ハーモニカと歌声と 他

内容一覧

コランダ地方交流です。

ハーモニカと歌声と
お借りした方
・クゥラさん
・エーテルくん
こちらの流れもお借りしました。

ボクに出来ること
ちょっとお借りした方
・クラードさん
・パパラチア博士
お名前のみ
・レゼルくん、オワゾさん
・エーテルくん
こちらの少し後くらいのイメージ

ポケモン、ゲットチャンス
お借りした方
・ファタさん

星と風船
自宅のみ。ポケモン同士が会話する描写を含む。苦手な方は閲覧を控えてください。

ハーモニカと歌声と

柔らかな日の光が降り注ぐ森の中で、その人とは突然出会ったのである。
「「え?人???」」
メテオとエーテルの目に飛び込んできたのは、倒れている女性の姿。
髪が長く、背の高いその女性のそばで、スボミーが大泣きしていた。ナゾノクサもいたが、そちらは何とも言えない表情で女性を見つめている。

「大変!毒の粉を吸ってしまったのかしら……」
「とにかく誰かに連絡を……!」
二人がそれぞれ口にしたその時、微かに女性が動いた。
「うう……」
驚くべきことに、女性はどこからかモモンの実を取り出し、一口齧った。すると、その数秒後には起き上がった。

「「うそ……」」
メテオとエーテルは、目を丸くして顔を見合わせた。


「心配させてしまい申し訳ありません。小官は、クゥラと申します」
「初めまして、エーテルといいます。クゥラさんがご無事で何よりです」
「ボク、メテオっていうの。クゥラさん、もう動いて大丈夫なのかしら」
メテオが心配そうに問うと、クゥラはにっこりと微笑んで「大丈夫ですよ」と頷いた。

「でも、無理はなさらない方が良いです」
「そうだね。スボミーがまた泣いてしまうことになったらいけない」
エーテルとメテオが口々にそう言うと、メテオの足元でプリンのコメットが「ぷゆっ」と鳴いた。

「忘れてた。ボクたち、歌を歌いに来たんだった」
「歌ですか……?」
「僕とメテオは聖歌隊に所属していて、時間が合う時に一緒に歌の練習をしているんです」
不思議そうなクゥラにエーテルが説明すると、クゥラは納得した様子だった。

「そうだったのですね。それなのに小官は、とんだご迷惑を……」
項垂れるクゥラを見て、エーテルは首を横に振った。
「そんな、お気になさらないでください!」
「そうだ。エーテル、クゥラさんにボクたちの歌を聴いてもらうのはどうだろう?」
お客さんが多いと、素敵だと思うんだ。
メテオは名案を思いついたという顔で、両手をパチンと合わせた。
「うん。クゥラさんが、もしよろしければ……」
エーテルは、聴いてもらいたいと思いながらも、クゥラの都合を心配し、彼女に確認をした。
「ぜひ、お二人の歌を聴いてみたいです!」

メテオとエーテルが歌うと、森の中にいるポケモンたちが、二人の歌に引き寄せられて集まってくる。
そんな様子を見て、クゥラはそっとハーモニカを取り出し、二人の歌に合わせて演奏した。
突然のハーモニカの音色に、メテオとエーテルは驚きながらも、一曲を最後まで楽しく歌い上げた。

「すごいや、クゥラさん。ハーモニカ吹けるなんて!」
「とても素敵な音色でした!」
演奏を絶賛されて、クゥラは少し照れた表情を見せた。
「ありがとうございます」

その照れた表情の中に、ほんの少しの寂しさを、プリンのコメットは見た。
けれど、何も見なかったふりをして、メテオに向かって『そろそろ戻ろう』という意味を込めて鳴いた。

***

ボクに出来ること

みんなの為にピザを作ったり、クゥラのハーモニカの音色に合わせて歌を歌ったり、テントでお喋りをしたり。
そんな、優しい時間を過ごしたことが、嘘のようだ。
得体の知れない黒いポケモンが、森で暴れ回っている。
今日が調査の最終日なのに、それなのに。

「怪我人を医療テントへ!動ける人は廃材を集めてバリケードを作って!戦える人は固まってフォローし合いながら迎撃!絶対に孤立しないで!」
パパラチア博士の声が響く。それを聞いて、みんなが動く。ボクも急いで廃材を集めに向かうけれど、心臓はばくばくとしていた。

