら嬉しいな」
メテオがボールを投げると、きらきら輝く新しい仲間のメテノが、誇らしげに飛び出してきた。
アルスからのピザの感想を伝えるため、そして新しい仲間のメテノを紹介するために、メテオは急いでコムギの元へと向かった。
「コムギお姉さん!あのね、ピザ、美味しかったって、また言ってもらえた!」
「良かったな。さっき、ルリという少女にも、そう言ってもらえたんだったな」
息をきらしながら報告するメテオを、コムギは優しく迎えてくれた。
「そう、それからね、新しい仲間が出来たから…コムギお姉さんに紹介しようと思って」
ふわふわ浮かぶ不思議なポケモンの登場に、コムギは目を丸くした。
「調査が終わったらさ、コメットとこのメテノとボクの三人で、コムギお姉さんのパン屋さんに行くよ」
先程コムギから渡された、パンの交換券を掲げて、メテオはコムギに高らかに宣言した。
(終末が来る前に、パンを引き換えないとなぁ)
大きな丸い瞳で、メテオとコムギを見ながら、プリンのコメットはぼんやりとそんなことを考えていた。