廃材を集めながら、友達の姿を探す。
同じテントで共に過ごしたレゼル。彼のそばにはいつも、オワゾという大人がいた。今も、オワゾさんと一緒にいる?ボクと同じ聖歌隊のキミ。
まだまだ話したいことが、たくさんあるんだ。無事でいてほしい……。

ボクのベストフレンド、エーテル。戦いは、あまり好んでいなかったように思う。この争いに、巻き込まれていないかな。ボクらまた、一緒に歌を歌えるよね……?
廃材が手元に集まった。でも、友達の姿はどこにもない。でも、きっと無事なはずさ。
そう自分に言い聞かせて、ベースキャンプに戻った。

ベースキャンプに戻ったら、エーテルを抱えているクラードさんがいた。
「エーテル……?」
エーテルは目を閉じていた。胸が苦しい。また、ボクは大切な存在を失ってしまう……?
「メテオくん。エーテルくんは今、眠っているんだ」
クラードさんの声を聞いて、少し落ち着いた。
「ボク、エーテルが安心して眠っていられるように、バリケード作ってここを守る!クラードさんは、エーテルのそばにいて!」
エーテルとクラードさんに背を向けて走り出す。本当は、ポケモンバトルでここを守ることが出来たら良かったのだけど、ポケモンバトルに慣れていないボクにそれは難しい。

「コメット、ハレー。バリケード作り、手伝ってほしいんだ」
ボクたちの最期は、こんなものじゃ駄目だ。もっと穏やかで優しく、幸せであるべきだ。
プリンのコメットとメテノのハレーは力強く頷いてくれた。

***

ポケモン、ゲットチャンス

騒動が落ち着いて数日後、メテオは外でポケモンを探していた。
昔父親に言われた言葉を、森の中で思い出したのだ。
「人は、時に戦わなければならない時がある」
だからちゃんと戦えるようにと、メテオの父親は彼にポケモンバトルを教えようとしていた。その時メテオの手持ちはコメットだけだったし、プリンではなくププリンだった。

少しバトルの練習をしてコメットがプリンに進化し、これから更に本格的に練習していこうというところで、父は母と共に波にさらわれた。
それからメテオは、数えるくらいしかバトルをしていない。その為バトルの感覚も、ほとんど抜けてきている。

「やっぱりちゃんと強くならないといけないんだな……」
巣穴調査でそれを痛感した。強くなるなら、仲間の数は多い方が良い。ポケモンをゲットするために、ひたすらポケモンを探し回る。

「わっ、綺麗なポケモンだ」
紫や水色の鬣を持つ可愛らしい馬のようなポケモンが、静かに水を飲んでいた。
「あれはポニータだよ」
後ろから、よく知った声が聞こえた。
「ファタさん!でも、ポニータって炎タイプで鬣が炎でしょ?」
メテオが首を傾げると、ファタはきちんと説明してくれた。
「エスパータイプのポニータもいるんだよ。進化すると、フェアリータイプも追加される」
「フェアリータイプは、ファタさんの専門分野だったよね。……よぉし、コメット行って!」
「えっ!?メテオくん!?!?」
状況を理解出来ていないファタを気にすることなく、メテオはプリンのコメットを繰り出す。

「ゲットするのかい!?」
「そう!そのためにはバトルしなきゃなんだ!」
ポニータが、コメットに向かって走ってきた。

「チャームボイス!」
コメットが技を繰り出すと、くらったポニータはぶるぶると首を横に振る。
ポニータは少し怒った表情をして、コメットに技をかけた。すると、コメットは混乱して、わけもわからず自分を攻撃した。

「コメット!」
「“ねんりき”だね……相手を混乱させることがある技だよ」
混乱と聞いてメテオは、混乱状態を解除する木の実があると母に教えてもらったことを思い出した。
「えっと、キーのみ……って木の実で回復出来るって聞いた気がする!でもキーのみなんて持ってないよ!」
その時、近くの木にキーのみが実っていることに気付いた。
「あれだ!待っててコメット!」
メテオが木を揺すると、キーのみがぼとぼとと地面に落ちる。
「ぷりゅっ!?」
……そのうちの一つが、コメットの頭に激突した。

「ぷぃぃ……?」
「わあ~!コメットごめん~!」
「でも、混乱状態じゃなくなってる!」
固いキーのみがぶつかった衝撃で、コメットの混乱状態が解除された。
「そっちが混乱させる技を使うなら……ファタさん!耳を塞いで!」
「ま、まさか……」
何となくこの後のメテオの指示を予想しながら、ファタは耳を塞いだ。

「コメット!ここをお前のステージにしてやれ!」
「ぷぃっ!!!」
「うたう!」
プリンといえば、やはり歌なのである。
歌を聞いたポニータの瞼が段々下がっていき、やがて眠ってしまった。
「おねがい、モンスターボール!」
メテオがモンスターボールを投げると、ポニータがその中へ吸い込まれる。
ゆらゆらと数回揺れた後、カチリと音が鳴った。

「ゲット、出来た……?」
「うん。ポニータゲット、おめでとうメテオくん!」
パチパチとファタに拍手され、メテオは大喜びで飛び跳ねた。
「やったぁ!すごいよコメット!」
「ぷぃ!」
いつの間にかボールから飛び出したメテノのハレーは、コメットの横でくるくる回って祝福していた。
「よいしょ!」「うわっ」
ファタに抱き抱えられ、一瞬ふわりとした感覚が来た。コメットがそばにいて、抱き抱えてくれる人がいる。少しだけ、父親が生きていた時のことを思い出した。
(パパがいたら、こんな風に抱っこしてくれていただろうな)
「ぷりぃ……」
そんなメテオのことを、コメットは少し心配そうに見つめた。

「さぁ、ポニータとコメットくんを回復させなきゃね」
「だったら、ポケモンセンターかな?」
バトルを終えたポケモンたちを回復させるため、全員でポケモンセンターへ急ぐ。
ポニータのモンスターボールが、メテオのポケットの中でほんの少し揺れた。

***

星と風船

『ハレー』
『なんでしょうか』
星の綺麗な夜、シールドに覆われた星型のポケモンとふたりぼっちで話す。
パートナーのメテオは、今日ゲットしたポニータのモンスターボールを枕元に置いて眠っている。

『これからメテオは、沢山のポケモンと出会うと思う。強いポケモン、役に立つポケモン、いっぱいな』
『はい』
星空を見上げながら、俺たちはポケモン同士にしかわからない言葉を交わす。メテオがここに現れても、きっと言葉の意味を理解出来ない。だから安心して話すことが出来るんだ。

『手持ち、6匹以上になるかもしれない。そうなったらオレな、ボックスに入ろうと思うんだ』
『ボックス……』
ポケモントレーナーは、ポケモンを6匹までしか連れ歩けない。連れていけないポケモンはボックスに預けられる。トレーナーの多くはそうしている。何も、おかしくない。

『ボックス、は、入ったら、入れ替えまで外に出られませんが』
『うん。でも手持ちから抜けるわけじゃないんだから』
ハレーは、『ですが……』と何か言いたげだったけど、気にせず言いたいことを言う。
『ボックスも、ボールの中みたいに快適だと思うから心配ないよ!オレ、ミラーボール飾りたいんだ~』
『なんで?どうしてボックスに?お家でも良いじゃないですか。アナタは、メテオの最初の……』

そうだ。最初のパートナーだ。両親が生きている時のアイツを知っている、唯一のポケモン。
オレを見て、メテオが……メテオの両親とのことを思い出すことがあるって最近気付いた。
両親がいなくて寂しい気持ちを思い出す時、メテオは少し泣きそうになっている。

『オレの姿見て、メテオは両親を思い出して寂しくなったりするんだよ!だから6匹以上になったら……オレは、別に悲しくないよ。ボックス行くの。手持ちからは抜けないんだから』
大丈夫だからと、ハレーに言い聞かせるように言う。
ハレーは、深呼吸をした後。
『悲しくなくても!寂しいんです!』
そう答えた。寂しがりやの、お前らしい言葉だよ。
思わず笑ったら、『何で笑うんですか』とハレーが怒るから、それが何だか可笑しくてもっと笑ってしまった。


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